たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

おれ今までより最低なことなんて知らないからこんなのへでもないぜ!「アゲイン!!」

アゲインって言ったら楳図かずお先生だよね
ってのはまあおいといて。
久保ミツロウ先生の「アゲイン!!」を読んだ第一感想は、女コエーでした。
まあ表紙の子も女の子ですからアレなんですが、作中でもキャラ同士の絡みで「女の業」とか言ってますし、相当意識してますね。さすが久保ミツロウ先生というかなんというか、ドロっとさせたら超一品ですね。
 
アゲイン!!」は、高校卒業の日に三年前に記憶そのままタイムスリップして入学時になってしまう、あらすじだけ書くとよくありそうな話です。
ところが、このタイムスリップ云々のくだりは割りとどうでもいいんですよ。
三年前に戻った、というのは「未来を知っている3年間をもう一度過ごす」という設定に残ってくるための前フリで、実際は高校生活の人間関係のドロドロ加減を描いています。
 
主人公の金一郎は高校三年間友達もいない、見た目の怖さで避けられる、後ろ口を叩かれる、という「早く高校三年間終われ」タイプの少年。
うっ、おい、やめろ(傷口が開く
彼がもう一度高1入学式から始めるなんて拷問でしかないわけですが、・・・ここがこの作品の面白いところだと思うんですが、別にそこから友達増やしてもっかい幸せな日々を送ろうとしないんですよね。
まあ、どうせまたつまんない3年間だろと。達観しきっています。
サッカー部に入ろう!とか、彼女をつくろう!とか、友達を増やそう!とか、ないです。皆無。
 
だけど「つまんない」のはいやだしなあ、一人かあ・・・と思っていた彼の目に飛び込んだのが、三年前も見たこれなんです。

一人応援団。
「今時応援団とかナイよね」俺も三年前はそう思っていた。
そうなんだよ。
卒業して3年たって、失った時にハッと気づくんだよ。あの時の、熱意を。努力を。大切なものを。
みんなそうやって大きくなるんだよ・・・と言いつつ、その失ったものが目の前にある。
ときたらもね。ちょっかい出すでしょ。面白いもん。
 
彼は別に応援団に興味があったわけじゃないです。
ヒロインの団長に惚れたわけでもないです。
ただ、みんなから後ろ指さされ、笑われ、バカにされながらも全身全霊で応援をする彼女の姿にクるものがあったんです。
人はそれを感動と名づけましたよ。
 
団長は超堅物です。超超頑固です。
主人公同様、読んでいて「いや言いたいこと分かるけど、頭カタすぎじゃねーの?」って思わされます。
けれども色々あるんです。その色々が今後描かれていくでしょうが、要因の一つは一巻でも見ることができます。
そここそが「女コエー」なところです。
性差を意識するな、というのは久保ミツロウ作品ではムリだと悟りました。だってそもそも「女応援団」という設定の時点で、女性であることがことさら強調されちゃいますもん。
そこに加えて、女子生徒同士の諍いが絡んで、いやあもう面倒でならない。
 
主人公が三年前からやってきた、という設定はこのへんで生きてきます。
ようするに精神年齢的には3年間全員より上。高校生活で今後みんながどうなるかも、全部知っているだけじゃなくて、心に余裕があります。
団長は一応タイムスリップしてきたことを知らないので主人公の先輩。でもいっぱいいっぱい過ぎるんですよ、頭が固いんじゃなくて。いや、かたいけどさ。
限界で張り詰めて必死になっているから、頑として譲らない。他人に無視されても笑われてもけなされても振り向かない。
それが強さかというと、弱さでもあります。余裕が本当にないんです。
でも主人公は余裕があります。なんせ「おまけの3年間」ですもん。一回クリア済みですもん。まあ一周目は散々だったけどね!
 
この作品の英断は、タイムスリップしたのが主人公だけじゃない、もう一人いた、ということだと思います。

もう一人のタイムスリップしちゃった、同じく高校1年生のアキちゃん。
最高の3年間を過ごした後に、タイムスリップで最低の状態になりそうな子です。
主人公が「最低な3年間」を過ごした後にタイムスリップして「これ以下なんてねーよ」くらいに開き直っていたのと全然逆なんですよ。
色々しくじって、一年生時点でクラスの女子がみんな無視するという困った有様。あ、アキちゃん・・・。
とはいえ彼女も心に余裕があります。3年間生きてますから。
タイムスリップしちゃったもの同士、主人公とアキは仲良く・・・ならないけどね。
主人公の「じゃあ面白いことしてやろうじゃねえか」という流れに巻き込まれ、気づいたら味方になりますアキちゃん。好みです。
まあ、主人公が団長を見て動いちゃうのがバカなのと同じで、アキちゃんもバカなんですよ。裏表なくてまっすぐに突っ込んでっちゃう。好みです。
正義感が強いと言うか、馬鹿正直というか、この作品の中ではわりとフラットでありながらも良心的で、主人公に唯一対等な立場でいられる子です。好みです。
好みです。いやほんとかわいいよ。
 
かなーりまっすぐで、人間関係のドロドロを描きながらも大逆転してくれそうな期待ができる青春譚。
・・・まあまだわからないですが、今より悪化はしないでしょう多分。
熱くなる話なんですが、人によっては心にダメージを受ける人もいる作品かもしれません。ぼくとか。
高校ねえ・・・高校かあ・・・(色々蘇る
それにしても応援団かー。

3.3.7ビョーシ!!(1) (講談社漫画文庫 く 4-1)
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久保ミツロウ先生の応援団マンガといえば「3・3・7ビョーシ!!」がありますが、何かを「応援」するってのは人の心を揺さぶるもんですよね。
アゲイン!!」の主人公は「応援団で応援したい」なんて全然思ってないですが、少なくとも感動はしたんだもの。彼のひねくれた心がスパイラルしながらプラスのベクトルに向かうのなら、それは絶対面白いことになるに違いないさ。