たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

日本女性の裸足の美しさを「木造迷宮」に見る!

和服には数限りない魅力が秘められています。自然と美しくなるからだのライン、慎ましやかな空気、普段見えない部分が垣間見えるドキドキ感。
だが、その中でも重要なものがあります。
それは裸足です。
 
いいかい、まずゲタをはくってことは足袋を履くか裸足じゃないですか。
つまり、大きな布に囲まれた女性の滑らかなシルエットの中で、燦然と輝くのですよ、足が。裸足が。
 
そんなわけで裸足大好きたまごまご、ここにアサミ・マート先生の「木造迷宮から裸足の美学を学び取ろうと思います。
木造迷宮」は、とあるおっさん作家の元に女中さんが来てかいがいしく世話をしてくれるという夢のようなお話。コミックリュウらしく昭和の匂い漂いながらも年代不詳な日本を描く、小さくて豊かな木造家屋の物語です。
 

●働く裸足の美学●

まず、この図を引用させていただきます。

芸術のような一コマです。
このようなつつましやかな転び方になるのは、和服がタイトだからであります。このなめらかなヒップライン、日本の四季の空気をすら感じさせる柔らかさ。
そしてここで描かれる裸足の美しさにさらにスポットを当ててみます。

そう、この裸足、歩く人の裸足をしているのですよ!
ただ細いのではない。どちらかというと肉付きがいいです。
特に小指からかかとにかけてのラインのには、よく歩く足なのでしっかり肉が付いているのです。
 
ヒロインのヤイさんは、かいがいしく働く、ある意味「日本人美学」的なものを持った女性です。ほんのりとここに美しさを感じる人は、そこに「働く美学」を見て取っているのかもしれません。
彼女は裸足でそれを語ります。裸足一つで、彼女の生き方がわかる。そんな美しい足なのです。
 

●裸足の中の力学●

次にこの図を引用いたします。

階段から落ちるヤイさん。これも着物がタイトであるがゆえに非常に体のラインが整っています。
また、この一生懸命我慢している顔がたまらなくかわいらしいですね。その涙なめたいですね。
そして、この裸足は自分のような裸足レベルそんなに高くない人間でもピクンとくるテクニックで描かれているのですよ。

この指ですよ指!
上の図も一緒に見て比べてみましょう。
この状態、ヤイさんは必死に音を立てないようにしているわけです。
だから体全体もこわばっていますが、特にこの力の入った指の曲がり方。
 
人間、力を入れるとき人によっては足の先から入れます。
そんな体全体の力の流れを感じさせる裸足。
力の流れは同時に非常にセクシャルな美しさをも描き出します。力の動きがまた双方外側に向かっているのがいいのですよ。こわばってひらきかける足が、心をぐっとひきつけます。
また、これは自分だけではないと思うのですが、足の指をまげた時にできる小さな丘の部分ってよくないですか?指でなでたくなりますよね。
 

●裸足で語る世界観●

この「木造迷宮」という作品、非常に昭和日本のような温かみと落ち着いた空気を持った、疲れた時に読みたくなる名作ですが、それを裸足で表現するこの見事さ。
そう、しっかりとした肉付きの裸足は時として、懐かしさの象徴たりえるのですよ!

見てください。裸足だけでこのコマはもう完成しています。裸足だけで「ここにいていいんだ」というやさしさをかもしだすのです。レトロノスタルジックの記号でありながら、今にも伝わりそうな体温のびょ社の妙よ。

また、「木造」と銘打つくらいです。日本家屋が非常に繊細に描かれるこの作品の中を歩き回るのは、繊細でかつ働き者な裸足でなければいけません。
木の温かみは、裸足で完成するのです。
 
そんな作品ですから、裸足とふくふくのふくらはぎに顔を挟まれるシーンが至福であるのも当然です。これはゼヒ読んで確かめてみてください。裸足って本当にいいものだな!と痛感いたしますのことよ。


とにかく女中さんのステキさが際立つ本作ですが、絵全体から香り立つ日本らしさ、木の匂い、畳の香りがきっちり描きこまれた作品でもあります。
直線で出来ていない家の描写、とくと味わおう。
 
〜関連リンク〜
女中さんはいいね、日本文化の極みだよ、『木造迷宮』 (DAIさん帝国)
アサミ・マート『木造迷宮』(枳棘庵漫画文庫)