おいおいなんなのちょっと「コクリコ坂から」すげえツボなんですけど。
「コクリコ坂から」見てきました。
結論から言うと、パンフレットとビジュアルガイドを何も考えずに買うくらいにハマりました。
なにこれ、すごいツボなんですけど!
コクリコ坂から 公式サイト
なんつかぶっちゃけると、見る前はぜんぜん期待してなかった。
最初行かないつもりでしたもん。キービジュアルみてもどっか国籍不明系のファンタジー?とか思ってましたし。
(というか見終わった今でもこのキービジュアルはなんか自分の感覚と違って困惑します。いい絵なんだけど、あれ?って。)
まあスルーしようかなーと思った時に、見に行った友達からこんな言葉が。
「コクリコ坂は、ブヒれる」
なん……だと……?
それは行かねばと思い、行きました。
ブヒれました。
いやまあ、そういうアニメじゃないんだけど……なんかもうキャラと世界観がよすぎなんですよ。
たどたどしく感想をネタバレなしに書いて行きます。
本来作品の読み解きであれば、監督が宮崎吾朗、脚本が宮崎駿であること、時代背景、物語の構造なども真剣に考えるべきなんでしょうけど、そういうのは他の方の感想におまかせします。
それどころじゃなかったんですよ。見終わったあと気持よすぎたから、それをそのまま書き留めます。
●懐古主義か、レトロファンタジーか世界。●
1963年の横浜が舞台。東京オリンピック寸前。
背景美術が尋常じゃなくきれいで、ものすごい60年代詰め合わせ感に満ちています。
で。
面白いなと思ったのは、比較的生々しく描いているし、出てくる人間たちも息遣いを感じるほどしっかり描かれているんですが、どうにもなにか「どリアル」じゃない。
たぶん、60年代を知っている人には「懐古」、60年代を知らない人には「憧憬」な情景なんだと思います。
60年代のいいところどりをしている感じが妙に心地いいんですよ。
高校生の学生運動的なネタもちょいちょい混じってきているんですが、これが極度に脱臭されていて、生臭くない。むしろ混じりたくなる。
なるほどこれはレトロファンタジー作品なのかなと自分は感じました。
たぶんそのへんが好みはバッサリ分かれると思いますが、ハマる人はほんととことんハマるんじゃないかと思います。
ぼくはレトロファンタジーとしてがっつり心持って行かれました。
個人的にすごい好きなのが、男子寮の「カルチェラタン」。
これ最初九龍城状態なんですよ。どこになにあるかぜんぜん分からない。
すごい珍妙な階段構造になっていて、みっちりと色々な文化系の部活の部室ががりがりに詰まっている。
しかもさらに上に階段らしきものがあるので、どこまで続いているか分からないファンタジー空間状態です。
男くさい臭いがぷんぷんしそうではあるんですが、ファンタジー空間っぽいためそれが嫌味になっていなく、ものっすごい入ってみたくなるんですよ。
カルチェラタンを壊すか壊さないかで学生運動が起きるんですが、先程も書いたように脱臭されていて、ドロドロしていない。
この建物がどうなるかはまあ実際に見ていただいたほうがいいのですが、なるほどそういう方向でまとめるのね、そしてここで新しい人間関係が生まれるのね、と見ているだけでニヤニヤできます。
いやあ、男の子も女の子もみんなかわいいよ。
色々喚いたり叫んだりしてるけど、あくまでも「高校生の悩み」の範疇なのもまた、心地良い。
少女マンガは映画になり得るか。その課題が後に「耳をすませば」の企画となった。「コクリコ坂から」も映画化可能の目処が立ったが、時代的制約で断念した。学園闘争が風化しつつも記憶に遺っていた時代には、いかにも時代おくれの感が強かったからだ。
今はちがう。学園闘争はノスタルジーの中に溶け込んでいる。ちょっと昔の物語として作ることができる。
(企画・脚本 宮崎駿)
ここなんだろうなーと思います。
●いい人しかいない世界●
物語的に大きな起伏はあります。が、そこだけに焦点を当てている作品ではないと思います。
むしろ、このレトロファンタジーの世界に生きる人達がバラバラに動いているのが心地よい作品です。
もう全員それぞれの人生を送っている背景が一人一人に透けて見えるのが楽しくて仕方ない。女子寮は特に詳細に描かれているので、いちいちキャラを見ていて楽しいです。
モブキャラの一人なんですが画学生のヒロさんがめちゃくちゃもっさりしていてかわいくてですね。
