たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ぼくらはプリキュアにはなれないけれども。

●正義、勇気、友情、夢、オタク。●

アニメの中のヒーロー・ヒロインは叫びます。
「正義は負けない!」
「勇気を出すんだ!」
「私たちには友情がある!」
燃えますネ!自分も幼少のときからアニメで育った世代。正義大好き。友情大好き。
自分もヒーローということでヤッターマンにあこがれて、三輪車の後ろに脚をかけて猛スピードで立ちこぎして、そのまま勢いづいて走っている車の下に潜ってしまったのは軽いトラウマです。
そして、アニメには夢がありました。果てしない宇宙、広大な大地、さっそうと駆ける自分と仲間たち。アニメのヒーロー・ヒロインはただまっすぐな瞳でそれを見ながら、世界を駆け回りました。
そして、今でも駆け回っています。
 
はて、中学生くらいからでしょうか。成長していくにつれてアニメのキャラの行動に疑念を抱き始めたのは。
正義?おれはそういうのキライだね。勇気?それだけで乗り切れないものもあるよ。友情?恋人できたらダメになるんじゃね。
夢?
かなわぬ夢もあるんじゃないかニャー。
そこでさらりとアニメ離れをしていく友人たちはたくさんいましたが、アニメのすばらしさに出会ってしまったんだな。具体的に言うと宮崎駿作品と「パトレイバー」と「ナディア」。アニメでしか表現できないリアリズムに心酔し、これこそが世界の表現だ!とか思いました。
俗に言う中二病です。
気がつけば、小説とマンガとアニメと映画と音楽に囲まれた典型的な隠れオタクで大人にずんずんなりました。気がつけば集めることが目的になって、正義とか勇気とかはどこかにおいてきてしまいましたとさ。めでたしめでたし。
 
めでたくない。
あ、友達の話ですよ。友達の。まじで。ほんと。
 

●大人から見た、子供アニメ●

ここでちょっと、以前のプリキュアの記事に興味深いコメントをつけて下さった方がいたので紹介してみます。

gozenniji
プリキュアシリーズって主人公達は基本的に前向きで明るいのですが、視聴している我々からするとその前向きさ加減が妙に切なくて胸にグッとくるんですね。陳腐な表現ばかりで申し訳ありませんが、ココロが洗われるとでも言うのでしょうか。キラキラと輝く眩しくて、けれども儚いものを見たときのあの感じ。
今回のお話も登場人物たちは最後は皆笑顔でお話し的にはハッピーエンドなのに、観ているこちらは唇を噛み締めて涙をこらえてたりしてねぇ(笑)。

これものすごい分かるんですよ。
子供の時にあこがれたヒーローやヒロインたちは、非常にまっすぐな瞳をしています。そこに感動を求めて大人になっても「子供向けアニメ」を見るわけですが、オタクであるがゆえに知識が深まっていて、斜め目線で「あ、ちょっと作画崩れたぜ」とか言っている自分を見つけたときのショックときたら!
だけどそんな自分たちのことはかまわず、ヒーローやヒロインはただ、自分と仲間を信じてハッピーエンドのために戦うじゃあないですか。
もうなんというか、涙ぼろぼろでますヨ。
なんだかスレちゃったなあという自分との乖離を嘆く涙なのか、昔の自分が憧れていた光景への憧憬のまなざしなのか。それは人それぞれ。
「正義」という言葉に対して色々難しいことを考えるようになり、サンタを信じない大人のようになったのはいつからだったでしょうか。それでも戦うアニメキャラが滑稽に見えるのか、はたまた過去の自分を連れてくるのか。それもまた人それぞれ。
 

●「プリキュア5」と大人オタクの憂鬱●

Oh!Yes!プリキュア5(きみにとどけてれぱしー)
ものすごく痛烈で、切ない文章なので必見。
 
「YES!プリキュア5」はひたすらに「夢を持ってますか?」と子供たちに問いかけるアニメです。今までのプリキュアシリーズも色々なテーマがあったのですが、今回は人数とともにテーマの掘り下げも深まり、大人視点から見ても面白いシーンがたくさんあるアニメになりつつあります。

今までのプリキュアは友情がテーマだったので、
小さなお友達も大きなお友達も『友情は大事だね!』と口をそろえれば幸せになれたんだけど、
今回は夢がテーマなので、小さなお友達の『夢は大事だね!』の問いかけに対し大きなお友達は口をつぐむしかない。

「夢」という言葉はなかなかに複雑怪奇。大人の考える「夢」と子供の考える「夢」って全然違うんですヨねえ。そのギャップを生むのは経験を積んできたからゆえに見えてきた現実だったり、夢をかなえる具体的な部分での挫折だったり。

幼稚園児「パイロットになりたい!」 先生「いい夢だね!」
大学生「パイロットになりたい!」 先生「今頃何言っているの。」

ああ、時間の流れは無情なり。でも時間の余裕としては、どうしようもない部分は、ありますね。そういう意味で、このエントリにはものすごく切ない共感を覚えます。
だけど、そこまで絶望しなくてもいいんじゃないかな?と思うんですよ。そして、「プリキュア5」は大人に「もう遅いよ」という現実を突きつけるアニメというわけでも、ないんじゃないかな、と。あくまでも自分が感じたことですけどネ。
 

