たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

そうさ、みのりんの人生はまだまだ続くんじゃよ。

アニメの最終回見ました。
まとめていうと、よかった。すごくよかった。アニメとして。
ぶっちゃけ、原作とはまったく別の所に着地したわけですよ。「再構成」という言葉がうまくはまるわけですが、にしても「ないイベントの追加」「あるイベントの削除」をして、エンディングは完全に別物です。
なので「忠実なアニメ化」という意味では100点ではないかもしれません。
しかし小説に求められていたラストは「義を貫く竜児」であったり「戦う高校生のリアリズム」だったりするので、大仰なドラマチックさはそれほどありません。現実味が強いため不完全燃焼のようにすら見えます。
逆にアニメ版は「最高のハッピーエンド」や「ドラマチックで幸せいっぱいの結末」というエンタテイメント性が振り分けられ、動いたのは竜児ではなく大河でした。その分リアリティは減ります。
なので、個人的には小説のよいところ、アニメのよいところがそれぞれぶつかりあって、さらによい「とらドラ!」が見られた、という気持ちです。「どちらかがいい悪い」じゃなくて。
 
んで、細かいところは色々な所で語られていると思うので、自分は愛するみのりんの話だけします。
 

●結論の出ない子●

『週刊とらP!』竹宮ゆゆこ先生を直撃! いろいろなことを聞いてみた・その1

書き終わった今になって、みのりんという存在が浮上してきて(笑)。作品からちょっと距離を置いて「あいつらこの先どうなってくんだろう」って想像すると、みのりんの人生が一番大変なんだろうなぁって。ハードなことが一杯ありそうで、そのことを想像すると、にわかにみのりん株がグググっと(笑)。

竹宮ゆゆこ先生が言っているとおり、みのりんはまだ「これから」な部分が山盛りなわけですよ。
確かに竜児と大河も「これから」ですし、亜美や北村も「これから」なんです。みんなみんなこれから。
しかし、みのりんは「これから」以前のくすぶりのままの部分が本当に多いじゃないですか。
本当によかったの?その道を歩こうとしているかも知れないけど、逃げなんじゃないの?自分を本当に出せるようになったの?
 
みのりんにそれを聞くのは今は酷なわけですよ。
多分目を伏せて「うん、そうだよ。それでいいの。」と言うでしょう。
ただ、本当にそれでいいのかなんて分からないんです。
そこが、いいんだな。
 
だって、高校生ですよ。
高校生の時期に「将来こう生きる」なんて決められるわけないじゃないですか。
いや、確かに決める人もいます。いますが、そこでも苦しむわけですよ。ほら、狩野すみれ兄貴みたいに。
だから、みのりんの今の宙ぶらりん状態で、これから何かしら痛みを感じるのがくっきり見えているような子の方が、当たり前といえば当たり前だと思います。
 
竜児は大きな一歩を苦痛を伴って得たわけですが、彼だってこれからまだまだ苦しみます。
みのりんはそれ以上に、これから苦痛を得ざるをえないわけです。自分を見つめるという意味で。
 
それが読者である自分たちに恐ろしいほど見えてくるのが、竹宮先生の怖いところ。
こんな子ほっとけないじゃないですか。
でも何も出来ない。
手も出せない。ただ遠くで恋慕のように見ているだけ。頑張っているのも、必死なのも、苦しんでいるのも分かっているに。
あれ、それって…最初の竜児じゃないか。
 

みのりんは本当にバカっ子じゃないのか?●

さて、初期のみのりんは「とてもおバカな暴走っ子」でした。
実際はそれは彼女の弱さ、虚勢であり、震えて止まらない自分を隠す言い訳でした。ガラスの星を割ったときの彼女は、あまりにも脆かったのを思い出します。
しかし、本当の本当に、全部が「虚勢」って言っていいのかな?と。
 
みのりんの中で、バカなことをするのは「弱さを隠すため」ではあるんですが、そうすることで得られた物もたくさんあるじゃないですか。
彼女、小説でも最後の方まで、その仮面を全部は脱ぎ捨てなかったじゃないですか。
 
おバカな仮面、みのりんは結構好きだと思うんですよ。
「みんなが楽しい空間が続けばいい」という彼女のわがままであり夢はかなうことはありませんが、バカなことをやっていたその瞬間、大河ともちゃもちゃしていたあの瞬間、彼女は楽しかったはずなんです。
だからこそ、必ずしも仮面を外して素で生きるのが解答だとは思いません。
また、今まで通りに貼り付いていても、みんながぐんぐんすすんで行くので、彼女はおいてけぼりでしょう。
進路も、アニメ版ではばらばらになるだろうことが暗示されていました。(小説版はスピンオフ等でどうなるか未定)
 
