〜空気を読むことと、人の個性〜アスペルガー症候群についてしらべてみた
●おいおいちょっと待て、と男性が思うこと。●
ちょっと待て!と思う瞬間ランキング (秒刊SUNDAYより)
自分はなるべく「ランキング=世間の常識」とは思わないように心がけているのですが、このランキング結構「うわあ、わかるなあ」って感じで面白いです。あるあるネタに弱いんだよなー。1位とか納得だもんなあ。人の振り見て我振りなおせとはよく言ったもんです。ここに載っているような人間にならないように精進しよう。
さて、これは男性から見たアンケート結果だそうです。働いていたり飲みにいったりしている空気があふれております。その中で一際目をひくのが3位です。
空気が読めない人
あいたた。
自分も空気読めずにしょっちゅう失敗しますヨ。余計なこと一言言っちゃったりなあ。
また、空気を読もうとしないで自分のペースで振り回す人は、確かに正直苦手ではあります。自分もそうしているかもしれないけど。
それでもやっぱりあまりにも空気を読むことを放棄して迷惑かけられると「ちょっと待ってヨー」とは思うわけです。
しかし、以前コメント欄で「空気を読むことができない人もいるんだ」という話を聞いてびっくりしたことがあります。読めないのではなくて、読むことが機能的にできない人です。先ほどのアンケートは男性の結果でしたが、この悩みを抱えているのも大多数が男性だそうで。んんん?これは無視できない何かがあるぞ?
どうやら「アスペルガー症候群」という名前がついているそうです。
早速ちょっとしらべてみました。
●はたから見ると普通の人なんだ。●
「自閉症」という病気があります。正直自分でもこれ良く分からないし、今でもどこからどこまでかさっぱりわかりません。と思って調べたらお医者さんでも分からないことがあるそうです。軽度だと全然気づかないこともあります。
大雑把に書くと「社会性、コミュニケーション能力、想像力の発達の障害」のことだそうです。と言っても、普通のひきこもりや、ストレスによるうつ病などはこれには当てはまりません。生活環境や教育でどうこうかわって自閉症になることはないです。
なんか自分の認識の中では「うつ状態で自分の殻に閉じこもることなのかなあ」なんて思ってましたがそれは全くの別物。「自閉症」は先天的な症状。最近では混乱や間違ったイメージが強すぎるため、あまり「自閉」(うつの症状)と「自閉症」って言葉は使わないようです。
いやはや、ここ勘違いすると危険ですネ。「テレビ見たりゲームばっかりやってるから自閉症に」とか「虐待のせいで自閉症に」は間違い。
さて、自閉症にも二種類あります。IQが比較的低く(70以下?)、コミュニケーションを取ることが出来ず、言葉も正しく使えない状態の脳の障碍を「低機能自閉症」と言います。これ、普通に言われる「自閉症」ですネ。
しかし、それよりも何倍も多く、日本にも70万人以上いるのではないかと言われているものが「高機能自閉症」。先ほどもあげた「アスペルガー症候群」はコレと同じことのようです(厳密には違うらしいですが大体同じです)。
一見すると全然わからないんですよコレ。たとえば。
・知識量がとても多く、好きになった分野に関しては人と同じ、あるいは人並以上にできる。
・興味を抱いたものへの追求心が人一倍強い。
・物に対して激しいこだわりがある。
なので、こだわったものに対しての能力的には平均値よりも優秀な場合もあります。
数字などの暗記能力もとびぬけている場合があります。電話番号なんてへのかっぱ、なんて人を自分もよく見てきました。連絡網はもちろんのこと、生年月日まで全員分覚えている人を見たときは驚いたなあ。
しかし、だからこその悩みを抱えているのが「アスペルガー症候群」の辛いところです。
(追記・知能が高い場合はあるけれど、興味があることにはずば抜けて高く、興味の無いことはとことん学習しようとしない、という特徴のため、必ずしも優秀な知能を持っているわけではない、というコメントをいただきましたので修正しました。ありがとうございました。1月25日)
(追記2・整理整頓について書いていましたが、空間認知が苦手ということをお聞きしましたので、修正しました。情報ありがとうございまいした。1月26日)
●近づきたいのに、距離が分からない。●
一見すると全くその症状を持っていることが分からないのが、いいところでもあり困難すぎるところでもあります。
「勉強そこそこできるんだからいいほうじゃないか」と思われがちですし、自分も正直そう思っていました。が、だから誰も気づかないまま、大人になることも多々。明らかに発達障碍なのが目に見えているならともかく、全くそうは見えないわけですから「こいつ空気読めない」とレッテルをすぐに貼られてしまいがちです。
これは辛い。けど見分けるのがあまりにも難しい。
見分ける一つの要素として。アスペルガー症候群の特徴として、こんなのがあるそうです。
