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さわ子から見た、もう一つの空「劇場版けいおん!」感想その2

あの時きらめいていた光はどこまでもどこまでも眩しくて。「劇場版けいおん!」感想その1 - たまごまごごはん
その1の続きです。
 
 
 
 

●さわ子インロンドン●

さわちゃんは今回ちょいちょいと出てきます。
メイン、ではないです。圧倒的に出番は少ない。
けれど実はこの作品、さわ子にはじまりさわ子に終わってるんです。
 
最初の偽「音楽性の違い」ごっこは、さわ子たちが後輩に贈るために作った歌を録音したものでした。
(ニセ「音楽性の違い」ごっこは、けいおん!ライブでも使われたネタ。)
後半、梓のために曲を作るシーンの前で、例の色紙を見つめているさわ子のカットが入ります。
これを高橋風子が企画しているシーンも挿入されているので、見ている側としてはもう泣きそうです。風子出た瞬間からやばかったけどまだ我慢。
 
軸になっているのは唯と梓のつながりなんですが、さらにその上でさわ子が軸になっています。
なにげに複雑な構造しているんですが、大人になっていればいるほどそう感じないんじゃないかな、とは思いました。
言葉で説明できない「わかるー」なんですよ。
 
さわ子は、さっくりとロンドンについて来ます。
その前には国際電話かけてますし。
さらっとは言っていますがこれすごいことですよ。律は「大人すげー」とはいうけど、大人からみたほうが「さわ子すげー」ですよ。
つまりなんだ、そんだけ気になっていたってことじゃないですか。
多分ライブハウスの仲間に聞いて、駆けつけたと。ロンドンで演奏する彼女たちのために。
マイルが余ったから? まさかそれだけで卒業前の忙しい時期に来ないよ。
 

●さわ子の見ていた場所●

後半、教室でのライブシーン(「Utauyo!MIRACLE」のアレ。ただしアニメOPは「放課後ティータイムの曲ではない」ので、演奏はしない)は、先輩の金谷ヒデユキが演じる先生に一度禁止はされるものの、早朝ならいいんじゃないか、と生徒側にさわ子が回ります。
これすごい苦しいシーンだと思うんです、ギャグタッチだけど。
大人であるということは秩序を保つこと。だから特別扱いはよくはない。わかってる。
けれども、どうしてもやらせてあげたい。
どうしても。どうしてもやらせてあげたいんだ。
 
それが最初のデスデビルごっこにつながってくるんだもんなー、ずるいよなー。
先生に叱られていた、幼き日のさわ子のあの悔しそうな顔。これもうほんと劇場で見て!
それがあってこその、決断でした。なんとかやらせてあげたい。
 
個人的には感情はこのさわ子の感覚にもあったんですが、先輩の掘込先生側にも行っていました。
掘込先生だって、別に四角四面で「何もかもやめさせたい」わけじゃないんです。
さわ子と同じ、できるならやらせたいけど、自分は立場として秩序を保たねばならない。
言わねばいけない。
これはしんどいことです。放任のほうが楽だもん。
しかしさわ子の必死の説得、画策の両方を受け止めた上で、黙認。
この流れ、たまらなく好きだなあ。
 
唯たちがね、梓に曲を送るじゃないですか。
同じなんですよ。
さわ子は卒業する子達になにかあげたい。
先生としてというのもあるけど、先生もまたHTTの一員であり、一緒にキラキラの瞬間を味わっている。
ただし、先生だから一緒に駆け抜けることはできない。
唯は「梓のために」と必死になります。打算なんてありません、ただ「やってあげたい」の一念。
さわちゃんも同じ。「やってあげたい」。
卒業式で一番辛く悲しく泣いたのはさわ子なんだろうなあ、とアニメ版二期最終回を思い出します。
 

●キラキラとかがやくもの●


卒業する4人は、本人達は気づいていないくらいの眩しい光の中にいます。
無論、それは彼女たちが頑張ってきた成果。見えない所で努力すら楽しんできた彼女たちの蓄積。
これが眩しかったと感じるのは、大人になってから。渦中にいるときはわからない。
 
