たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

日本のメイドは魂(と、ちんちん)を持っているんだ!「メイドいんジャパン」

ひどいエントリの題名ですが、エロマンガじゃないですよ。
いや、限りなくエロマンガのノリに近いのですが、あえて言います。
これは、魂の叫びと熱血でできたマンガであると。
 

●狂乱のメイド至上主義天国●

おりもとみまな先生の「メイドいんジャパン」。

まあこれだけみたら、かなりよい感じでメイドさんのお話に見えますが、あわてないほうがよいでしょう。
 
女装少年が男であることを隠してメイドになり、女の子の元に派遣される、というあらすじだけでも相当に何か間違っている感満載なこの作品。
加えて、話の端々で明らかにおかしなものが組み込まれている(例・介護実習のための、おむつを取り替えられる役に当たる、とか)ため、やっぱり普通に読んでも明らかに何か間違っている感じでパンパンに膨れ上がっています。
そして話が進むほどにやたらと「ちんちん」という単語が連発。
下ネタ好きの人なら大喜び、そうでない人にはすすめられない暴走超特急と化していきます。 
 
だがしかし。
なぜこの作品はそれほどまでに「ちんちん」にこだわるのか!?
そこに、この作品において、明らかに方向は飛びぬけてしまっているにもかかわらず、とんでもない熱量と力強さが眠っているのです。予想以上に手に汗を握って読めちゃうよ。
 

●君にはちんちんがあるじゃないか。●

まずこのコマをみてください。

もう言ってること自体めちゃくちゃです。ただここに整合性を求めることに意味はありません。
むちゃな会話ではあるんですが、このテンポが今後の情熱のキーワードになります。
 
男とか女とかという性差がこんがらかっているこの作品。
しかしこの主人公の女装少年成美は「ちんちん」をかぎとして成長していくことになります。
そもそも女性であるはずのメイドになるべくして生まれたから男ならなんとかしなさい、という言葉自体聞いていて困惑するのですが、この最初の時点でまずは価値観のハードルを振り切ると、一気に楽しくなります。
 

とことんまで男であるがゆえに、ばれないように追い詰められ続けるのですが、なぜか男子トイレに入ってしまう彼。そこがミソです。しかも大じゃないほうでしてしまう彼と、そこに並ぶもう一人の謎のメイド。
彼の意識の中では「男として」という確固とした魂が実は眠っています。
それを、このもう一人のメイドや、実習で行った家の女の子に奮い立たされていきます。
その時も重要な役割を果たすのが、彼のちんちん。
 

●ずっと一緒だよ。●

そこまで「女装」であることを隠して苦労を重ねるのなら、そもそも「メイドをやめる」か「男であることを捨てる」かどちらかを選択すればいいわけです。
しかしメイドをやめるならたまを握りつぶす、と母親に言われます。とことんまで(おかしな理由で)追い詰められて、自分で去勢しようとすらします。
しかし、彼はそこで、彼自身の魂を思い出すのです。

死ぬまで一緒だよ…(ちんちん的な意味で)
自分の一番好きなシーンです。彼は見つけたんです。
本当は笑うべきシーンなんですが、このマンガを読んでその狂った世界観に慣れてくると、このシーンの熱さがじわじわとわかってくるはず。
そう、「ちんちん」というとどうにもアホらしい響きになってしまうし、実際ギャグではあるんですが、彼にとってのちんちんは、「人間として成長するシンボル」とも置き換えられるのです。
 
彼がここでちんちんを捨てるなら、楽にはなるでしょう(なるか?)。
彼が逃亡するならば、この狂乱に立ち向かわずに済むでしょう。
しかし、彼は選ぶのです。
ちんちん(自分の成長)をしっかり見つめながら、メイド(自我を隠し通すこと、そして身を尽くすこと)であることを。
こうして改めて文章で書いていても、明らかに何かおかしいのですが、読んでいると彼の熱意がどんどん高まっていくのが伝わってくるから面白い。これはある種新しい表現のような気がします。
 

●突き進め!●

先ほどもでてきた「もう一人のメイド」がまた特殊です。ネタバレになるので書かないですが、これまた狂った軸でありながら、展開としては激しく熱いです。
ちんちんをどう隠そうか、どこで妥協しようか、どう逃げればいいのかをうじうじと考える成美くん(まあそりゃ考えるの当たり前ですが)に対して、要所要所で現れては進む道を示します。
行き惑った時に、背中をポンと押してくれる人が少年には必要じゃないか。あとは進むのは自分の力だが。
だがそれでも迷うんです。どうするべきなんだろう、何をするべきなんだろう。
メイドは言います。

最高にかっこいいんですよこれが。
 
また、ご主人のまとめちゃんが、これまたかわいい上にかっこいい。
成美は割りと困ると立ち止まってしまうタイプなんですが、まとめちゃんはがんがん突き進み、大声で訴えることのできる少女です。

心にちょっとした傷を負ってはいるんです。つか、あの展開で傷負わない方が無理です。
しかし情に厚く、時には主人としてメイドの荷を負う姿は、たくましく勇ましく、そして美しい。ただのツンデレだとあなどるなかれ。
そしてそれこそが、彼の最大の成長をはぐくむ要因の一つになっていきます。このへん鉄壁の少年漫画的な熱意があると思います。
 
それぞれのパーツ、コマごとに見ると確かに、むちゃくちゃでカオスです。
しかしトータルで見るとこの作品、「ちんちん」という言葉でカモフラージュしながら、明確に少年マンガの持つ葛藤、戦い、成長、苦難が描きこまれています。
最初の方で一度全部価値観とか捨ててしまってから没入していくと、成美が前へ前へと進む様が、ご主人様のまとめのやさしさと強さが、くっきりと浮かび上がっていきます。
 
ちなみにこの作品で「ちんちんがあるものは強くあれ」というノリが頻発しますが、男女差別ではないです。むしろこの世界は強い女性の方が多いです。
一度すべてよんだあとに「ちんちん」を「自分の進む道」と置き換えて読むとわかりやすくなると思います。

まだ物語は始まったばかり。
成美は決して、ちんちんを捨てないでしょう。
そして彼は、ちんちん(道)を持つ者として、たくさんの悩みと悲しみと苦しみを抱えながら、前へ前へと歯を食いしばって進んでいくんだ。
 


なんとも、どう薦めていいのか本当に迷うほどに、とんでもない道をトばしている作品なんですが、ただ「変態マンガ」で終わらせるにはあまりにももったいない。変態マンガであることを生かして、恐るべき熱量を秘めた核爆弾です。
最近号の六十四ちゃんとのエピソードもまたいいんだなあ。前半の変態テンションが、後半どんどん力強くなって、彼の成長が一歩進んでいくつくりに感服です。
とはいえ、基本下ネタ多めなので、そういうのが嫌いな人には薦められません。平気な人なら、意外なほどに燃えるのでオススメ。
ちんちんのこと考えながら、人はどう生きるのかを考えてみるのも、マンガならではの楽しみ方です。もっとぼくに魂の叫び(とちんちん)を聞かせてください!
 

こちらは同じ作者のエロマンガ。しかし魂の部分では変わってないので、「ロリコンってのはなあ!」という叫びを聞きながら楽しめます。おりもと節は本当に、アホなゆえに熱くて、燃えてくる。
沖縄の話が好きです。
 
〜関連リンク〜

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