たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

マンガの「洒落た背表紙」を適当に考える。

今回のエントリは細長いです。
なぜなら背表紙の話だからです。
 
以前友人と、綺麗に並んだ本棚を見ながらお話していました。
書庫晒し - フラン☆Skin はてな支店
ラノベって並べるとかっこいいよな!」という話。
見てくださいよこの三段目の写真。ずらっと並んだラノベのまあかっこいいこと。
ラノベというか、ハヤカワSFとか並べてもきっとこんな感じになりますね。
 
それに対して、マンガの背表紙はどんなにキレイに並べても、びっくりするほど雑然とします。
これはもう、仕方ないこと。
いやね、一応男女向けで差はあるんですよ。
一例。うちの本棚ですが極端な差が出てたので。

少年向けと女性向け。
すごいわかりやすいですねこの差。
少女漫画・女性向けの本は背表紙に何もないものが多いので、並べて見るとあまり違和感がありません。少年漫画は背表紙にがっちりと絵が描かれていたり、できるだけ派手に成っていたりすることが多いのですごいおもちゃ箱感覚になります。
特にマンガファン層向けのコミックスになると、どこまで派手に出来るか勝負みたいなところもあって、非常にカラフルなことになります。あと4コマ系などの本は背表紙にキャラがいることで「いかに手に取ってもらうか」が勝負みたいなところがあります。
 
たとえば、某マンガがあればいーのだ。のたかすぃさん奥さんに「えっちな本見つけた・・・」とたしなめられた(?)と言うので、「えっ、どのエロ本だよ教えろよ!」とみんなで盛り上がったことがありました。どんなすごいエロ本なんだ!?触手か凌辱か?と大いに期待が膨らみます。
ところが、見つかったのは「加納家の事情」だということ。
ん?
小石川ふに先生の「加納家の事情」は自分も大好きな作品ですが、あれってエロくないぞ? 
18禁じゃないどころか、中身も普通だぞ?
なかなかエロにきびしいなー、なんて話してたんですが、背表紙を見て大いに納得。
 
うん。
マンガ慣れしていない奥さんなら、この背表紙見たら確かに「エロい本だ!」って反射的に思っちゃいますね。
めっちゃぱんつだし。
まあ個人的には「そこ(ぱんつ)」がよくて買ったので商業効果は絶大ですが、奥さんやお子さんのいる人は並べておくだけでドキドキですな。ちなみに中身はほんわかにやにや程度で、エロマンガでもなんでもないです。面白くて癒されるヨ。
加納家の事情 上 (マンサンコミックス) 加納家の事情 下 (マンサンコミックス)
帯でぱんつが隠れる親切仕様。
たかすぃさんはどう弁明したのか気になるところです。
 
はてさて。
個人的には派手な背表紙の方が好きです。「ドラゴンボール」の連続背表紙とかわくわくしますものね。
あと「GA」の2巻でノダちゃんが「この本高いよ」という札を背表紙で持っていたときは爆笑しました。自分で言うなよ! でも買っちゃうよそんなことされたら。
あと、なんといっても「どこまで買ったかわかる」ので安心出来る!
・・・のですが、まあオシャレというかまとまり感は全然ないですわな。雑然感がすごいことになります。
逆に少女漫画はいつもどこまで買ったか、背表紙でわからなくなります。自分の精進が甘いのですがー!見分けられんっつうのー!
無論、内容が面白ければ背表紙なんて気にしなくてもいいんですが、今回ちょっと「洒落た」色々な背表紙を見てみたいと思います。
といっても、女性向け・少女漫画・BLは元々洒落ている+レーベルで定形が決まっているのが多いので今回は除外。それ以外でお洒落なの無いかな?という適当な感じで探してみましょう。
 

●洒落た背表紙●

少女漫画以外だとどうしても絵が入っちゃうとマンガマンガしてしまうのですが、それを徹底して排除してしまう背表紙も多いです。最大のデメリットは「どんな本かわからない」ということなので、ある程度売る側のセンスと知名度が問われますね。
たとえば、客層がオタク層だけではないのと知名度が十分な浅野いにお先生の場合。