彼女パーティーで集まったりしても特にキレイにしたりせず、黙々と飯食っていて惚れました。かわいい。
男子寮、カルチェラタン側も個性あふれるメンツぞろい。
なんといってもそれぞれが「文化系部活」というアイデンティティを背負っているのが強烈にでかいです。
○○部のあいつ、って感じでアクのある子が集まってるんですが、なんせ文化系で何やってるのかわからん子ばっかり。それを黙々とやっていて、いやーモテナイだろうなー感がぷんぷんしているのが、これまた可愛くて仕方ないわけですよ。
で。
学生みんな純粋です。超純粋です。裏表とか皆無です。
正直、いい子だらけすぎです。
これも大きく好みが分かれるところだと思うんですが……そこがすげー心地良いんですよ。
ここも本当はリアリティを求めていくなら、苦難や苦悩や悪意が詰まっているべきなのかもしれませんが、ぼくにとって見たいのってそういうのよりも、真面目な子達がとにかく一生懸命になってる姿の方だったんです、この作品においては。ノスタルジックファンタジーとして見ているので、無理やりな心理的リアルはあまりいらない。
加えて、子供たち視点なので「何もかもみんな信じる信じよう!」という意気込みで世界見てる。だから悪意はもしかしたらあるのかもしれないけど、見えない。見えていない。この朴訥さがキュンキュンくるんです。
一応ヒロインの海(あだ名はメル)と俊はそれなりに重いものを背負っている子です。
なんですが、二人ともにてきぱきてきぱき動いてる。暗さを感じさせない。
宮崎吾朗監督の話しによると、最初はやはり設定の重さがあって、あまりに陰鬱だったので挫折したとのこと。ところが「これ1.5倍速で観たらよかったよ」と言われて加速したら、急に元気な雰囲気になった、とのこと。
うわー、確かにそう言われると、最初のメルが家事をするシーンなんかはまさにそうかも。
大人も子どもも、打算がない。この姿勢がほとんどのキャラに貫かれていると思います。
ある意味不自然かもしれないけど、それが、少なくともぼくにとっては「見たかった世界」。だから映画を見ている時気持ちよくて気持ちよくて。
とりあえず、全体的に斬新なことはあえてやってない作品だと思います。
超王道なキャラも多いですし、マンネリ設定なキャラもいます。それでいい、それが見たい。
この「見たい世界」「見たいキャラクター」「見たい動き」「見たい心意気」を詰め込んだのが「コクリコ坂から」なんだと自分は感じました。
で、ですよ。
最初に友人に言われた「ブヒれる」なんですが、うん、ブヒれた。
メルちゃんがそもそも相当にかわいい。基本普段はぶっきらぼうなんだけど真面目で、気づいたら俊に惹かれていて……この流れがすごいわかるし、照れる様子がキュート! 俊はねえ、かっこいいんだ、男から見てもリーダーにしたくなるくらいに。コロッケ買うシーンとかイカス。よし、メルちゃん俊になら惚れていいぞ! それを冷やかす役にぼくはまわるよ! って感じ。
実際みんなが冷やかしているシーンとかニヤニヤもんです。
ぼくが一番ツボに入ったのは、妹の空ですね!
髪型はマイマイ新子の貴伊子みたいな感じ。ちょっとハイカラさん。メルが割とオシャレに気を使わないのに、空はそのへんオシャレ好きなのがイイんだなー。
で、すげーミーハー。俊が学校の話題になったら写真を買っちゃったりして。サインもらいにいったりして。それでいて後からエスコートしてくれるキザな史郎にときめいたりして。
このフワフワっぷりがえらく少女めいていて、キュンキュンきました。
あとはヒロさんなー。ヒロさん見た瞬間にぐっとくるくらいかわいかったもんなー。なんだろうねえもう。
打算のない純朴なキャラが、恋をするのはやっぱり気持ちいい。にやける。これに尽きる気がします。
だらだら書きましたが、とにかくこの映画の世界に浸って、キャラたちの挙動をニヤニヤ見ているだけで幸せになれるアニメだなーと言うのがぼくの感想です。
男子寮のカルチェラタンに女子がわーっと来てあることをするシーン、女子に圧倒されながら協力していくんですが、あの中で恋とか芽生えるんだろうなーとか、芽生えても文通からなんだろうなー、なんて想像するだけでたまらんですね。
大好きな映画です。もう一回浸りに見に行きたいです。
なんかふっと、テーマは「恋」とか「ポジティブさ」よりも「保存と掃除」なんじゃないかと思ったり。
関連・「生徒諸君に寄せる」画像
作中で引用されてる宮沢賢治の詩。