たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「ゆるめいつ」に見る、ゆるやかさという名前のポジティブ。

●暇をしていると生きた心地がしない。●

本当に今年の夏も暑いです。暑いと色々イライラしたりやる気なくなったりして、とっても気持ちがネガティブになります。
くそう!くそう!
ほんと、「やる気の起きない日」は自分は相当なまでにネガティブになります。これ、人によってすごい個人差ありそうなので、あくまでも自分の場合です。
自分が、日々「何か足跡を残しておかないと1日が無駄になったようで不安になる」人間だから、なんです。
何か書いておかないと気がすまない、何か仕事をやった感覚を持ってないと気がすまない、何か作っておかないと気がすまない。
そんな人間にとって日記っつうのはなんとも便利なアイテムなのですが、同時に休んだ日や、体調不良で一日何もできなかった日は猛烈に鬱になります。ああ、今日の自分はなんだったんだ、今日一日の存在価値がなかったんじゃないか?
そんなだから、温泉とかに行っても「何かしていないと不安」。
私は何を生き急いでいるのでしょうか。と分かっちゃいるけど、何もしていない時間が心配でならないのです。こういうのって…他の人はどう感じているのでしょうか。
 

●「ゆるい」ってなんだろう?●

ちょっとここで、saxyun先生のゆるめいつというマンガを見て、「ゆるい」ということについてぼんやりつづってみます。
「ゆるい生活」という言葉、字義的な意味だけでとらえれば、二通りの解釈があると思います。

1、脱力感あふれてのんびりした心の穏やかさ。
2、だらしなくて自堕落な心の弱さ。

自分はおそらく後者だと思い込んでいるので、後悔ばっかりしてしまうんだと思います。
ゆるめいつ」はそういう点でいうと、きわめて前者寄りで、ちょっと後者という感じです。

このマンガ、まずとにかく寝ているシーンがめちゃくちゃ多いです。といっても引きこもっているわけでもなんでもなくて、見てのとおり貧乏極まっているのでやることがない、というのが正しいと思います。夏は暑いから寝る。冬は寒いから寝る。ヒマになったけどすることがないから寝る。
キャラの一人にいたっては、あんまり部屋にいるのでコンビニに買い物にいっただけで筋肉痛になるという有様。いくらなんでも動かなさすぎです。そんだけ動かないキャラ達揃いなので、当然作品のテンポも死ぬほどスローリーになります。
なるほど、これは確かにたいていの人が読んだら「ゆるい」と思わされるパワーがあります。ゆるいのにパワーってのもおかしな話ですが。
というわけで、ゆるい生活の3つ目にこんな項目を加えてもいいかな、と思いました。

3、時間や生活リズムの感覚のズレ。

あずまんが大王」で言えば、大阪の会話のテンポ、という印象です。
 

●ゆるい→だらしない、とは限らないけれど。●

大阪はまあそれでもしっかり(?)としているのですが、現実的にあれだけテンポがずれると作業が追いつかないでしょう。それでもそこまで自堕落な生活を送っているようには見えないですし、リアルでもこういうテンポはずれていてもきっちりこなして生活している人っていますよね。自分なりの意思をもっていないとできないことなので、見ていて尊敬すらしてしまいます。
しかし、「のだめカンタービレ」ののだめレベルになるとこれが「だらしない」方面に流れていきます。彼女も相当ハイテンションな人間ではありますが、初期の一人の生活のゆるさっぷりと来たら。あの汚い部屋を見てトラウマ風にギョっとしたり「お前は俺か」と思ったりした人も多いのではないでしょうか。インパクト強すぎだよね彼女の部屋。
さて、「ゆるめいつ」の部屋はというと、主人公の「相田ゆるめ(18)」にいたっては、何もありません。ガスも止められ水も止められ。汚すものすらない有様です。
しかし、同じアパートのサエさんの部屋がすさまじい。

汚い!けどあんまり笑えない!(自分もちょっとこのケがあるから)
ゆるい生活を送り続けると、やっぱりのだめやサエさんのように、掃除ができなくなるのもまたしかり。
決してこういう生活を全肯定するってほどでもない、ほどよさ加減がミソ。お金はなくなるし、部屋は散らかるし。そのへんのだらしなさは「お前だらしないよ」という現実から目を完全に背けているわけではないです。
だけど、そこでピリピリするかそうでもないかが、「ゆるさ」そのものを楽しむ分かれ道。
 

●「ゆるい」日々のポジティブ●

この作品がかなり多くの人に愛されているのは、グダグダなだけではないしっかりとした柱があるからだと思います。
たとえば、こんなとても象徴的なコマがあります。

「まあいいか」
ゆるい日々を送っている彼ら、お金の面では悩むけれども、それ以外のことではほとんど悩みません。むしろ、ゆるくていいじゃない、明日からやればいいじゃない、というのをとりあえずキャラクターが、前向きに受け入れています。「今日一日何もできない自分はダメだ!」とは思わないんですよね。
浪人生だらけ、という設定も面白いです。浪人生時代は独特のグダグダさとピリピリさが共存するものですが、彼らの間にはピリピリ感は一切ありません。浪人して部屋でゴロゴロして何もせず一日終わる、その日その瞬間がなんともやさしい視点で描かれています。ネガティブな人間はほとんどいません。
「ゆるい」ということがよいか悪いか、と言うのは現実問題的には個々の価値基準が最終的に決めるものですが、マンガの中で読む場合、「ゆるくてもまあいいんじゃないの?お金はないけど」というちょっとしたパラダイスを感じてもいいんじゃないの?と問いかけてきます。ひいては、多くの人に問いかけてくるのです。人間社会に、なんておおそれたことは言いません。自分で自分にストレスかけちゃう人に対してです。
ただゆるくてグダグダだから面白いわけではなくて、ゆるさの持つポジティブを作者が優しく見守る覚悟を持っているからこそ、この作品は魅力的なんじゃないかと思うのです。
ちなみに、内容は確かにゆるいんですが、「ゆるさ」を使ったギャグの切れ味はかなりよいと思います。ネガティブな笑いや勢いだけで持っていかず、まあいいんじゃないと流すゆったりした落とし方がとてもウマイです。
 
もし仮に、自分と同じような悩みを抱えている人がいたとしたら、結構この本は励ましになるんじゃないかと思います。「それでいいんだよ、あとはちょっとがんばれ」と。なんだか「ブッタとシッタカブッタ」を達観しきってすごしたような話だなあと思いました。基本的に、自己肯定。
自堕落とゆるい生活は紙一重。でも「どうせ私は!」というネガティブさを一切捨てて、ポジティブに「今日はまあいいや」と言うゆるさをもてる人間になりたいです。自分に言い聞かせてポジティブにゆるくならなきゃ!…と言ってる時点で余りポジティブじゃない件。前向きにゆるいのって難しい。
あ、でも掃除はしないとだめだよね。うん。
 
ゆるめいつ(1) (バンブー・コミックス) ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある
もう、左にいるくみさんが出てくるだけで自分はツボなのです。くみさんの存在自体がすこぶる前向きで面白い。
シッタカブッタは人生励ましマンガなんですが、これでいて結構クるネタが多いので、個人的におすすめ。人生の視点をかえる手助けになる一冊、とかくと重苦しいので、「別のマンガを読むときの視点を広げるきっかけになる一冊」ってことでおすすめ。