たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

商品化される「萌え」の形を「もえちり!」から考えてみる。

問1、あなたは「萌え」系のマンガが好きですか?
解答、はい、好きです、大好きです。
 
問2、あなたは帯に「萌え」って書いてあるマンガは好きですか?
解答、え、うーん、そ、それはちょっと。
 
ええ、矛盾した答えです。そうですとも!
自分が萌え系オタであることを隠すつもりはさらさらありませんし、今の萌え作品の中に光る物がいっぱいあるのも感じます。萌えだからをなめてかかっちゃいけません。
しかし、オタクだからというか自分が傾いでいるからというか、「萌え」って書かれていると二の足を踏んでしまうのは事実だったりします。「萌えよ!戦車学校」を見たときもどうするか1月以上悩んだ記憶があります。
まあ買ったんですけど。
自分達で「萌えるなあこれは」と脳内で考え、探していくのはとても楽しいものですが、商品として「萌えです」と銘打って出されると「ムムゥ」と二の足を踏んでしまう経験、もしかしたらある人もいるのではないでしょうか。
 

●「萌え」という言葉を使うのはどんなとき?●

「萌え」の意味は使われる環境によって変化する。
「萌え」の意味は使われる環境によって変化する。の蛇足。(モノーキー)
非常に面白い「萌え」論なので必見。
特に一つ目の記事は、「萌え」が使用される場合を3種類にわけて説明されています。
注目すべきは一つ目。

商業にとって、萌えとは漫画絵文化が他の文化に波及することである。
つまり、漫画以外のモノに漫画絵がついたら、なんでも萌えなのである。

オタクな自分としては「いや、でも、それは!」と言いたくなるところですが、これを全くの第三者から、あるいは作る側からしたらそういう意識は少なからずありますよネ。
オタクでも、街頭ポスターや新聞の記事などにアニメ・マンガ調のキャラを見かけると「萌え化ですか!?」とついつい言ってしまうトリック。なんでそう感じちゃうかはもう少し考えてからじゃないと自分も分からないのですが、脊髄反射的に言っちゃうんですよねぇ、不思議と。刷り込まれてるんでしょうか。
 
いや、今の「萌え」攻勢って実は自分好きなんですヨ。
単純に「マンガ絵くっつけて高く売ればいいんじゃない?」ってのは嫌い!ヘイト!ですが、記号的に「萌え」を割り切って使ってるマンガや本はもう「文化」だなあとか思うので、自分が面白いと思ったら手に取ります。まあ、文化っていってもサブカルですが。
しかし、「なんでも萌えればいいってもんじゃないぞ」という意見もたくさんあり、それもそのとおりだと思います。難しいなあ。
そのへんを堂高しげる先生のマンガ、「もえちり!」から考えてみます。
 

●とりあえず「萌え」入れとく?●

作者の堂高しげる先生といえば「全日本妹選手権!」で、ありとあらゆるオタクネタを詰め込んでカオスにした作者。今読んでも分からないネタが多すぎです。かめばかむほど、もとい、オタが深まれば深まるほど面白いタイプのマンガです。「これは必見!」…とは言いにくいタイプのマンガですが、「自分はオタクです。なんか文句あるか!」と言える人なら読んで損はありません。
はて、そんな濃すぎる作者の作品ですが、「もえちり!」は「47都道府県に萌えキャラを当てはめてお金儲けしよう」というヒドいコンセプトで作られたマンガです。
簡単にいうとこういうマンガなわけです。

今の「萌え産業」に対して「なんでも萌えにすれば売れると思いやがって」と思ったときのオタクの心を言い表したかのような会話です。まあ実際こんなのありえないわけですけどね。あくまでもイメージとして。
はて、「萌え」産業といえば、女の子ですよ。かわいい女の子をどれだけいっぱいいれられるかですよ。女の子を男の子にしてもいいですが女の子の方が目をひきやすいです。
できれば、色々な性癖の人に合わせ、あらゆるバリエーションに対応できれば最高なわけですヨ!

…まあこうなりますよね。
元ネタはもちろん、あらゆるマンガで用いられている某魔法先生のパロディです。
都道府県の擬人化的キャラクターが実に47人。萌え本でいかにもありそうな設定そのものをパロディにしています。
だからキャラ紹介も、

「愛知博美ちゃんをあなたの会社や企画などのマスコットキャラクターにいかがですか?」
萌え女性擬人化キャラ=お金儲けのアイテム。
いやあ、すがすがしいですね。ちゃんと本当にシリウス編集部の住所が載っているのがにくいと言うかにくたらしいというか。
一人一人こんな感じで紹介していくのですが、47人なんて到底無理なので、