さわ子は、ちょうどその位置です。
今唯たちは、梓は、そのキラキラの中にいる。それを邪魔することはしない。道化にはなるけどエッセンスの一つ。
ただし、その枠は守る。背中は押す。
前に進め、と言う。
自分たちがキラキラの渦中にいた瞬間の幸福を知っているから。キラキラしている彼女たちに「もっとキラキラしろ!」と言う。
もちろん、唯達は進む。どんどん進む。
 
一人残される梓の寂しさは尋常なものではありませんが、彼女に次の「未来の今」のキラキラが訪れるのも知っています。
ぼくらも知っているけれども。高校生編のマンガね!
とはいえマンガが4巻完結したときはやっぱりハラハラしましたとも。梓と同じでしたとも。
でもでも。今高校生編を読んでいるように、さわ子には分かっている。
 
HTTがロンドンに行ったのも、卒業前にライブをやったのも、彼女達なりの行き当たりばったりなキラキラです。
本当に行き当たりばったりで、計画性とかはあまりないんですが、大きな差が生まれるとしたら「動くか」「動かないか」です。
さわ子の仕事は一つ。「動け!」って言うこと。
ロンドンでさわ子が飛び込んでくるシーンは本当に格好良かったです。
しかも現実的には大したことじゃない部分(シールドをさすかささないか)なんですが、テンパってる彼女たちにしてみたら「うごく?うごかない?」の大事件だったところです。
このへんがワールドワイドなのに、部室の中レベルないいところ。そして、その規模についてもさわ子はよーくわかってる。
 
勝手な類推ですが、さわ子は唯タイプだったんだと放映時に考えていました。
イコールではないけど、似た立ち位置、ですかね。
常に楽しいことを探して、楽しんでいた。いっつも輝いてた。

梓にとっても、さわ子にとっても、唯の存在は特別なんだと思います。

唯は「けいおん!」の世界のシンボルだと思うんです。唯が「けいおん!」という作品をがっちり牽引してくれているので、そこは忘れないようにしたいなと。それに対して梓はストーリーテラーだと思っていまして。
(パンフレット、山田尚子監督インタビュー)

かつてはこの位置にいたのが、さわ子だったんじゃないかなあ。後輩に曲作ったの、さわちゃんなんじゃないかなあ。
類推ですけどね。
でもそうだったら、いいな。
 
基本的には一期・二期を総括するような構成と、全女子高生キャラの青春総ざらいな盛り込み方をしていましたが、このリアル女子高校生の世界にきっちり「さわ子の青春時代」を落とし込んでいるのが今作で一番ぐっときた、個人的好みのポイント。
すっごく眩しくて、瞬間ごとのキラキラしているからこそ、それを見ている「こっち側」のキャラが欲しいんですよ。
それがさわちゃんと、先輩の掘込先生。
そして、梓。年下になるけど「輝いている先輩」を見ているので彼女も同じ。
さわ子と同じ気持ちになったときに、「もう一回見に行こう」って気持ちになる。
何回か出てきた鳥は、もしかしたら唯達であると同時に、唯を見ているさわちゃんの心象風景なのかも。
 

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見所はいっぱいあるんです。
布団で赤面中野梓とか。
ムギインタビューとか。
4つの演奏シーンとか。
アキヨとか。
律・いちごの仲良さとか。
和さんのコスプレとか。
すっごい豪華な「青春」って食材が、豪華に並べられたバイキングみたいな作品でした。それぞれ緻密に計算されて、それこそ「いらないことなんて一つもない」ような。
逆に、すっごい肩の力抜いて「いいなー」って眺めることもできる。花を見るように。
「面白い!」「感動した!」というよりも「不思議な作品を見ているな・・・」という気持ちでいっぱいになったんだなあ。
もう一度味わいたいから、見に行きます。原稿終わったら。
 

いろいろ考えていたんですが、「高校生」にとことんこだわっているので、テレビ三期は難しいのかなーと感じたりしました。
やってほしいですけどね。高校生編も、大学生編も。
あまりにも映画が完璧にキラキラしてしまっていて、あれを超えるのは相当難しそう。だからこそ見たい、見たいけど。悩ましい!
とりあえずマンガ面白いので見続けます。特に梓編・・・めちゃくちゃ面白いんですがどうしよう。
 
ルート十二面体 【ネタバレ注意】劇場版けいおん!感想
個人的に面白かった感想。
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