●「おジャ魔女どれみ」が持ってきたモノ。●

無印プリキュアナージャを飛び越えますが、それ以前にやっていた「おジャ魔女どれみ」のことを思い出しました。
まあ、大の大人がどれみを欠かさず全部録画していたのかヨとかそういうのはおいといて。
しっかりと子供向けに作られている、明らかな子供向けアニメでしたが、2話に1話は大人が子供を見る視線で描かれていたことに衝撃を受けたものです。今のプリキュア5ののぞみのオバカで具体的な進路が見えない様子は、「どれみにそっくりだ」と感じた人も多いと思います。まあ、比較するものではないんですけどね。心の中でシンクロしちゃうんです。オタだから。
子供たちが夢見がちに、わいわいガヤガヤやるのが「どれみ」の面白いところではあるんですが、同時に「子供たちのリアルな成長を見守る大人の側」として、また「かつて子供だった自分たちの心」として、ものすごい胸にくるんです。
ああそうさ、毎週どれみで泣いたさ!もう懐かしいやら切ないやらで。また意図的なんだもんスタッフがー!
 
これ知っている人いたらすんげぇうれしいのですが、「どっか〜ん」で男の子たちが秘密基地つくって人力飛行機作る回があるんですよ。
少年少女たちもすごい夢中になって、ワクワクしながらやるんです。でもちょっとだけ思春期なので、次第に「いや、むりだろ」みたいなノリになっていきます。しかし、一人の少年が絶対それをあきらめないんです。そして次第にまたみんなの「夢」が高まります。
しまいには担任の先生に見つかって止められるのですが、それを振り切って彼は人力飛行機「STAY GOLD」をこぎます。
飛ばないんですよ。
ほんのちょっとだけしか。
で、すぐ壊れちゃうんです。
でもその「ほんのちょっと」がすごいリアルで、自分は号泣でした。*1もうね、輝いてるんですよそれが。
子供に「夢は大事だよ」「かなわない夢もあるよ」「だけど、やることに意味はあるよ」という姿勢が「どれみ」にはありました。それは子供だけではなく、大人キャラ達の間にも。
どれみたちも、卒業と同時に魔女をやめます。成長による決別もきちんと描かれているんです。
 

●「プリキュア5」のオタカさん。●

はて、プリキュア5も同じような段階でいくかどうかは分かりませんが「夢は大事だよ」からほんの少しだけ、最近進んだところにいる気がします。

敵幹部の滑稽さが、リアルな大人の現実を毎週突きつけるので、ものっそいヘコみます。だから最初は、このアニメは夢を持っていないとダメっていうことなのですか?とかうがって見ていました。
しかし、最近非常にいいキャラがいるんですよ。

オタカさん。
食堂のおばちゃんなのですが、よく食うキャラばっかりのアニメなので登場回数がかなり多い準レギュラーです。
このおばちゃん、特技はというと「そろばん5級」。うん、自慢できない。そんなことを子供達に言うおばちゃんなので「天然」かと思いきや、今のところもっとも5人のことをよく見ている大人なんですよね。もしかしたら「そろばん5級」は彼女が子供達の本心を引き出す会話の糸口なのかもしれません。
 
オタカさんは、プリキュアにはなれません。いや、なっても困るんだけど。
そして、今のプリキュアな子たちが夢見るような職種についているわけでもありません。パートみたいなもんです。
だけど、彼女は日々普通に仕事をして、普通に生きているんですよ。しかも大人の目線で。これが「夢に敗れた人の負け犬の姿」だとは思いません。
大人オタクな自分達は「プリキュア」になれるほど純粋じゃないし、まっすぐじゃないけれど。でもプリキュアじゃないから敵幹部と同じなわけではないです。「オタカさん」にはなれるんですよ。「どれみ」でいえば「関先生」や、…いや、「オヤジーデ」くらいには。
「夢」の形はもちろん小中学生とは一緒にはならないけれども。視野は広がっているから逆に、具体的に持てる夢は増えたといってもいいですもの。
時間?死ぬまであるよ。
 

●オタクの心は「置いていかれた」ものじゃない。●

最初の話に戻りますが、正義や勇気、大好きです。「勇気」を笑う人は殴ってやる!とかいいながらへっぽこオタなので心の中でだけ殴ったつもりになります。
「ヒーローやヒロインはハッピーエンドを向かえなければいけない」と言うのは自分の中の持論。もちろん大人オタなので、そうではない作品もたっぷり楽しんでいますが、「ヒーロー」ならまっすぐ幸せに向かう作品は大人になっても大切な宝物です。
それを「まだ子供」と見る人もいっぱいいるだろうなー、とは思いますが、笑わば笑え、自分は愚直を愛するオタでいたい、なんてことを言いながらブルーハーツを唄います。プリキュアになれなくても、ほのかやなぎさや咲や舞やのぞみ達と同じ気持ちでいて、その瞬間に感動することは大人にとってもウソじゃないと思うんです。むしろあざ笑うのではなく、感動できる心こそが「夢」の形の一つじゃないかなあとか。日々のストレスに耐えながらそういう「夢」持てる生活をしているなんてすごいじゃないですか。熱いな今日の自分。
案外まだまだ、楽しいことがいっぱい広がっているから、オタクは面白いんだよネ。サンタがいないというならサンタになれ。そんなオタクでいいじゃない。 
 
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みんなは〜の方、今見てみるとなんだか妙に味わい深いですねこれ。

*1:ちなみに、このキャラ宮前空くん、声が能登麻美子さんだそうです