スーパーシンプルイズベスト。
各巻ごとに色がばらばらなのですが、極めてあっさりしたデザインのため本棚に並べると割と映えます。
おやすみプンプン 1 (ヤングサンデーコミックス)
プンプンは表紙も印刷なしの凹凸のみですし、かなり思い切ったデザインだとは思います。でもこれが意外と書店で目立つんですよねえ。
 
マンガファン層向けでもオシャレなのが、たとえばこれ。

デッドマン・ワンダーランド (7) (角川コミックス・エース 138-14)

表紙と中身は割とこてこてにマンガチックな「デッドマン・ワンダーランド」ですが、各巻の背表紙が白・黒の順になっていて、非常に背表紙がスラリとまとまっているため、これがまた並べるとかっこいい。
モノクロ表紙は上手く使わないと地味になってしまいますが、これはかなり成功している例じゃないかと思います。
 

ミスミソウ 3 (ぶんか社コミックス ホラーMシリーズ)
押切蓮介先生の「ミスミソウ」。ホラーMなので女性向け?になるのかもしれませんが。
なんといってもざっくり黒と赤で、そしてタイトルフォントがかっこいいのが魅力的。
やっぱりね、黒背表紙ってかっこいいんですよ並べると。本棚が一気に引き締まります。
 

未満れんあい(3) (アクションコミックス)

「萌え系」に属するコミックハイレーベルでもかなりPOPなデザインで見ていて気持ちがいい、高嶋ひろみ先生の「未満れんあい」。
並べるとパステルカラーが一気に映えます。
このハートフルなカラフルさの中に、30歳エロゲプログラマーの悲哀が隠されていると考えるだけで涙が出てきます。背表紙の段階ではそこまで分からないのがトリッキー。
 

ロボット残党兵 3―妄想戦記 (リュウコミックス)
横尾公敏先生の「妄想戦記ロボット残党兵」。
帯をつけてもかっこいい、外してもかっこいい。単色カラーにいい意味で古臭いフォントはやっぱりかっこいいですな!
各巻の色がまた抑えめというか、作風に合わせて渋い色使いなので、とても書棚で男臭い匂いを放ちます。
これはひいきなんですが、コミックリュウ系の単行本は「くおんの森」や「嵐ノ花 叢ノ歌」など結構背表紙カッコいいの多いです。これはひいきなんですがコミックリュウのコミックスは並べがいがあります。これはひいきなんですが(以下略
「ビーム」や「IKKI」系列でもなかなか渋い背表紙が多いことを考えると、やはり読者層に合わせている感じはちょっとしないでもないです。特に「ビーム」系列の背表紙は他のコミックスと比べても一線を画しています。
 
そして、純文学の背表紙か、そうでなければアングラ雑誌の背表紙なんじゃないかと思うインパクトになったのが、こちら。

新装版 家政婦が黙殺 篠房六郎短編集 (KCデラックス)
ちょっとちょっと、かっこいいですから!
表紙はいかにもですが、この背表紙ならさりげなく教養書に混ぜていても分からないレベル。……いや題名で分かるか。
本家本元の原版持っておられる方なら、このデザインの変わりようには驚いたはず。元々はバイブが飯を食ってるようなシュール極まりない(ある意味作品そのまま)のデザインでしたものね。

この背表紙から、中身がこんなだと思う人がいただろうか。
……買う人はみんなわかってますよね。ですよね。

 

●技あり背表紙●

今度はちょっと技ありの、オシャレで面白い背表紙を探してみます。
まずはカリスマ?デザイナーの里見英樹さんの素敵なお仕事から。
 
まずはあらゐけいいち先生の「日常」シリーズの背表紙。非常に素晴らしい。大好きです。

日常 (5) (角川コミックス・エース)

