たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

クリスマスイブだったので律と澪の話をするぜ!

雪が降りしきるクリスマスイブ。
澪の部屋に来た律は、澪と一緒にあぐらをかいて座りながら、テレビから流れている「明石家サンタ」を見ていた。
「ひっひっひ、あっはっは、お、おかしい、さんま最高!」
律は澪の服を引っ張りながら大笑いしていた。
澪はそんな律を見ながら、渋い顔をする。
「なあ律、お前何時までうちにいる気だ? もう1時すぎてるんだぞ?」
「えーっ、いいじゃん。っていうかー、…泊めて☆」
律は首をかしげながら両手をあわせた。
「んもー、明日一応学校あるんだぞ?」
「分かってるってー。それよりほら、明石家サンタ見よう! ぶっは、おもしろっ!」
さんまの軽快なトークを聞きながら、律はひざをたたいて笑った。
 
澪はそんな律を見て、肩をすくめてからごろりと寝転がった。
「はぁ…唯の家でクリスマス会やったあと、まさか家に来てこんな時間までいると思わなかったよ…。」
そうなのだ、唯の家で恒例のクリスマス会を軽音部全員+和+憂でやった後なのだ。みんなでプレゼント交換をし(律はまたびっくり箱だった)、憂ちゃんの作ったケーキを食べ、梓にかくし芸と称した猫の真似をさせ、ひとしきり大騒ぎして帰ってきた後、なのだ。
律はなぜか帰り道、澪にぴったりくっついて、家についてからも約束をしていたかのように両親に挨拶をして上がり込んできた。ごくごくナチュラルに家に電話をし、澪の家にいるから、とだけ伝えていた。もちろんそんな約束はしていなかったのだが。
「いいじゃんー、せっかくのクリスマスなんだしー!」
律も澪同様寝転がった後、ごろんと転がって腹ばいになった。
「せっかくのクリスマス、だけどさあ。」
澪は仰向けのまま口を尖らせた。その唇を面白がって律がつんつんと突付く。澪はその手を左手で鬱陶しげに払った。「なんでまた、結局律と過ごしてるんだよ。こんな遅くまで。」
「えー、いいじゃんー。」
律はゴロゴロと右左に転がりながら言った。
「あー。いつになったら彼氏と一緒のクリスマスとか過ごせるのかなー。」
澪は寝転がったままぼそっと言った。
彼氏、かあ。
女子校で軽音部をやっている彼女たちに、彼氏のいる人は誰もいない。
そもそも今は5人+αでいる方が断然楽しいし、音楽あわせるときの快感も、ゆったりお茶する時の楽しみも、手放すつもりはない。口でだけは「彼氏ほしいねー」なんて話はするけど、実行に移そうとするのは誰もいない。
 
「そういえばさ」律が澪の方に体を向けながら言った。
「ん?」
「さわちゃん、今年も来てたね。」
「またフられたって言ってたよな。なんでクリスマス前にかならずフられるんだろうさわちゃん…。」
「バレちゃうんじゃない? 趣味とか。」
「あのCDプレゼントするのやめた方がいいのになあ…。」
澪はさわちゃん先生の持っていたCDのジャケットを思い出して身震いした。デスメタルをやめさえすればあんなにキレイでやさしい先生いないのに…とは思いつつも、律も澪もそんなさわちゃん先生が好きなのであまり口に出しては言わない。
「さわちゃんがね」律が言った。「さわちゃんに恋人が出来て、クリスマスもOKな彼氏だったら、来年から私たちのクリスマス会来なくなるのかな?」
「そもそも呼んでないからなあ。」澪が上を見上げながら言った。後ろで明石家サンタの音声が流れっぱなしだが、もう耳に入らなかった。「でもそれって、さわちゃん的にはいいことなんじゃないの?」
「んー。」律はうんでもすんでもない感じに答えた。
「私は」澪は言った。「クリスマスは特別だし、確かに素敵な恋人とホワイトクリスマスを迎えたいって夢は見るけど、それとこれは別だとも思う。よかった、って思える何かが大事じゃないのかな、友達とか、先生と生徒とか、家族とか。」
「そっかー。」律はそう言ったあと、コロンと転がって澪に背を向けた。しばらくゆらゆら揺れていたと思ったら、また澪の方に向き直って、澪のほっぺたをつついた。
「えい。」
「むあっ。何すんだよっ、律!」
澪も律のほっぺたをつつき返した。
壮絶なるほっぺつつき合戦! 二人は寝転がったまま、北斗百裂拳ばりにほっぺをつつき合った。澪の右人差し指が迫る! 律が左手ではじいて腋の下にシュート! 卑怯だ!という声に合わせて澪が律のほっぺたを思い切り引っ張る!
ものすごい勢いでつねったりつついたり叩いたりしながら、ゲラゲラ笑った。
寝転んだまま、何がおかしいのか分からないのに二人で大笑いした。
 
あんまりにも笑って、澪は息が苦しくなった。
「あははは、はぁはぁ、はぁはぁ、り、律めーーー。」
「いひひひ。」
しかし律は、急にまた反転して、澪に背を向けた。
そしてそのまま、部屋の隅っこにあるベッドの所までゴロゴロ転がっていった。
「律?」
澪は不思議そうにそれを見ていた。
起き上がり、律が団子になっている部屋の隅まで歩いていった。
「どうした?」
澪は律の側にしゃがみこんだ。
「あのね」律はぼそっといった。
「ん?」
「来年、クリスマス会できるのかな。」
律は顔を向けなかった。表情を見せようとしなかった。
一拍置いてから、澪は言った。
「変わんないよ。」
澪は律の肩に手をやった。別にひっくり返すでもなく、ただ添えた。
「本当に?」
「うん。」
「ほんとのほんとに?」
「なにかあっても、私と律と、あとみんなが変わるわけじゃないだろ?」
澪は言った。そっと、言った。
「うん。」
律は顔を背けたまま言った。
「来年も、一緒にいよ。私は、みんなと、律と、一緒にいたいよ。」
澪が言った。
律がゴロンと澪の方を向いた。
「えへへ。」
手足を縮めて、団子のようになっている。
「律?」
「わたしもー!」
がば!っと起き上がると、澪の上に覆いかぶさった。
「や、ちょっと、律、律ってば!」
「うおおおおあああ! …えへへ。」
律はごろんごろんと澪ともつれあいながら転がり、そして二人して大の字になって床に寝転がった。
律の右手と、澪の左手がしっかりと握られていた。
二人の指と指は、しっかり絡んでいた。
小学校の頃にしていたように。
律が、ぎゅっと手に力を入れる。
澪も、ぎゅっと力を入れかえす。
「メリークリスマス。」
律が言った。
「うん、メリークリスマス。」
澪も言った。
窓の外では、音も無く雪が降り続けていた。真っ白な、綿のような雪が。
 

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メリークリスマス!
 

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