たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

男が感じるBL「同級生」のほんのりエロティシズム

友人と「百合で女性は性的にときめくか?」「男性はBLでたつのか?」という話になりました。
どっちも、マンガとしてもどうかなー?と思いながら心当たりがありましたよ奥さん。
中村明日美子先生の「同級生」
いやいや、まじで。これ萌えましたよ…なんて言い方は卑怯ですね。
これたちましたよ。
下品な話になりそうですが、そのくらい男性の感覚にも訴えてくるこのマンガ。男性視点で「ここがすげーんだぜ」と書かせていただきますのであしからず。
 

●ともにかわす音楽●

今から暴言をはきます。
音楽はセックスに似ています。
音を交わしながら心も混じるあの感覚。ぴったり合ったときの高揚感。
このマンガの入り口は、「合唱」という男子だとスルーしてしまいがちなイベントからはじまります。
ちょっとちゃらちゃらしているバンドマンの草壁、優秀でまじめでクールに見える佐条。極めてアンバランスな組み合わせなんですが、ふとしたことで一緒に歌の練習をしはじめます。
もうね、この「一緒に歌を歌う」ってのがとてもドキドキするわけですよ。だって考えても見てください。声と声が重なるんだよ。重ねようと必死に相手を理解しながら、重ねるんだよ。

確かに男同士だけれども、このシーンで佐条ったら赤面しちゃうんだもの、こっちまでつられて赤面するっつうの。
 
自分は男子としてはたからこの状況を見ているわけですが、繊細インテリメガネの佐条にこの瞬間シンクロしました。
最初はね、ちゃらちゃらした草壁側の視線があるので、「こいつなんだかわからないなあ」なんていう視線で佐条を見ているわけですが、気がつけば佐条になって草壁に対して赤面しちゃうこの流れの妙。距離感がわからずおどおどするのがまたたまらんのです。
まず最初の回で「合唱」を持ってきたのはいい意味で反則。だってさ、音楽の快感に男女関係ないもの。
 

●一人で抱え込んで。●

中村先生は、男子が何かを抱え込んで悶々としている描写がとにかくうまい。これ、ある意味女性的な部分なのかもしれませんが、距離感が計れず分からなくなって、何も言えない状態がとてもすんなり納得できるように描かれています。
加えてそれに対して、片方がガツン!と言ってしまうそんな男の子のざっくばらんな行動を描くのもうまい。

男性の中の女性的側面の描写なのかもしれませんが、このすれ違い感と強烈に相手の存在を求めるところにぐっとくるわけですよ。
 
百合もBLもそうですが、相手のことを求めて求めて、でも時々すれ違うそのじれったさや心の苦しさがたまらなくドキドキするのですが、それを自然に感じさせるからこの作品は、心に入り込んできます。
そう、このあとのシーンがね。

ここまでうまくかみあわなかった距離感がかみ合った瞬間。
心が触れ合ったんだから身体だって触れ合います。このシーンで肩甲骨に触れる描写があるのですが、そこで思わず、お恥ずかしながらピクリと反応しちゃいましたね。たちましたね。
ガツガツとそれ以上いかない控えめなところ、照れて積極的に踏み込まない距離感、なのに「お前じゃないといけない」という心の動き。
それがそっと触れる指に重なって、もうたまらんよ。
最初は「不覚!」とか思いましたが、読みすすめていたらどうでもよくなりました。ああ、BLすげー。
 

●男性の距離感●

男がBLを読むときの最大の難点はもしかしたら「肌に触れること」なのではないか、という話を友人としていました。
百合ってその点そんなでもないのですよ。女性同士で手もつなぎますし。だけど男同士で手をつないだらちょっとまいっちんぐです。もちろん身体に触れるなんてこともしません。
まあ個人差はありますが、BLマンガを読むときにその感覚は意外とネックになりかねません。
しかし、この「同級生」という作品、見事なまでに近づき離れ、距離を測る二人の関係を描いています。触れますが、触れすぎません。離れますが、離れすぎません。
そして、時に迷い時に突っ走りながらも、ものすごい勢いで赤面するのです。
 

触れた瞬間のえもいわれぬ「いけないことしちゃった!」感は、男女誰もが感じる感覚。
だけれども「お、お前だけなんだからな」というオンリーワン感。
それぞれが心寄せる場所があることにほっとしながらも、相手を考えつつちょっとでも近づきたい、近づけない不器用さがたまらなく心を揺さぶるんです。
だから、ちょっとだけ触れたその感覚に、不覚ながらも感じてしまいました。たっちゃいました。
悪いか!正直からだが反応したときこっちだってあせったんだよ!…ってのがキャラクター達も同じように感じているもんだから、もうね。
いいBLは、男も感じる。そういうことなのです。多分。
 
同級生 (EDGE COMIX) 同級生
ちなみにエロシーンはないです。中村先生の絵柄は耽美っぽいので、男性だと苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、いやいや、中身はすごいキュートです。
また、心理描写も極めて巧み。ちょっと表現は変かもしれませんが、百合好き男子ならかなりさっくり気に入るのではないかと思いますですよ。二人の白と黒のコントラストや不器用な距離感あたりも受け入れやすいかも。
ところでCD出るのですね。うう、最初の合唱のシーン、すごい聞いてみたいかも。