たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

私が守ってあげるから、どんなに歳が離れていても私はあなたが好きだから「これは恋のはなし」3巻

これは恋のはなし(1) (KCx ARIA) これは恋のはなし(2) (KCx) これは恋のはなし(3) (KCx ARIA)
1、2巻がに陰る連続刊行だったのでひさしぶりな感じがしましたが、二巻出たの5月だからそんなに久しぶりじゃありませんでした。
むしろ早かった・・・。4ヶ月に一冊ペース(一冊につき4話)ですね。だから次は来年の頭。
 
31歳男性と10歳少女の不思議な関係の物語、雑誌で読み続けているくらいに好きです。
いままでのあらすじはこちら。

31歳おっさんと10歳少女のいびつで爽やかな関係、これって恋なの?「これは恋のはなし」
私たちの関係は依存じゃない、だったらこれって恋でいいの?「これは恋のはなし」2巻
 
なーんつかさー。
男は30前後になったとき、少女と向かい合うと、自分を見直すもんだよねほんと。
節目の年だし、身を固めるかどうか迷う時期だろうし、少女が恋愛対象ではなくて保護する対象になるから、ってのもあるんでしょうが、そこに恋愛が交じると・・・くっそ面白いぜ。
ちなみに30前後男子と少女で思いついたのをあげただけでも・・・。

少女不十分 (講談社ノベルス)
西尾 維新
講談社
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などなど。アプローチは全部ばらばら。
三十路男子には少女が必要なんですな。うんうん。
 

●俺と彼女の成長の一歩●

で、連載中ずっと胃を痛めていたのが、ヒロイン遥の学校でのいじめ問題。
大人から見たら、明らかに「いじめ」です。
しかし遥は頑として認めません。
 
もちろんそれを解決していくのが3巻の展開なんですが、解決っていうのとちょっと違うんですよね。
このコマがそれを明らかにしていると思います。

真一(31)が、遥に言っているヒトコマ。いじめっこに言ってるわけじゃないんです。
真一は未だに、遥が家に来ることをよしとはしていません。
正確には「来ていると実はほっとするけど認めようとしていない」といったところ。ツンデレですね。
まあ、相手が少女だと「おいで」とも言えないかあ。
とはいえ、明らかに特定の相手にいじめられている彼女に対して、こう言い切る真一はちょっと面白いです。
 
そもそも人に興味がない真一。
その彼が、いじめられている遥が杉田くん(遥のことが好きなクラスメイト)に食ってかかるのを見て、遥をしかるわけですよ。おや、言わなくてもいいのに言うんだ?
子供同士のことは口をはさまない、と言っていたのに、ここだけは彼ははっきりと自分の意思で言うんです。
 
実は出てきているキャラのなかで、一番大人になりきれていない、子どもみたいに素直にもなれない真一。
その真一の心の中が、遥によって掘りくりだされているんですよ。
もちろん遥が意図してではなくて、遥と接することで自然と。
この発言も、彼にしてみたら「ひどい事言った」「ガキにこんだけ言えばわかるだろ」みたいな気持ちもあったようです。
ところが遙はこの発言を「やさしい」と言います。真一さんはやさしい人だと。
 
いじめ問題自体はこの一連の流れを経て、遥が思いを改め、真一の友人二人の助力もあって解決していきます。
興味深いのは、この作品においてそのいじめ問題はさほど重要ではなく、いじめ問題から真一と遥の関係がひとつ変わった事のほうが重大だということです。
 

●私が守るから●

いじめというか、新キャラのクラスメイト詩子が杉田くんを好きで、杉田くんと仲がいい(一方的に遥を慕っているだけですが)遥が憎い、というだけで嫌がらせをし始めるわけです。
まあでも・・・これは立派ないじめですよ。遥は認めないけど。
ここに大人が力で介入してもいいんですが、真一はそうしません。子どもは子ども同士でなんとかやれよと。
まあ、遥が真一の家に来ているのも、来てほしくてやってるわけじゃないですし、そう言うのもわからんでもないですが。俺は保護者じゃねえよと。
遥は強い子です。いじめに全く屈しません。
ただ、許せないことがひとつあります。

「もし真一さんの迷惑になるようなことをする人がいたら、誰であろうと絶対許さない。真一さんのことは私が守るから」
いじめていた詩子は、遥がはっきりと杉田ではない好きな人がいるという発言と、この発言でころっと態度を変えます。
正直胡散臭いんですが、逆に言えばこの子も素直すぎるってことなんですよね。人の痛みがわかってないという問題はありますが。
しかし、詩子が思いをひっくり返すくらいに、真一の心が動くくらいに、彼女のこの発言は大きなものでした。
決して大げさに言っているわけじゃなく、真剣にそうするっていう責任を背負っての発言なんですよ。
何故そう言えるかというと、今まで彼女が実際そうしてきているから。
言ったことは全部やってきている。
 
年齢的には31歳と10歳、親子レベルに離れています。
しかしどうだ、3巻まできてみて、子どもなのは真一のほうで、大人なのは遥のほうじゃないか。
まあ、もちろん視野的に広いのは真一なので、真一のおかげで遥はしっかり立てる、というのは重要なところなので忘れてはいけません。
相互作用で大人になれない大人と、大人の女になろうとしている少女の歯車ががっちり噛み合います。
 
もう一度表紙見て欲しいんです。
これは恋のはなし(1) (KCx ARIA) これは恋のはなし(2) (KCx) これは恋のはなし(3) (KCx ARIA)
一巻から遥と真一の頭の位置が徐々に重なり始めているんですよ。
子どもだ子どもだ、という感覚から、一人の人間として認め始めている真一と、背伸びして少しでも近づきたい遥。
この距離感がいいのですが、真一がふらふらしてはっきり決めかねている。
でもこのままじゃいられないよ。
さてここから始まるのは成長の物語なのか、「恋のはなし」なのか。
 
まあひとつ言えるのは。

遥ちゃんは本当にしっかり者かわいいってことですけどね。
こういう時の、歳相応な表情もちゃんと見せてくれると安心できます。かわいい。
 
余談ですが。
三巻のMVPは、真一の幼馴染で担当編集の大垣薫ことガッキーだと思います。
出番少ないけど、「大人」としてどう行動するかを冷静に取りまとめたのは彼だよねほんと。
31歳の大人三人、10歳の子ども三人。
面白くなってきました・・・。