高校時代の彼女の「奇行」と言っても差し支えない行動は、減るでしょう。今思えば、不安定な精神状態ゆえの行動でした。
が、それでも明るくいたい!という思いは今も変わらないはず。それが彼女の中で一番揺るがない部分だと思います。
一時はそれを失って、くずおれるように何もかも失ってしまい、うちひしがれますが、…笑ってたいはずなんです。
アニメ最終回で「あーみんあーみん」言ってたみのりんが「亜美」って呼んでいた一瞬がぐっときました。でもやってることは竜児の顔を引っ張るといういつもどおりのはっちゃけぶり。
そう、それでいいんじゃなかな。
やっぱり彼女はいい意味で「バカ」なんだと思います。それをあとはさじ加減を見ながら、注ぎ出せるだけの子になるはずです。
 
しかし、一人では出来ません。
今のままだと、友人は出来ても挫折したとき不安でなりません。
 

●この世界が全てではない●

みのりんはオレが守る」と言いたいです。
オレがみのりんの笑顔を作りたいと叫びたいです。
でもできない、できないんだよ。
だから、みのりんは振られキャラとして落ち込んでいくのか?失敗を繰り返して悲惨な人生を送るのか?
否!
彼女は間違いなく、新しい人間関係を作ると思うのです。
 
亜美ちゃんなんかはすいすい人間関係を作るでしょう。竜児と大河はぎこちないけど、まあまあ二人いればなんとかなります。
みのりんは、本当に心を打ち明けた相手は竜児だけです。亜美もかな?大河は実はそうでもないよね。
 
高校時代に、あるいは大学時代に「本気で心を打ち明けて話し合った相手」っていたでしょうか。いない人も多いと思います。
なんとなくの友人、うわべだけの仲良し。本気で怒って口論し、ぶつかりあってホンネをどろどろになるまでたたき込む。
この経験があるかないかで人生大きく変わると思うんです。少なくとも自分はそうでした。ホンネなんて言わなくても人生やっていけると思っていました。言ってないで人生やっている人もいるでしょう。
 
とらドラ!」はまさに、その「ホンネ」を言えるかどうかの境界線にある作品だと思います。
特にそれが顕著なのはみのりんですね。
んで、この作品がいいなーと思うのは、ガチでホンネを話したあとに「やっぱなし!」とか「くさーい!」とか言っちゃうところ。そう、くさいんだよ!くさくて、恥ずかしくて、もうどうしようもなくて、まるで自分の心を裸にしたみたいな。
だけどそれを一歩超えると一気に人間は深まります。
みのりんにとっての最初のそれは、大河ではなく竜児でした。
そして、離れました。
 
いいんです。
一度それを経験した人は強い。
竜児や他の人はもう守ってくれないし、奇行も許容されないかもしれないけれども。
彼女が「これから苦労するんだろうなあ」というのは作者ですら思うことなのですが、それでも世界は広いんだもの、みのりんはまた別の人と出会うでしょう、別の人と恋なのかUFOなのかわからない気分に遭遇するでしょう。
で、今回以上に凹むでしょう。本気の失恋をして立ち直れない日もあるでしょう。
でも彼女はその新しい関係の中で、自分を切り開く余地のある子です。
それを今、見られないのは残念だけれども。でも絶対大丈夫。
 
最終回で、竜児のことをぶんなぐったみのりん。そのくらいわがままをわがままと言えるようになれば、きっと大丈夫!
人生に「ハッピーエンド」や「バッドエンド」なんてないんだから。
彼らがどうなるかはこれから出るかも知れないスピンオフの他は、読者が自分と照らしてどう感じるかで判断していくしかありません。
そして、ぼくらはこの「とらドラ!」という作品が「くさい」はずの「マジでホンネ」をぶつけてきたんだから、こっちも「くさくてマジでホンネ」を返してぶつかっていこうじゃないか。
がんばれ!みのりん
愛してる!これからも!
 

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ちなみにこのへんの「恥ずかしいけどホンネを言える幸せ」はペルソナ4と凄くにていると思います。やつらも将来のビジョン曖昧だけど、「初めてホンネ言っちゃったな」というむずがゆい経験の上になりたっています。どんなに心が見えても、コミュニケーション重ねないと分からないこといっぱい、だよね。

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完璧でハッピーエンドまみれな高校生よりも、汗臭くて理不尽で、振り回しても失敗ばっかりな高校生活の方が見ていてぐっときます。それが、竜児の目を通して見たぼくのみのりんでした。それは、輝いていたんだ。
みのりんが星割ったときに「いるよ」っていった竜児は、本当にかっこよかった。
どんどん苦労しろ。そしてどんどん強くなれ!
でも、ドラマチックなシーンは見たいので、やっぱりアニメ最終回最高って事で一つ。
くさいのも、いいじゃーん。
 
〜関連リンク〜
『とらドラ』アニメ最終話を見たら、ほぼイキかけました DAIさん帝国/ウェブリブログ