キノコホテル「淫力魔女の生贄」 まったく汗も滴る好い女
キノコホテルのライブを見て来ました。
ライブ見たのははじめてなのですが、いやあよかった。
怪しく、エロティックで、淫靡なホテルでございました。
……という設定はかなり凝っている部分なのであとで書くとして、音の話から。
ベーシストが入れ替わったばかりのキノコホテル。
2007年結成の女性バンドで、基本になっているのは60年代グループサウンズと70年代サイケデリックとニューウェイヴ。
それを独自の解釈で咀嚼して完全に自分達の音に仕上げたのがGO!GO!7188などだとしたら、キノコホテルは「ものすごいグループサウンズそのものなんだけど何かちょっと違う」というラインのバンドです。
そこに女性ならではのエロティック感覚と、レトロ日本の景色の感覚をいれこみました。
誰もが聞いたことがあるような、でも聞いたことがないような。
しかも一回聞いたら覚えちゃうような、ポップなメロディ。
ガーン!という衝撃よりも、デジャヴ感の強いバンドです。あと、キノコなだけに、合う人には中毒性が半端じゃなく高い。
やってるパフォーマンスや演奏は攻撃的なんですが、演奏テクニックとメロディラインの作り方が職人的なんですよ。
パンクっぽいけど、そこまで破壊的じゃなく、すんごい安定感なのです。
メロディがそもそもグループサウンズ的というか、日本的なので、聞いている時の安心感が半端じゃない。
ボーカルのマリアンヌ東雲は、ちょっとCDや動画ではわかりづらいんですが、歌い方がすごくソウルフル。
それに加えて、60年代・70年代東映を意識(というかモロに「パクリ」と言ってましたが)した音と絵作りが功を奏して、ムードもばっちり。このへんはプロデュースのうまさだと思います。
これとか東映っぽいよなあ。好き。
電気ギター・電気ベース・電気オルガンの音も再現……いや、このバンドの場合再現ってより「それになっている」くらいにGSです。
なりきるだけじゃなくて、ここに「女のアク」の強さ、エロスとバイオレンスをモリモリ入れて過激にしています。
公式では「ヴィザール」と言われていますが、この言葉ぴったり。
戸川純と共演していたり、「悪魔巣取金愚」をカバーしているあたりでわかってもらえるかと。
何にしても、多分「全く聞いたこと無い」人でもすんなり聞ける度は半端じゃないはず。
まあ、会場始まるまでずっと音楽と喘ぎ声流れてたけど、それがOKならば。
キノコホテルはマリアンヌ東雲が「キノコホテル」の支配人・創業者という設定。財閥の娘で、鬼太郎みたいにつねに前髪を垂らして、左目を隠しています。立ち位置的には女王様ポジ。
電気ギターのイザベル=ケメ鴨川は、元不良娘が更生のためにキノコホテルで働いているという設定。過激なあばずれっぷりを見せてくれます。ちなみにソロシンガーkemeでもあります。
ドラムスはファビエンヌ猪苗代。今打ちながらこれが予測変換できるGoogle日本語入力すごいなと思った。大食いハラペコキャラです。健康的で明るい、という設定……だけじゃなくてほんとに笑顔。
で、電気ベースのエマニュエル小湊が昨年末に退職(ホテルなので入社、退職なのです)し、ジュリエッタ霧島が入社したのですが、びっくりするほどうまかった。
メロディの軸としてのベースのぶれなさ、正確さ。でもグルーヴ感があって、全員を引っ張っていく迫力。
それでいて笑顔振りまくキュートさときたら。
歌うようなベースではあるんですが、それ以上にとにかくきっちり正確で、多少ギターとキーボードが暴れても全然だいじょうぶ。
というかそもそもキノコホテル自体がかなりきっちりブレのない演奏をするバンドなので、そこに入ってきて自分の位置をはっきり捉えているなあ、という印象。
まだやっぱり慣れていないのか、自己紹介時に「キノコホテルさんに」と言ってしまったりしていたのが微笑ましかったのですが、彼女にどんな設定がつくのか楽しみです。
世界観が好きな人ならもちろん、GSの音を聞きたい人にはとにかくオススメ。
ガールズバンドのキュートさもガリッとあり、テクニックは裏付けされたもの。音楽も耳によく馴染む、いいバンドです。
1日目は男女混合だったのですが、2日目は女性のみの公演ということで、さらにサバト化しそうな気がします。
このイラストを元にTシャツとタオルが販売されていたのですが、それが青地のみなんです。
キノコホテルって赤と黒じゃないの、と思ったら、それには意味があって、チャンピオンコミックスの青をイメージしたそうで。
そんなん言われたら買うやろ!
買って来ました。
コールが実によかった。
「壇蜜よりも」「「マリアンヌ様!」」
「壇蜜よりも」「「マリアンヌ様!」」
手馴れてるなあ。好きよ。