たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

マンガで見る、秋葉原の電子機器愛。

ちょいとメモ書き。
 
メディアで「メイド喫茶」があって、通り沿いにゲームキャラの女の子が乱舞しているイメージが強めの、オタクの街という印象になった秋葉原、つか「アキバ」。
自分も地方民ながら、東京に向かう時には一回は寄っているので、かなりその変遷は見てきた気がします。
昔は(っていうとじじくさいけど)「電気機器の街」の印象が一番強く、初めて訪れたときに電気パーツショップが軒を連ねているのを見た時は「アジア!」と驚いた物です。
そのうち「パソコンの街」の印象が強くなり、至る所でPCショップが切磋琢磨。windows95の波が激しくうねっていた頃はパソコンとストリートな人たちと外人さんの街、というイメージでした。ジェットセット秋葉原
数年前・・・いやもうちょい前かしら、同人ショップが大通り沿いに大きくポスターを貼りだし、巨大なアニメキャラが路面を見下ろしているのを見るようになって「これはすごいことになったなあ」なんて思って多のですが、今はもうあって当然に感じてしまうから不思議。
いや、他の街ではあり得ない光景なので*1やっぱり「すごい」ことには間違いないんですが、「アキバはオタクが通う街」というイメージで自分が染まっていることに気づきました。
メイドさんが歩いていても普通に感じるんだものなあ。
 
で、ここしばらくを見ていると、また逆行して「アニメ・ゲームオタク文化」から、かつての電気機器・パソコンパーツの面白さ、熱さを取り戻そう!なんていう空気をじわじわ感じたりします。
メインストリートから一本下がったお店のパワーもそうなのですが、特にマンガ。
最近話題のこの二作は特にその「秋葉原の熱さ」を感じました。
 

一つ目がトランジスタティーセット
きららフォワードで掲載しているため、萌え系のイメージがあるのですが、むしろ「機械燃え」でノスタルジック嗜好なステキマンガじゃないですか。
特に30代以降のオタクにはじわじわ来る内容。表紙からして九龍城状態の混沌としたアジアン秋葉原そのままです。
時代は現代で、メイド喫茶が好きな女の子キャラが出てきたりときちんと時代を反映していますが、面白いのはこれが実在の秋葉原ではなくて、イメージされる混沌とした電気街だということ。
メインストリートの、独特なオタクカラーが描かれないだけではないです。
駅前のラジオ会館とかニュー秋葉原センターってすごく雑多じゃないですか。
あの雰囲気を「こんな感じでカオスだよね」という増幅をし、アジアンゴシックの城が誕生しています。
まさにブレードランナーというか香港のような、鉄道高架下の電子パーツ屋とメイドさんの入り交じる混沌とした世界。その中を女の子達が駆け回るコメディなんですが・・・これが何とも郷愁詰まりすぎてたまらないわけですよ!
 
だってね、やはり機械パーツって男の子の夢じゃないですか。しかも「元男の子」の。30代以降くらいの。
それを愛する女の子がいて、その周りを雑多な日常空間が囲っていて、「無限の可能性」を秘めた電子パーツが所狭しと並んでいるんですよ。
もう元男の子が、おじさんの姿で子供に返る世界ですここは。
特に1巻最後の、電子部品屋のじいさんが万世橋で語る、過去のロマンスの話とそのオチは・・・元男の子の夢詰まりすぎです。
ん?女の子ですか?女の子は男のロマンじゃないですか。それでいいのです。
ノスタルジィを機械方面から描いた、褒め言葉として「ずうずうしい」くらいに男の子向けな作品だと思います。
新と旧の秋葉原を知っている人への、秋葉原好きな作者からの強烈なラブレター。
 もう一冊がパーツのぱ
これも秋葉原を舞台にしたコメディなんですが、どちらかというとそれほど古くはない、しかし今の時流に乗ったショップではなく、ガチンコPCパーツの店のお話。
内容も萌えからはかなり離れた視点から見つめています。イメージとしては10年くらい前からしっかりとPC一筋で頑張ってきて、今は「こんなお店が秋葉原にあるよ」と口コミになっている、けれども大きくはない、そんなレベルのお店です。
トランジスタティーセット」はちょっと古めのパーツショップの郷愁に近いのですが、こちらは現役ばりばり。
現役ばりばりっつーことは、商業戦争まっただ中であることもまたしかり。
なんといっても、秋葉原にわざわざパーツを買いに来るんですから、お客さん達は歴戦の強者なわけです。「大同人物語」で出てくる、行軍する兵士状態です。
それらの目を惹き心を惹き、向かいの、隣の、大通り沿いの店舗にいかにして勝つか!?
笑いも交えながら、極めてシビアでリアルな「パソコン商戦」が、生々しくガチで描かれています。
 