・相手の表情や仕草を見て、感情を理解できない。
・客観的に自分の会話や文章を理解できないので、自分の世界になってしまう。
・抽象的な言葉、曖昧なニュアンスの識別ができない。
・整理されたもの、順序だったものではないものに対して非常にいらだつ。
・感覚が過敏すぎて、ストレスがたまりやすい。
・動きに目立つクセがある。
とにかく自分の世界の時間の流れから離れることができません。
しゃべれないわけじゃないんですよ。ただ、「自分用語」があって、そこから少しでもずれてしまうと融通がきかなくなる、なんてこともあるようです。
人が考えていることと自分が考えていることなんて、ぜーったいかみあうわけなんてありません。100%シンクロするのなんて双子でもムリ。シンジとアスカでもムリ。それをうまく相手の思っているイメージにあわせて話そうとするから「会話」が生まれるわけです。
んじゃ人間って普通は、どうやって相手の思っていることがわかるのん?と言われると。
・顔の表情や目の微妙な変化。
・動きや動作、声のトーン。
・相手の話している文章の流れ。
このへんがいわゆる「空気」ってやつでしょうか。100%読みきることはムリでも、人間は知らず知らずのうちにそれらを見て判断するように出来ているんでしょうね。すごいね。考えてどうこうできないもんコレ。
たとえば。自分はまゆげの太い女の子が悶絶するほどに好きなんですが、それは表情がにこやかだったり悲しんでいたり照れていたりするのが明確にわかるからです。目立つんですよ。
ところが(`・ω・´)となっているのと(´・ω・`)となっているのを見て「知覚」はできても「理解」ができないのが「アスペルガー症候群」。表情の変化で相手の気持ちがわかりません。
また、文脈で雰囲気を読み取るのも苦手。自分の中で「努力」みたいなちょっと幅のある言葉を理解するとき、自分ルールでは分かるのです。ただ、他の人のいう「努力」と、自分のイメージしている「努力」が当然かみあうわけはありません。そこで、どうしても相手の言っていることを理解できず、詰まっちゃうんだな。
ひっくりかえすと、冗談やシャレを言われても理解できないわけです。皮肉やジョークを「流す」ことが出来ず、言葉のままに受け取ってしまうので、ものすごき傷つきやすかったりします。
言葉が「自分の認識」で使われる、というのがミソ。アスペルガー症候群の人達は先ほどものべたように非常に知識量が多い場合があります。そうすると言葉もハンパなく難しいのを、辞書並に覚えている人もいるようです。その辞書並の難しい言葉を、自分ルールで話すわけですから、受け手側にはさっぱりわからないこともあります。それは実は、ものすごい個性あふれる文章へとつながっていくのですが。
苦しさの一つとして、自分の意見が通らなかったり、イメージしている順序から狂ってしまうとものすごいストレスに襲われます。はたから見ると「キレた!」と見えます。
でも。それは「嫌い」でキレてるんじゃないんです。むしろ、「大好き」なんです。
本当は、誰よりも他の人と仲良くしたいのに、どうすればいいのか分からない、自分と他人の距離が全く分からない。アスペルガー症候群の苦しみがそこにあります。
●個性として、才能として●
人との接触の仕方がわからなくて、一生懸命がんばると空回り。そして「空気読めないなあ」とはじかれて悲しい思いをする。
どうしてもそのカベを乗り越えられず苦しむアスペルガー症候群の方も多いのですが、それはすぐれた個性でもあるようです。
アスペルガー症候群の人は、順序立ったもの、規則的なものに対して非常に執着を寄せることもあります。具体例としては、「化学方程式」や「電車の時刻表」などがあります。あ、化学好きや電車好きがアスペルガー症候群というわけでは無いです、念のため。また、収集癖が強かったりするので、一見「オタク」の典型に見えることもあります。集めるものも、本だったりCDだったりする場合もあれば、石とか空き缶だったりする場合もあります。それは個性バラバラ。
とある知り合いの自閉症の子は、毎日テレビ欄と株式のニュースを全て暗記していたのが印象的でした。すごいんだってマジで。聞いたら全部株の相場暗唱できるの。
化学・コンピューター・物理・数学などにその能力を発揮する人は現在でも非常に多いみたいですネ。興味を持ったらとことんの性格ゆえに、普通の人には見ることの出来ない世界を見る独自の視点を持っていることがあります。
有名なところとしてはアインシュタインでしょうか。ビル・ゲイツも軽度のアスペルガー症候群という話を聞きました。なるほど、彼にしか見えない世界があるんだな。
芸術方面でもまた才能を発揮することがあります。音楽なんかは聴覚が過敏なほどになることがあり、耳で聞いて一発で全て覚えて正確に演奏できる人もいるそうです。絵画や小説も、自分でしか見ることのできない世界を見て、自分の言葉でしか語れない言葉で描く、そんな優れた個性を持つ人が多いとか。