並べた見た目が素敵で、非常にきれいなデザイン。「(数字)」がなにげにスパイスになっています。
それと巻数にあわせて増える鳥がミソですね!
こちらもデザインがいいので、嫌味がありません。さりげなーくインテリアに置いておける素敵な背表紙です。
これに帯がつくと「非日常」とかの文字がでかでかと載ることになります。これまた味がある。
 
次にkashmir先生の○本の住人。こちらは帯ありとナシを比較。

○本の住人 (3) (まんがタイムKRコミックス)

帯無しだと知的な空気すら感じますが、帯有りだと一気にアホっぽさがしみ出してくるからたまりません。
つまり「使い分けてね!」ということですね。
これ、実はオチがついておりまして。
帯の裏側なんですが・・・。

やられた。
なんというトリッキーな背表紙なんだいまったくもう。
 
別の方のデザインですが、帯のあるなしの差がすごいのがこれ。

アオイホノオ 3 (少年サンデーコミックススペシャル)
島本和彦先生の「アオイホノオ」。
帯がやけくそにでかくて、やけくそに派手なんですよ。だから書店ではむちゃくちゃ目立ちます。
が、外すと背表紙がものすごいすっきりしていてびっくり。
これ飾るための配慮もありますが、この躁と鬱のバランスが主人公の心理そのものを表現している秀逸なデザインになっています。印刷で紙質を古い和紙風?にしているのも凝っています。
 
最後に、「ちょっといいなあ」と思った背表紙。
志村貴子先生の「青い花」です。

普段は帯を付けていると、ちょうど帯部分に絵が描いているので目立つんですよ。
志村先生の絵はキュートなので、なるべく書店ですぐ見つけたいですしね。
ところがこれ外すと。

かなりシンプルかつかっこよいデザインに。太田出版、の文字が控えめなのが非常によく計算されております。
これは書棚に並べるとかなりいい感じになり、他のハードカバー小説なんかと並べても違和感まったくないです。色合いも青と白でシンプルだけどもフォントにこだわっていて、目を惹くのがミソですね。作者名が上なのも珍しいんではないかと。
あと、帯の着脱で使い分けるのをちゃんと出版社側も理解しているのか、帯が非常にしっかり破れづらい素材になっています。表紙と同じ紙なんですよ。このへんの気遣いがうれしい! 帯有りき、外してもOK、そこまで含めてのデザインなのです。
青い花 5巻 (F×COMICS)

最近の4、5巻とかは背表紙まで表紙の絵がはみでちゃってますが、この帯の着脱システムは継続されています。
ちなみに百合系だと袴田めら先生の「最後の制服」もかなりセンスいい背表紙してますね。
 

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他にもひらりん先生の「三ツ目の夢二」とか丸尾末広先生の「芋虫」山本直樹先生「レッド」あたりは、かなりがっちりしたデザインになってますが、このへんは最初から文学系(?)のマンガとして作られているからちょっと別格かもしれません。
まあ今回は結構適当に抜き出したので、「おいおい、こんなすげえ背表紙もあるんだぜ!」というのもあるとおもいます。が、どうしてもアマゾンなんかのネット書影画像だと背表紙見えないんですよねえ・・・。そういうのは本棚撮影とかで、ばりっと見せるのも面白いかもですね。
 
なんにしても、先程も書きましたが、中身が面白ければ背表紙はおまけでしかありません。
しかし、背表紙も表紙もデザインも含めての「本」です。
特に書店で一番見かけるのは背表紙。ちょっと凝った背表紙があると嬉しくなって、買いたくなる効果は抜群にあると思うのですよ。
極端な話「書棚に並べたい背表紙かどうか」というのは売上に対して意外に大きな要素になるかもしれません。
やっぱり並べるならカッコいい方が、いいもんね。
改めて、洒落た色使いの書棚の並べ方を楽しんでみるのも乙なもんです。
 
……まあとはいえ、マンガって100冊越えた段階で背表紙は割とどうでも良くなっちゃうのも本音なんですけどね。