こうなる。
なんかこのぞんざいさが、いかにも「萌え入れとけ」的で痛快です。
 

●あからさまな「萌え」も、なかなかいいものですが。●

どのキャラも都道府県の(偏った)特色をむりやり押し込んだキャラなので、出オチ気味な「萌え」のオンパレードなのですが、ちゃんと一人一人個性を持って描かれているのが堂高先生らしさ。冷静に考えたらたった2巻で全47キャラってとんでもないなあ。
んで、そのキャラたちなんですが、「あからさまな萌え批判」の側面で作られているので確かに鼻につくクセがあるのですが、絵として表現すると、かわいいんですヨ、これが。

ほら!
ちなみにこのキャラを選んだのは単なる好みです。スパッツ!巫女さん!
すいません。少し暴走しました。
しかし、改めて冷静に考えると、これらのキャラ達47人「狙って萌えを詰め込んでる」んですよね。だからなんていうか、萌えたら負けだと思ってる。
そして、それを忘れさせないかのようにペシリと。

萌えるスキなんて与えてくれません。毎回こんな感じです。この絵柄も某妖怪やからくりの人風ですネ。
 
作られた「萌え」なんて外側のものですよ、でも外側だけでも萌えるんでしょう?どうよ今のオタ社会。と言われているようです。
そう聞かれたら…うん、そうですね、不覚にも時々「萌え」ましたヨ!と涙ながらに地面を拳でしこたま殴りながら自分に絶望するのでした。
 

●んで、はりぼて「萌え」はどこへ行ったかと言うと。●

はりぼてで、人造な「萌え」の塊を流し込んだその先に、このマンガはどこに行ったかと言うと、2巻で打ち切り。
個人的にはこのパロディ+自虐的なノリは好きなのでもっと読みたいマンガなんですが、「そんな外っつら萌え文化でいいの?」という本編の流れと同じような結末を迎えたのは幸か不幸か。
もっともいいタイミングでばっさり終わってるので、最初から2巻で終了させるつもりだったんじゃないかと思ってしまいます。
ぶっちゃけキャラほとんど死ぬし。
そして最後がコレ。

ああ、もう色々ひどい。最後っ屁。
でも、こういうマンガなんだから仕方ないです。最初から「萌えいれて商売したらどうよ」のノリを茶化し続け、ぱっとはじまりぱっと散りました。
しかし二巻でさっくり終わってしまうと、なんだか今の「単なる萌え産業」の行く末を暗示しているようです。ものすごく明るいマンガですが、その笑いが黒いニヤニヤになっていきます。
あ、マンガ自体は「妹選手権」よりもネタがライトな「ご当地ネタ」なので、読みやすくてオススメし…ずらいなあ。今の「萌えブーム」を笑って見てられる人向けです。
 

●今年の「萌え」産業はどこに行くのかな●

「萌え」という単語が記号のようになり、「とりあえず入れておこう」という方向性が増えつつあるのは確かでしょうね。
最近は予想だにしないところにくっついたりするもんだから、オタク生活長い人でもびびることがしばしば。また、擬人化ブームも長生きなもので、いまだに新キャラがびしびし登場し続けています。「萌え」という共通言語の上で。
「もえちり!」はそれを軽快にドス黒く笑い飛ばしているわけです。自分を過剰に見せすぎるというテクで。
 
個人的にはそういう記号化された「萌え」も、ありなんじゃないかなとは思うんですよね。いわばジャンクフードです。作っている側もそれが永遠に愛されるものになるとは思ってないだろうし、受け取る側もネタ程度に受け取っておけば「ニヤニヤ笑って」楽しめるわけです。
ただし、それは完全に「一瞬で消費されるもの」であることを理解しておかないと、「もえちり!」の内容のように手痛いしっぺがえしを食らうことになります。そのうち、本当に空洞化した「萌え」は今年あたりどんどん淘汰されていくのでしょうネ。このへんの判断基準は個々の価値基準にゆだねられるわけです。
加えて、最近は「萌え」を冠してはいるけれど内容の濃いものが増えているのを念頭においておく必要もあるかな、と思っています。萌え本もかなーり良質なものが続々出ています。どうせ読むなら内容+かわいい女の子、って考え方は大好きですヨ。
 
マンガなどでもそうですが、帯に「萌え」とか書いてあるとひねくれオタクとしては「うーん」と悩んでしまうのですが、別に内容が「萌え」狙いでもなんでもない良質な作品があったりするんですよね。なんだろう、「萌え」って書いてあると売れ行きが伸びたのかもしれません。が、今後はそういう部分のあおり文句としての「萌え」は減っていきそうな気がします。そして、心から見ている人たちが「自分の萌え」を探せる作品が増えていって欲しいな、と願うばかりです。
ただ、モノーキーさんが書かれているように、「萌え」は色々な見方が出来るにもかかわらず性的なイメージが先行している印象はあります。便利な言葉だから文章上では使いやすいんですけどネ。
 
というわけで、今後は「萌え」+「癒し」で「もにゃし」が流行ると思います。
いやどうかな。
 
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もえちり!(1) (シリウスKC)もえちり!(2) (シリウスKC)全日本妹選手権 Vol.1   アッパーズKC