たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「サナギさん」と「フユちゃん」の、手探りな距離感を楽しんでみる。

サナギさん4巻、震えるように読んでいます。
どうしよう、なんでこんなに好きな本ができちゃったんだろう、そんな気持ちです。どこから書けばいいのか分からないくらい色々イメージが錯綜しすぎてまとめられないので、ちょっとずつ思ったことを書いていこうと思います。
「またサナギさんかよ!」とか言われるかもしれませんが、どうにも止められないのでご容赦ください。
 

●「サナギさん」という作品のベースと、味付け●

「がんばれ酢めし疑獄!」などを見ている人なら、作者施川ユウキ先生の独特すぎる言語感覚はご存知の通りだと思います。
サナギさん」という作品も、基本的にはその「普通は考えないような言葉の面白さ」がベースになっています。それは1巻から、この4巻まで全て健在。個人的にはどんどんキレ味とテンポがよくなってきていると思います。
このへんはまた別の機会に書きたいところ。正直この特殊な言葉のセンスを、毎週続けていることが、自分にはビックリすぎてなりません。よく続くものだなあと。
しかし、ただの言葉遊びだけではもちろんなく、そこにさらに「見過ごしがちなすぐ側にあるものを色々考えてみよう」という姿勢が練りこまれています。主人公サナギさんの視点もかなりそれが際立っているのですが、最近は「ハルナさん」という新キャラが出て、その存在への哲学っぷりと、日常の柔らかさっぷりの対比は必見です。同じことは「もずく、ウォーキング!」でもピックアップされているテーマのようです。かなり深いです。
 
これだけでも「サナギさん」の魅力はパンパンなほどにあるのですが、3巻4巻にかけて急激に大きくなってきた「キャラクター達の人間関係の描き方」が、とてもほどよい味付けになっていると思うのです。それは決して劇的な変化は遂げないし、すごい恋愛はしないし、日々悩んだりするわけではないんだけれども、じわーっと時間の中で距離を縮めているのが本当に魅力的なのです。
ちょっと1例をあげて、「サナギさん」と「フユちゃん」の関係を個人的に妄想してみます。
 

●ケンカのふり。●

3巻で、エイプリルフールに友人のフユちゃんをだましてやろう、というネタがありました。
仲がいい二人だからこそできる遊びです。
しかしこの時、二人に思いもよらぬ事態が発生してしまいました。

これはもちろん、フユちゃんも冗談なのですが、それを意外なことにサナギさんは受け止めきれなかったのです。
これは結構ショックでした。というのも、それまで割りとフユちゃんは残虐なことを言ってもサナギさんは受け止めるだけの器があったんですよね。フユちゃんは確かに毒舌ですが、サナギさん以外にはほとんどそういうジョークを話しません。それは二人の関係が「このくらいなら大丈夫」とよりかかるフユちゃんと、それを受け止めて楽しみ「かわいいなあ」と感じているサナギさんの関係があったから。
しかし、フユちゃんがちょっとやりすぎてしまい、その関係のラインが見えた瞬間でした。
サナギさんは泣くシーンは結構多い(マナミさんと一緒に泣いたり)のですが、本気で涙を流すのは珍しいです。だから、ある意味このシーンは二人の関係が「今はこういうライン」というのを明示した、貴重なシーンでした。
 
しかし、それが4巻になって変わってくるのです。

唐突に「ケンカして仲直りする」というフユちゃんの提案で「ケンカなんかしたくないよ」というサナギさん
3巻の本気泣きがあったので、その加減はお互い分かっているのですが、ちょっとだけそのラインにまた触れてみようとしているおっかなびっくり感がすごい絶妙なコマです。これ、3巻の時点ではそのさじ加減がわからなくてお互い傷ついてしまうわけですが、今回は二人が「このくらいかな?これくらいはだいじょぶかな?」というのを見ながら信頼関係を確認しあってるように見えるんですヨ。
そして、サナギさんの「ちょっと楽しい!」発言。
3巻でジワジワと距離を縮めていく感覚があるのではと感じていた自分には、すごく解放的で安心感が生まれた瞬間でした。そう、「ずっと友達だよね」という信頼のラインを、彼女達はしっかりと、何気ないことの中で見つけたのです。
 

サナギさんって、百合?●

施川先生が3巻のあたりから仕込んだネタなのかは自分にはわからないのですが、4巻でのサナギさんとフユちゃんの関係はかなり変化が見られます。会話のリズム、オチ、お互いへの感情表現など、じわじわと成長している後が見られるように感じてなりません。
ううむ、このへんうまくまとめきれないのでまた別の機会に書きます。書かせてください。
サナギさん」は百合、というとおおげさに感じる方のほうが多いと思いますが、自分は「少女達の情の交わりあい」という視点で作品を楽しむようにしているので、そのラインでいえば百合だなあと思っています。ある面だけで言えば、かなり二人がお互いの関係をわかって動いているのではないかと思うのです。
言葉遊びだけでも楽しいし、キャラクターの関係を見ても楽しい「サナギさん」。本当に好きだ。
 
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施川ユウキのみすぼらしい部屋(仮)
第19回 不思議ちゃんと天然さんの相性の良さったら『サナギさん』(きなこ餅コミック)