たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

ミリタリー好きと、ミリタリーな女の子好きは、ちょっと違う。「みりたり!」

自分はミリタリーが好きです。
でも「なんちゃってミリタリー」である自信があるので「ミリタリー好きでさあ」とか恥ずかしくて言えません。言ってあら探しされたら、あらしかないよ!
どちらかというと、こういう方が…好きだな!

こういう方な!
 
戦闘美少女の系譜の中でも、現在「ミリタリー少女」の枠はずいぶんできあがってきていると思います。
元々ミリタリーと美少女は非常に相性がいい物です。メカと女の子は男の子の夢ですもの。戦闘機のノーズアートのような鑑賞用から、実際に戦闘に出て銃器を撃ちまくる女の子へ。いいねいいね、硝煙の匂いのする女の子!
 
…うん、これは「ミリタリー好き」じゃなくて「ミリタリーな女の子好き」ですね。「ミリタリ>女の子」でも「女の子>ミリタリ」でもなくて「ミリタリ:女の子=5:5」くらいに好きという感じ。人によってバランスはありますが、どっちが好きとか優劣付けがたいし付けても誰も得をしないじゃんねえ。なのでセットでお願いします。ポテトもつけてください。
 

●突然女の子がやってきた症候群●

オタク文化内で、ミリタリー少女は肥大のまっただ中。
とはいえ、一応戦争と絡むデリケートなネタであるのは間違いないので、それをうまく「萌え」や「笑い」にするためにクッションを挟む必要があります。
「ストライク・ウィッチーズ」は、架空戦記であること、「ぱんつじゃないから恥ずかしくないもん」の一言で何もかもどうでもよくなった感があります。あの「どうでもよさ」は非常に緻密に計算されていますので、制作者には敬服するばかり。
 
4コママンガでもミリタリー好き少女はキャラクターとして映えるため、色々登場しはじめております。「男爵校長」の咲森小蘭さん俺の嫁とかですね。
まるまるミリタリーネタで固めた、表紙で読者をばっつり選抜しているのが、「みりたり!」という作品。

4文字題名が流行なので「どっかででないかな…いやまさかな…」と思ったらしっかり出してくれた、という感じ。
銃器を持ったほぼ幼女が駆け回る。うーん、それって二次元ゆえに出来る最高のドリーム。
ここに入ってくるクッションは、

1・戦闘地域として出てくるのは実在しない国であること
2・ヒロイン達がどう見ても幼女であること
3・突然家にやってきた!というおきまりパターン

です。
だって、幼女が銃器撃てるわけないですよ。反動とかさ。でも撃つんです、撃ちまくりです。
加えて、リアルな設定がなく突然一般人の男の子の元にやってくる、という「うる星やつら」や「ああっ女神さま」パターンを踏襲しているので、この子達の現実味がものすごく薄いわけです。極端な話、人間じゃないレベルの違和感です。
これが、近所の女の子が徴兵されて…とかなら鬱ですが、「ミリタリー少女」という別世界の生き物に変化しているので、実弾撃ち合っても全然気になりません。

彼女たちが撃つのは全部実弾。当たれば大怪我必至です。
が、彼女たちは「ミリタリー少女」という生き物のように捕らえられるので、笑って済ませられます。そもそも持っている銃器はリアルだけど、見ていると力も入れずにすいすい撃つのでまるで豆鉄砲みたいです。
 
「突然やってきた女の子」というのは、男の子の日常が非日常になるスイッチみたいなものを担います。相手が人間であろうとなかろうと。
それを思い切って「ミリタリー少女」という、本当は少女なんだけどそうは見えないものにしているので、気楽に読める仕組み。諸星あたるラムちゃんの電撃に撃たれて死なないのと同じ感覚で、実弾が撃てるわけです。

不思議な危機感のなさ。
それがいい。
 

●ミリタリー少女の面白みは、ディティールの細かさ●

はて、こうなってくると「じゃあミリタリー部分いらないじゃん」と言われそうですが、いやっ!そこはっ!繊細な心の襞でして。
男の子のコレクション欲求に近いのかなあと思うんですが、ディティールが細かければ細かいほど燃える、ってのはあるのです。それがメインな物語なら当然のことですが、そうでなくてもどうでもいい部分が細かく描かれているだけで、ニヤニヤしてしまう。
銃器やミリタリーはまさに「ディティールの細かさ」の極地みたいなもの。もちろんそれを全部捨ててオリジナル銃器を描くことで産まれる面白さもあるんですが、実在のミリタリーネタを細かい部分で差し込んできてくれると頬のゆるみが止まらない。
昆虫採集の標本に、知っているチョウチョがきれいに入っていたようなうれしさです。

