たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ツンデレという名の病。「百舌谷さん逆上する」

ツンデレは深い。深いぞ。
ひとくくりにツンデレは定義できるものではないし、「自分の中の究極のツンデレ」を描こうとするならおそらく生涯が終わってしまうよ!なんて人もいるでしょう。いないか。いやいる。
しかし、記号的に抜き出したツンデレファーストフード」も嫌いじゃありません。
ベタベタとは思いつつも「あ、あんたのために言ったんじゃないんだから!」と釘宮声*1で言われたらどうですか。「それはツンデレではない、照れているんだ!」と言いつつにやけているそのほほを見てみろ!なんだそのだらしない口は!誰だ!俺だ!
 
はて、さらにファーストフードなツンデレ記号を寄せ集め。えーと金髪、ツインテール、ロリ、八重歯、お嬢様。いいね、金髪ツインテールツンデレ最高です。
そこまでいくとあまりにも隙がなさすぎて「ツンデレ」という何か別の塊になるのですが、萌えますかといわれたら当然萌えます。当たり前じゃないですか。
それをさらに記号化して煮詰めて煮詰めて作り上げられたのが、篠房六郎先生の「百舌谷さん逆上する
この作品では「ツンデレ」が非常に特殊なものとして描かれています。ツンデレは「病気」なのです。
ん?んんん?
 

ツンデレなめんなよ●

ツンデレがどういう病気なのかは今後も読み続けないとつかめないところがありますが、とりあえず病気なんです。普段から態度は超ツンツン。テレが入るとありえない攻撃をしかけます。だってツンデレだもの。
主人公の百舌谷(もずや)さんはそんな、ツンデレです。

僕は戦慄と共に実感した。ゲームや漫画、様々なメディアで語られてきたような、都合のいいありきたりの虚像ではない。正真正銘のツンデレを今僕は現実に、目の当たりにしているのだと。
(第二話で、樺島君語る)


極めて隙のない論理と罵詈雑言で世の中をズバズバ切り裂いていきます。なんせツンです。妥協はしません。追い詰めて追い詰めて、踏みにじった後に追い討ちだってかけます。
嫌がらせ?いやいや。ツンデレですから。嘘なんてつきません、極めてピュアにボディブロー。ツンデレですから。デレたら乱暴狼藉を働きます。ツンデレですから。
好きになるほど悪口を言い、暴力を働くそんな彼女を「かわいい」と思うか「怖い」と思うか、その微妙なラインを攻めてきます。
 
とはいえ彼女のツンは周囲を荒らすには十分すぎます。吐く言葉すべてが女の子たちの逆鱗に触れます。男の子たちは彼女を色々な意味で恐れます。その啖呵の切り方はツンデレが何か別の物に昇華されたような迫力に満ちています。

究極の反応。小学生にとっては脅威です。彼女は全員を敵に回して、にらみつけます。
さあ、ツンデレを恐れぬならばかかってらっしゃい。
 

ツンデレって辛いんだよ●

とはいえ、百舌谷さん別にそんな自分を好いているわけではないです。
自分の周りに向けて自分が敵意に満ちた視線を投げてしまっているのは知っている。罵詈雑言をはいているのも分かっている。
 
世の中の人間はみんなみんなみじめに不幸になればいい。みんなみんなみんな壊れてしまえばいい。
そんなことを本当に、ツンデレという病ゆえに言ってしまう自分。それに嫌気が差しつつ、自分をコンプレックスという形であざ笑います。自虐です。
やい惨めだな。惨めだと人を笑ってしまう自分が、惨めだな。
 
篠房先生作品ではコンプレックスが描かれることが多いのですが、今回はそれを「萌え」のオブラートで包んだ劇薬として差し出してくるからたまりません。
百舌谷さんの言動は非常に特殊なんですが、彼女がそれを「病気」という形でいやでも吐いてしまうことに猛烈な苦しみを抱いている姿のギャップ。なんだか自分がコンプレックスを抱いて、悪口を言った次の日のへこみっぷりを彷彿とさせられます。
ああなんだか痛いよ。そうだよ、傷つきたくないから毒を吐いて逃げるんだよ。やい惨めだな!

とはいえ描写が軽快な上に、Mっ気をそそるような楽しさもあるので、傍観者である自分達は笑いながら楽しめます。
うん、傍観者だとかわいいんだよね。自分は百舌谷さんにちょっとだけ踏まれたいですが。
 

●畳み掛けるセリフの篠房マジック●

このマンガ、とにかく濃度が高いです。ちょっと引用。

この右上から左下に切り裂いていくような、怒涛の文字量!
読んでいると百舌谷さんの声が高速で聞こえてくるように錯覚するから不思議。罵詈雑言の詰め合わせなんですが、言葉のテンポがいいんです。
この作品はこんな感じで、百舌谷さんの罵倒語オンパレード。それが見られるだけでも価値がある気がします。
それだけ波のような文字をたたえているため、波がさーっとひいていったときの張り詰めた空気も強烈に感じられるのです。それが、百舌谷さんの心の葛藤でもあるんでしょう。
篠房節が、ツンデレ女の子の姿を借りて駆け抜ける爽快感と、淀みの中に溜まっていくヘドロ感。絵のパワフルなかわいらしさがあるからこそ、抱えきれない重苦しいコンプレックスも楽しむことが出来ます。
 
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まだアフタヌーンで連載3話目なので、これからどう展開するのか分からないです。ツンデレの病気もまだまだ描写されそうですし、百舌谷さんの家で「お嬢様!」といっていた二人の大人も謎です*2
痛快罵倒コメディとして読むもよし。人間の心の濁りを描いた作品と読むもよし。二度三度読んで楽しめるのがたまりません。
 
まあなんだ。
「百舌谷さん、ののしって!」とはいつくばりたくなったあとに、なんとなく自己嫌悪に陥るのは自分だけでしょうか。
 
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蛇足。オタク兄貴の部屋にルイズ・ハルヒと並んでパキラ*3があってちょっと吹きました。
錬金3級 まじかる?ぽか?ん パキラ (1/7スケールPVC塗装済み完成品)
これ。

*1:希望。

*2:彼女が寝た後、呼び方がお嬢様ではなくなります。親?

*3:キャストオフ済み