たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

アホみたいに分厚くてアホみたいにロリへの熱意と哀しみが詰まった同人誌「東京ロリンピック」を読め

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コミケなくなりました。オリンピック延期しました。2020年。

なのに208ページ(普通に立つ)の極厚ロリアンソロ同人誌「東京ロリンピック」が出た。企画編集は左カゲトラ氏。

なぜそこまでして出す!?と思ったんだが、これは今年出さねば行けない本だ。オリンピック前後の狂騒、実施できなかったからこその困惑、色んなものが「ロリコン」の思いとかぶって、めちゃくちゃブルースになってる。よく出してくれました。

2020年5月という、極めて奇妙な今じゃないとだめなんだよ。全体的に後ろめたい気持ちになることでロリコンが救われる本なのよ。

 

 

この本の一番の感想は、「ロリへの視線が甘くない」。少女がいい意味で都合がよくなくて、血が通っている。甘くないし、大人側も「犯」であることがわかっているからこそ、ロリを渇望できる。でも陵辱ものが多いというわけでもないんです。

 

主催の左カゲトラ氏の漫画「Killer tune kills me」は、スポーツ選手が少女を事故から助けたことで脚を失い、守ってもらった少女が世話をするべく通っているうちに性的関係に…という話。罪悪感スタートながらも、割と女の子もそれはそれでみたいになっているぬるま湯。多分普通はここで終わるだろうし、そのほうが良い。なのに、やっぱり男側は自らの「犯」であることはすごい意識していて、結果ぼんやりした幸せを壊しそうになる男の駄目なところが、ほんとロリコンってクソだぜ!気持わかるけどな!っていう読後感に。はい、甘受して手を出すロリコンはクソなんです。そしてクソって言ってくれたほうが、読む側のロリコンは安心できる。

佐伯氏の「上京2020」もそういう点でラストの落とし所のクソ感最高。離婚した夫婦、母との仲がこじれた娘。オリンピック観戦のため父親の元にやってきて、幸せな時間をすごす2人。しかし父親は彼女に手を出してしまい、彼女もそれを受け入れた…エンディングは最悪。男に同情の余地がほとんどない中、傷だらけながらも強かに生きる女の子の血塗られた道の強烈なエモーショナルは、本当に一貫して佐伯節。女に生まれたことを苦しみながら性の中で幸せを欲し生きようとするスタイルは、佐伯氏初期から貫いている理念だなあと痛感。

じねん氏のはオリンピックのボランティアで出会った青年と少女の話し。2人がいつしか意気投合し、実は少女は中学生だとわかり、それでも行為にふけっていく。ハッピー方向に見えて読みやすいし、読後感もわりとエロくてさわやか。なんですが、これオリンピックボランティアに対して、アッパー系リア充に対して、相当なヘイトが眠っている。ボランティアの我慢に対してバランスを保った先がロリとのただれた生活って、ロックだ。少なくともラブラブポジティブじゃない、ただヘイトを出せるようになっていく成長物語ともとれる。すごい絶妙なさじ加減。

あわじひめじ氏はやっぱ、こうじゃないとな、というのびのびした感じで歓喜。またたく間に開始される陵辱、画面外の枠外の怪文書。とても商業で出せない毒。悪ノリとナード感とブラックユーモアあってこそのあわじひめじ節。今回のは風刺とまでは言わない、世間に中指たてながら、ロリにオーバードライブ。同人誌ならではで最高でした。

荒草まほん氏は、オリンピックネタじゃなくて新型ウイルスの話に舵を切っていて度肝抜かれた。オリンピックテーマの本の中、よくこれトップに持ってきたな!最高の編集か!「東京って怖い」という感覚はオリンピック、新型ウイルス、共に多くの地方民が感じている曖昧な不安。同時にそんな気にしていない東京民の感覚。ぼんやりとした意識のすれ違いを、もやっとしたロリエロ関係に落とし込んでいるのは本当に見事。

 

どの作品も「ロリ」に対する芯が強くて、これが左カゲトラ氏が編集する、ロリに魂を注いで生きてきた作家たちの「ロリ」感なんだ、と痛感。今は商業だとなかなか見られない、貴重な作品集。というかおそらくどの作品も、その作家さんの単行本に収録できないと思う作品ばっかり。
だから、売れて欲しい!
奇しくもオリンピックがないことで、より批評性が増した、類まれな本。
買う人は、表紙がクジラックス氏、裏表紙が東山翔氏だという時点で、大体路線はわかると思う。それを踏まえた上で。おすすめしたい。