まあとは言っても、ヒロインの本楽さんがかなり奔放な女性のため、めちゃくちゃなことをしでかすから痛快で、肩肘はらず気楽に楽しめます。楽しめますが、今後の展開や未来を考えるととてもじゃないけど目が離せなさすぎです。
パソコンパーツって今日と明日で値段が違うじゃないですか。それどころか一日の内で値段変わったりすらするじゃないですか。
このマンガ自体が、そういう変化にしがみつくだけじゃなく、さらに一歩前に進んでいるわけです。そうじゃないと、生き残れない!
お店側は胃が痛い話かもしれませんが、購買層であるこちらとしては・・・それがまた面白くてもうね。うーん、パソコンを巡る人間模様は秋葉原ならでは。
コメディとして2〜4ページずつ展開していくため、一冊出るまでにえらい時間のかかる作品なのがネックですが、おかげでこの1巻だけで、ものすごいボリュームに。読むのに相当時間がかかる本で、充実度は高いです。コストパフォーマンスがすごくいいマンガ・・・というノリすらも秋葉原っぽいと感じるのは気のせいかしら。
 

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パーツのぱ」でこんなことを著者が書いています。
秋葉原はいつも変化していて、何度資料撮影に行っても、すぐ素材が古くなってしまうのが悩みです。」
トランジスタティーセット」ではこんな台詞が。
「時間のもたらす変化って不思議だよねー」
「新」がいいとか、「旧」がいいとかじゃないんです。新も旧もどちらも秋葉原
これらのようなマンガによって「今とかつて」の秋葉原を見つめる面白さが再認識されはじめているのは、秋葉原の変化そのものを楽しんできた子供達が大人になり、発信する側に回ったからなのかなー、なんて思ったりしました。それを「電子機器を愛する女の子」という、あまりに魅力的な方法で表現されているのが、少年心を刺激しまくりなのです。
そして。これらの作品もまた、数年後には「秋葉原の資料」の一つになるのかなーと考えると、なんだか感慨深いですね。
 

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ちなみ、という感じになってしまいますが、AV機器愛を異常なまでに詳細に描いた作品が「でじぱら」。

あまりの濃さに、なぜ電撃コミックスなのかいい意味で分からないほどです。読んでいて全部理解出来た人はAVマニアの称号を得られること間違いなし。
秋葉原についてはそれほど執着してませんが、やはりきちんと語られています。
 
〜関連記事〜
旧式の秋葉原の印象
新式の秋葉原の印象
この記事を書いたのは2006年。
「新式」も、今はすでに別物になりました。この2・3年で色々ありすぎました。
 
〜関連リンク〜
胃が痛くなりそうな秋葉原パーツショップ漫画 「パーツのぱ」 売り切れ - アキバBlog
ここ20年での一番の変化といえば「ネットで話題」という表現そのものなんじゃないかしら。
秋葉原の専門店街
こちらの写真が2004年のもの。むあー、たった5年ですが、まるで別物な感じが。

*1:仮に札幌のテレビ塔にコードギアスの巨大ポスターとかぶら下がっていたらおったまげてしまう。