たまごまごごはん

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ヤクザと超能力少女の日常はイイハナシカナー?「ヒナまつり」

アウトローと少女といえば「レオン」を思い出しますね。
いい話ですよね。大好きです。
で、ヤクザと少女ということで大武政夫先生の「ヒナまつり」を買ったわけですが、表紙からまったくいい話臭がしないのがいいですね。
 

 
イクラでござる。
なんだろうこのアンバランス。あ、ヤクザと少女だからアンバランスで当たり前なのか。
レオンで逆に慣れすぎてしまったのね。
 
個人的にこの系統で好みの話って。

1・いい話と見せかけてやっぱりいい話。
2・酷い話と見せかけて本当に酷い話。
3・酷い話と見せかけて実はいい話。
4・いい話と見せかけて実は酷い話。

こんな感じです。
たいていは3が多いというか、王道。
1だとギャップが少なすぎて逆に怪しいことも。いい人がいいことする、「笑ゥせぇるすまん」の弟「喪黒福次郎の仕事」が怪しすぎたような感じ。
まあそこまでいかなくても、同じこと(例・町のごみひろいなど)を善人がやるのとヤクザがやるのだと、後者の方がなんかギャップでいい人っぽく見えて前者は普通にしか見えないという矛盾!
そこがマンガ的には面白い。
 
主人公は幹部級になりそうな結構やり手のヤクザ、新田。この表紙の金髪。
実はすごい。
でもイクラ大好きな謎の空から降ってきた念動力少女ヒナが登場することで、こいつがチンピラ以下のへっぽこに見えます。
よし、ギャップ来た!
 
ようするに「ヤクザって強そう→本当は強くても思ったほどじゃなければショボく見える」「少女って弱そう→強いと他のあらゆるもの以上にハイパーに強そうに見える」の組み合わせで「すっごいショボそうなヤクザと超絶強い超能力少女」の構図が出来上がります。
逆もまたさらなり。
怖そうなヤクザを簡単に手玉に取れるから、少女の強さが引き立つ。
 
で。
この組み合わせがまともな生活なんて送れるわけがなく、最初からドタバタコメディを繰り広げてくれます。
まあ、血まみれなヤクザに対して、のんきな女の子です。
当たり前の生活が、ものすごく「良い物」に見えるんです。
特に、仁義を守って・・・ってほどでもないんだけど、ヒナ的には優しくされている感じを新田から受けて、すごくなつくわけです。
新田はまあ芯の通ったいい奴ではあるんですが、あくまでもヤクザの中で、というだけで結構えげつないこともしていたはずなんです。なんですが、家程度簡単に破壊できる念動力もちに勝てるわけもなくヘコヘコと従うのみ。
そのため本来であれば「ヒナ>新田」になるんですが、ヒナはどうも今までひどい仕打ちを大人からうけていたらしく、「普通」に接してくれる新田をすごく気に入り、「ヒナ=新田」という共存関係が成立するという仕組み。
新田にしてみたら災難にあっているだけなんですが、本当に困ったときにはギブアンドテイクで助けられたりもします。
ヒナは新田に、預けられた子程度には大切にされ、仁義の通った言葉は伝えます。
「もっと自分で考えて動けよ、何が正しい行動かよぉ!!」
いいですね、かっこいいですね。
実はこれ、単に学校に行くことを放棄していた(というか分かってなかった)ヒナにぶちきれて当たっていただけ
最初に「キレる」「呆れる」等の、新田の行動がいいように解釈されて結果オーライ、気がつけば不本意にイイハナシダナーになるという、珍妙な作りになってます。
 
まあいいんですよ、それでもここで終われば「酷い話かと思ったらいい話だった」でおさまるはずだったんですよ。
でもこの話、やっぱり新田は大物ヤクザなだけあって、結構周囲にドえらいことやっています。
彼だけが主人公なら、まさにエグいヤクザ物語になったことでしょう。
でもそれ以上に破壊魔なヒナが出てくるので新田の悪事なんて余裕でかすみます。
内容的には一見「イイハナシダナー」なんです。
でも冷静に見ると、結構・・・どころじゃないほど被害者続出中。
うーん、なかなかな数・・・死んでるんじゃないかなー?
たまたまヒナのとなりの席になったクラスメイトの瞳(not友人)もいい具合に巻き込まれて「どうしてこうなった」状態で放置しっぱなし。
何気に不幸な人多いです。
うん、ヒナは幸せになってるんだけど。うん。
そんなわけで「いい話と見せかけて実は酷い話」の4に該当する、投げっぱなしコメディです。
 
ヤクザがギャグマンガに出てくる時って、たいてい「どうなってもいい」かませ犬になるか、「意外とイイヤツ」という味方になるかが多いでしょう。一般人じゃないよ、という別人種扱い。
この作品そういう点において、「放置できる」というかませ犬扱いと、「信頼できる」味方の側面両方を、ヤクザという記号を用いることで成功しています。
なまじヤクザ関連の話が生々しく描かれているので、なんとも素直にハッピーエンドといえない、後味が酷くて(褒め言葉)面白すぎる作品。
 
にしても、ヒナちゃんかわいいけど月200万かかるのは困るなあ。
金銭感覚が狂っても別にいーじゃん、ってなるのもヤクザキャラだから。
ヤクザフル活用でヒナを可愛く魅せるの特化なのが気持ちいいです。
いいですね、この全力でボールを投げているつもりがスッポ抜けてすごいスローボールになって、しかもなぜかストライク取れちゃった感。