まあそのへんも「ないない」というレベルのどうでもいい所に挟まってくるから、かわいらしく済んでしまうのがいいところ。あんまり深く突っ込むと面倒ですし、突っ込みすぎないとディティールの細かさを楽しめませんし。
上記に引用したのは、「月刊紛争の友」という雑誌についてくる付録を、銃器マニアのヒロイン、ルトガニコフ中尉が買い集めているシーン。BT戦車はロシア製なので、「ベーテー」と読みます。快速戦車らしいですよ。
ちなみにこの雑誌、世界中の中古武器が通販されています。武器マニア垂涎。
 
こんな感じで細々と、ほんとどうでもいい所にミリタリーネタが差し挟まれています。
それが柱部分にも及んでいまして。

こんな感じで、ほぼ全ページに豆知識が!
…ミリタリー系のネタって、びっしり詰まっていればいるほど、お得感があるのはなんでなのかしらね。多分「コレクションは多い方が充足感がある」の理論と同じだと思うのですが。
この明日学校で使えない豆知識っぷりはこのマンガの売りの一つだと思います。詳しい人は、さらにそこから同志とネタを広めるのもアリ。
 

●生活の全てはミリタリー!●

イメージの「ミリタリー少女」の面白さは、思考がすべてミリタリーで満たされていることです。軍人だって24時間そのことばかり考えている訳じゃありませんが、「ミリタリー少女」は24時間銃器のことを考えている、という風に描かれているから、こちらの欲求を全部受け止めてくれます。

会話はすべて、軍隊なノリで。サーイエッサー。
軍隊の真似っこって世界中比較的どこにいってもやっている気がしますが、その「ごっこ」感は非常に強いです。悲しい話のはずの「フルメタルジャケット」のハートマン軍曹が愛されてしまうんですもの。戦争的な物はとりあえず置いといて、このノリを楽しみたい人は多いはず。
しかもそれが、かわいい女の子なら最高です。男の子の夢の具現化です。
 
一部の「男の子」が求めているのは、一緒に軍隊ごっこをやってくれる女の子像です。
つまり、思考は男の子、外見は女の子。それが「ミリタリー少女」の現在の形態です。そこからさらに発展して、メカと融合していっているわけですが。夢と夢が合わされば燃えたり萌えたりしますわな。

日常の一部が、ミリタリー思考によって非日常になる面白さは、彼女たちが現実の少女とまったく別世界を見ているゆえに生じる歪みです。
これはこたつを改造するシーンですが、確かにこれなら潜っていれば銃弾浴びても安全であります。ケブラー素材が一枚じゃないのが重要なところです。
 
非日常ではありますが、決して日常から離れません。
テンションは死ぬほど高いですが、内容は死ぬほどゆるいです。この緩急と先ほど述べた「どうでもいい細かさ(褒め言葉)」が、いー具合に「女の子好き!」「ミリタリー好き!」の欲求を満足させてくれます。
 
逆に言えば「ゆるさ」「女の子」が、生粋のミリタリー好きには余計だと思います。
「ミリタリー好き」と「ミリタリーな女の子好き」はそのへんが大きな境界線。とはいえ今は「どっちもいけるぜ!」という人も非常に増えていますので、一概には言い切れませんが。
最初に述べたように、両者の境界線になんらかのクッションがあることで成立するジャンルでもあると思います。うまい具合に共存しながら、銃器ヒロインがもっと増えたらいいと思うのよ! 笑顔で銃器を撃ちまくって!
…自分の中の「ミリタリーな女の子好き」はM気質に近い気がしてきたんですがどうなんだろこれ。

ヒロインの二人が、ショットガンの近接戦闘好きと、スナイパーライフルの使い手とか、シビれますね。そして二人とも銃器マニア。シビれてチビりますね。
先ほどはMC☆あくしずを話題に出しましたが、どちらかというと路線はこっちのほうが近いかも。
魔法の海兵隊員ぴくせる☆まりたん 公式サイト
まりたん」の後ろを振り返らないめちゃくちゃさは、いい具合に「ミリタリ少女」のジャンルを一気に切り開いた感じがしますねえ。コミケの紙袋とかひどかった(褒め言葉
暴走しているように見えるミリタリ少女ジャンルですが、なにげに色々気を遣っているから成立しているジャンルだとは思います。なんだかんだいっても、繊細な部分ですものねえ。
 
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