たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

その時、歌の中でりっちゃんは「淋しいのはいやだ」と囁いた。〜「けいおん!」キャラソンで描かれる律の心理〜

律・むぎ・梓のCD出ました。うーん、いい出来。それぞれのキャラらしさを生かしながら、J-POPらしい基盤で作られたいい曲達だと思います。
まあ、J-POPらしさってなによ?といわれると自分も分からないんですが。でも「アニソンっぽくなさ」ってのはありますよね。
 
さて、その中でも律です。律ソングがすごいんです。
メイン曲の「Girly Storm 疾走 Stick」も確かに明るく元気なりっちゃんらしくて素晴らしいんですが、問題は二曲目です。
題名は「目指せハッピー100%↑↑↑」
ちょっと躁状態すぎるんじゃないの!?ってくらいの無理矢理なテンションの題名ですが、いやはや全くもって。
明るい題名の裏に彼女の本当の姿がにじむ、聞いた後に悶え苦しまされるような歌詞になっているじゃないですか。
今までりっちゃんの気持ちを見て一喜一憂していたりっちゃん隊員にとっては、必聴とも言える歌詞です。
 

●みんな笑顔でいてほしい!●

曲調はひたすら明るいです。からっと、底抜けに。

毎日晴れる 私といたら晴れる
そんな人でいたい 目指すのはハッピー
譲れないポリシー100%
(「目指せハッピー100%↑↑↑」より)


律は人によっては「うざい」キャラかもしれません。
いつでもテンション高すぎる。話の切り替えの早さが異常。時々自分勝手。
しかし、それが本当は何故なのかは「けいおん!」の話13話全部を見ていけば原因が分かるようになっています。
 
律はそもそも、自分も楽しいことをしたいけども、それ以上に「その場の空気をよくする」ことに腐心している子です。
少しでも不安な友達がいたら、笑わせたい。
悩み事やケンカがあれば話題や視点を切り替えて落ち着かせたい。
みんなが沈んでいたら、気分転換させたい。
そのために、彼女はいつも自分を道化にしています。
もちろん100%そんな真摯な気持ちではありません。本人自身が「楽しいことしたい!」に基づいているからこそ、彼女の行動には嫌みがありません。

「りっちゃんと一緒にいたら、元気になれるよね!」
そう言ってもらえることが、彼女の最高の幸せなのだ、とこの歌ではっきりと明言されました。
 
しかしそれは、寂しさの表現でもあります。
 

●暗い言葉は言いたくないから●

誰かイジる それは実はイジられたい裏返し
「一人はやだ↓ 絶対やだ↓↓」なんて言えない
だけどもしも 私のジョーク 度が過ぎて傷ついたら
ごめん ゲンコツ一発ください
 
大雑把と寂しがり 成分分析したら後者が多し
でも涙はちょっと細かすぎてうまく
操れないんだ…どうしようっ!?
(「目指せハッピー100%↑↑↑」より)

もうこのへん、澪へのラブソングですよね。

殴る、殴られるの関係は、信頼の証。
別に「殴られたい」わけではないですが、律は澪を茶化した後に「突っ込まれる」ところまでをひとくくりにして待っているのがここでわかります。
 
それにしても「実はイジられたい裏返し」なんて、はっきり言われたらちょっとどぎまぎしてしまいますよ。

澪にちょっかいをかけたり、時には保護者みたいになる律。
そして澪に怒られたり叱られたりする律。
もちろんそれは澪が好きだからなのですが、それと同時に「一人きりになりたくない」という激しい怯えを感じます。
唯もむぎも梓も澪も、それぞれ一人で行動できる子ですが、律は「出来れば一人きりになりたくない」子、なのでしょう。
そこで、わがままをいって「やだー!やだー!」と泣き出せば気楽なのかもしれませんが、彼女はそれができません。
みんなに不安はかけたくない、みんな笑顔の空間が大好きだからです。
 

だから笑ってる 私、今日も笑ってる
気づいてお願い これでもいちお
守られたい女子です やっぱ
(「目指せハッピー100%↑↑↑」より)