こちらも有名どころとしては、ゴッホやダヴィンチなど。山下清もそうかしら。
自分もきちんと理解できていなかったのですが、調べれば調べるほど「個性」なんだな、と強く感じました。
(追記・サヴァン症候群について記述していたのですが、サヴァン症候群は「知的障害を伴いながら、ある点について天才的な才能を発揮する」とのことで、アスペルガー症候群=サヴァン、というのは語弊があるとの指摘がありました。サヴァンはもうちょっと調べて見ようと思うので、今回は誤解を招かないためにカットします。指摘ありがとうございました。1月23日)
●お互いの個性に歩み寄る●
メノウ
『彼らはまさしく「空気を読む力」が先天的に低いため、他人とのコミュニケーションをとるのがとても苦手です。しかも、周りからは健常者に思われている(本人もそう思っている場合もある)だけに単なるワガママにしかみなしてもらえず、孤独を感じる人も多いのです。
そもそも、空気が読めない事が一概に欠点と言えるかどうかも疑問です。「空気が読めない」のではなくて、「空気の感じ方が独特」という方が正確なのではないでしょうか。芸術家なんかはまさしく、世界の見方が個性的だからこそ独創的な作品を生み出したりするわけですから。
空気を読む能力は努力だけでどうにかなるものではない、空気を読めないからといってその人が鈍感なわけではない、ということを少しでいいから分かってもらえるとありがたいです。』
(コメント欄より)
自分がアスペルガー症候群に興味をもったきっかけになったコメント。本当にありがとうございました。
男性が全体の75%をしめるというアスペルガー症候群の人々。先ほど70万人いると書きましたが、おそらくもっと多いのではないかと思っています。だって、分からないくらい軽度の人が、いーーーっぱいいるんです。全然珍しいものじゃないし、遠い特殊なものでもない。
犯罪者にアスペルガー症候群が多いなんていう心無い意見もマレにあるようですが、むしろ決まりを守りすぎるくらい守る傾向があるので、偏見を持つのは危険だなとも感じました。
ただ「そういうのがあるんだな」と知ることで、「こいつ空気読めないな!」という苛立ちを減らすことも、「空気が読めなくてつらい」と言う人の気持ちを知ることもできると、ちょっとだけ思いました。ちょっとだけなんだけどね、自分も器用なわけじゃないし。でも大事。
もちろん、「空気読めない人」がすべてアスペルガー症候群なわけでは決してありません。どちらかというと本当に嫌われるのは「空気を読もうとしない人」だと思っています。気づいてもマイペースを崩そうとしない頑固な人や、自分の好きなものに執着しすぎて他人を思いやれるはずなのに思いやれない人。
しかし、アスペルガー症候群の人は「なんとかして少しでも空気を読もう」として真剣になるゆえに、読めてない行動をとることもあるそうです(じっと見つめてくる、一生懸命会話の話題を作ろうとする、など)。だから「不器用」に見えることが多いようです。また自分で不器用だと分かって悩むことも多々。
むしろ、お互いがそれを「読んで」、対応できるといいな、と理想だけ書いておきます。難しいんだよね、お互い。そうでなくても自分らも空気読むのって、ほんと難しいもんヨ。ましてや文字だけのネット上とかだったら、ねえ。
メノウさんも書いてくださっていますが、みんな「個性」があるわけで、それを受け入れ受け入れられ、時には衝突したり教えあいながら会話したいなあ、って思うのです。
ちなみに自分の個性は百合が好きなことです。よろしくお願いします(mixi登録の始めての挨拶っぽく)。
〜関連記事〜
空気を読むってどう読もう。
〜関連・参考リンク〜
自閉症スペクトラム指数(Autism-Spectrum Quotient: AQ)自己診断
ネタじゃなくてちゃんとした診断テストです。自閉症の診断は「断罪」的なものでは決してなく、「自分や子供の発達の手助け」の一つですので、気になる方はやってみるのもいいかも。あと、これが完璧な結果ではないので、気になる場合は医師に相談するのが吉です。
アスペルガー症候群を知っていますか(日本自閉症協会)
日本自閉症協会京都支部
自閉症のしおり
そういえば前日の野球の解説をそのまま言える人を見たことがあるなあ。正直その記憶力、尊敬しました。
ADHDとアスペルガー症候群
「のび太・ジャイアン症候群」って名前が気になるなあ。
アスペルガー症候群に関する私的研究
高機能自閉症・アスペルガー症候群の理解と援助
大人のアスペルガー症候群
大人の中にいる、風変わりな人の個性について触れています。
じゃじゃ丸トンネル迷路
客観的に、かなりの分量の自閉症記事を扱っています。ぜ、全部は読めないヨぅ…。
大人のアスペルガー症候群(上)(Silent Voices)
アスペルガー症候群について(サイバーキッズクリニック)
アスペルガーの館
ASであることなんて、そんな大したことでありません。いろいろある人の個性のひとつにすぎないのです。