たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

どんなにつらくともこれでいいのだ。筋肉少女帯「猫のテブクロ」


曲目

1、星と黒ネコ
2、これでいいのだ
3、日本印度化計画
4、星の夜のボート
5、PICNIC AT FIRE MOUNTAIN〜DREAM ON JAMES,YOU'RE WINNING〜
6、GO! GO! GO! HIKING BUS〜CASINO ROYALE〜
7、最期の遠足
8、月とテブクロ

欠番だったギターに本城と橘高が参戦。これで22th筋少と呼ばれる、よく見る筋少メンツが集まります。このあと10年近く、メンバーチェンジがありません。
音楽としてもパンク寄りだったサウンドが、橘高というメタル信者の影響で一気にスラッシュ寄りになります。「筋少は橘高サウンドじゃないと!」という人も多いのではないでしょうか。
 
テレビをふとつけたときにやっている「行方不明者」のニュースや突然の緊急信号に、子供時代怯えたことはないでしょうか。自分はニュース速報で入る「行方不明」のニュースがもう怖くて怖くて、今も苦手なんですよ。なんか死んだかどうかもわからない不安感がつのって寝むれなくなります。そんな経験がある人ならこのアルバムはかなり強烈にトラウマになるはず。
5から7トラック目までが一連の流れになっています。火を吹く山へニコニコ気分でピクニックへ行き、バスにのって行くわけです。この時に出てくる会話がまた難解。

「遠足に行ってる間に猫が逃げてしまったら、ぼくはどうすればいいんでしょうか」
「猫の名前はなんて言うんですか?」
「テブクロです。」

先生のかみ合わなさっぷりといい、不条理っぷりといい。あ、「ケムリ」に続いて二種類目の猫の名前ですね。テブクロ。結局遠足に猫は連れて行けません。死ぬこともあるから。
どうにも「猫」という存在がオーケンの心理の「自我」や「不安感」の象徴に思えてなりません。猫を背負う、というイメージはこの後も引き継がれ、エッセイ「猫を背負って町を出ろ!」という題名に顕著に現れます。
どこか遠くへ旅へ出よう、と「sister strawberry」では言われていましたが、今回は遠くに出かけた後行方不明になるわけです。
それにしても途中で入るニュース速報が、もうイヤで仕方ない。背筋がぞわぞわします。もっとやってください。
 
「これでいいのだ」はライブでもよく演奏されていた代表曲です。もちろん、バカボンからとられたフレーズです。オーケンは「空手バカボン」というユニットも組んでいたので、その傾倒っぷりが伺えます。
天才バカボン」のマンガを読んだ人ならわかると思うのですが、バカボンってすごい不条理なことをさらっとやってのけるんですよね。時として強烈なくらい残酷なことをゲラゲラ笑い飛ばします。両手両足のないだるまになってもゲラゲラ笑うのです。そして「これでいいのだ」。強引とも言えるフレーズですが、その考え方は筋少にも通じていきます。
「どんなにつらいことがあったって、これでいいのだ」罪を犯していて、13年の刑期を終えたというのに、恋人が死んでしまう。つらい。しかし「これでいいのだ」。
前作で逃避を図ったオーケン。今回は開き直りなのかな?と思いきや。
「だがしかし、これでいいのか?」
答えはまだ、ありません。
 
あえて答えといえば、超名曲「日本印度化計画」

エッセイでも何度もカレーの話が書かれています。カレーは辛い。辛いと脳みそがふわふわして、ハヒハヒ言うと、偉い人もそうでない人もすべて同じラインに並んで軽いトリップ状態になります。ほら、麻薬なんかよりはるかに安全で平和的な逃避じゃないですか、カレー!ナチュラルハイ!飛びますとびます。
そんな冗談めかした、ポジティブさとへたれっぷりを抱えた逃避行が非常に心地よい一曲です。
はて、オーケンはこの歌作ったときに非常にビクビクしていたそうです。なぜかというと「印度化計画、とか書くことで政府転覆をもくろんでいるのではないかと感じる人がいたらどうしよう!」と思ったから。結果は「いいコミックソング」ということでおしまい。なんとも「らしい」エピソードです。ステキ。
ちなみにこの曲もポップンミュージックに入ってますね。選曲した人天才。ちゃんと「ハヤシもあるでよー!」まで入ってます。
 
次回「サーカス団パノラマ島へ帰る」
 
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ちょっとずつ追加してます。
「筋少のライブにいったまま、帰ってこなかった…」筋肉少女帯「仏陀L」
脳髄は人間の中の迷宮であるという観点からあえて許そう。筋肉少女帯「SISTER STRAWBERRY」