初期では澪を「守っていた」立場の律ですが、アニメ後半では澪に強烈な甘えを見せます。

11話より。
泣いたり叫んだりせず、おちゃらけながら澪に嫉妬まがいのことをする彼女の心理が強烈な印象をたたきつけた回でした。
澪への「嫉妬」とまとめるのは簡単なんですが、彼女の中の心理はもっと複雑だというのがこの歌によって明らかになったわけですよ。
もちろん、大好きな澪が和と仲良くしていて嫉妬も抱いていたでしょう。
と同時に「自分は一人になってしまうのではないか」という漠然とした不安もあります。
「泣きたいのに泣けない」という心理的な葛藤もあったと思います。
みんなに「りっちゃんなら平気」みたいに見られていて、自分の心の中の苦しみに気づいてもらえない歯がゆさも爆発したんだと思います。
そしてなによりも、自分で自分が制御出来ない事へのパニックを感じていたのでしょう。
 
この歌を聴いてから本編を見直すと、律の心の中がさらによく見えてきます。
なぜ、彼女があんな行動を取っているのか。それがみるみる明確になるのです。
 

●笑顔でいたいのは、わがままじゃない●

いつも笑ってる 私、今日も笑ってる
みんなで大爆笑 それが最優先
(「目指せハッピー100%↑↑↑」より)

自分の心を満たすために「みんなに笑っていてほしい」「かまってほしい」。
みんなに笑っていてほしいから、かまってほしいから「いつも笑っている」。
考えるほどになんだか猛烈に胸が締め付けられるような苦しさを感じます。そんなこと考えず素直に笑っていられたらいいのに!そう言ってあげたくなりますが、それは大人視線だから。
どうすればいいのか分からなくて、とりあえず反逆してみたり、無理に笑って少しでも楽しい時間を作ろうとしたり、…そんな迷走は若い頃多くの人が経験したのではないかと思います。
 
けいおん!」はいわゆる「萌え系」「ゆるい作品」に分類されます。
しかしこの歌詞を見る限り、その「ゆるい時間」は適当だからそうなったのではなく、律をはじめとしたキャラクター達によって意図的に保護されているものであることがわかります。
みんなが「ゆるくて楽しい時間を作るために努力をしている」のです。

この曲、本当に無駄なほど、無理なほどに明るいです。
でもそれでいいんです。
笑顔でいようよ!」という強い思いは、いつしか本当の笑顔を生みます。
そして、彼女は一人でそれを抱えてパンクはしません。ちゃんと澪がガス抜きをしてくれます。澪は律が背伸びしてがんばっているのもちゃんと知っていました。ちゃんと分かってゲンコツで殴ってくれます。律が泣けないときに澪は泣いてくれます。だからそれでいいんです。
 

とはいえ、一人悶々と抱え込むものも多い、りっちゃん。
多分つぶれてしまうことはないでしょう。自分で幸せな場を作るために努力し、そしてその場に支えられているから。きっと今後さらに人間関係を広げ、彼女は色々な壁を乗り越えていくはず。少なくとも、澪はそばにいるから。
ただ、余計なお世話ですが「もうちょっと澪とかにあまえても、いいんだよ!」と言いたくなってしまう人情はあります。もう少しだけ肩の力を、抜いて、と。
いやいや・・・ここは黙って、彼女の笑顔に合わせてぼくらも笑顔になろうじゃないか!
レッツゴー! りっちゃんだいすき!
 

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マンガ版では律の葛藤は一切描かれていません。
それはかきふらい先生が、マンガの中では一切暗い空気を作らないようにしているからでしょう。ある意味、読者に笑顔でいてほしいという信念という意味では、かきふらい先生は律みたいだなあとか勝手に思いました。あ、勝手です勝手。でもゆるふわ系マンガがそのペースを保つには大事なことなんですよね。
アニメはその別の一面をリアルに切り取って、そしてキャラCDで補完。全部合わせてそれぞれ秀逸なので楽しめるのが、ただひたすらに嬉しい。

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歌はむぎがダントツに上手いと思います。曲は唯のギー太かなあ。hideっぽくてかっこよすぎました。ジャケットの凝りっぷりではダントツにさわちゃん。帯と「BURRN!」のライナーノーツまで。やりすぎ素晴らしい。。
歌詞のびっくり度でいうと、あずにゃんのがかなり意外な一面という感じで面白いです。この子そういう事考えていたのね?と目からうろこ。
けいおん!」はまだまだ楽しませてくれそうですなあ。というわけで、14話目の番外編は律と澪の結婚式ですね!