たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

わざわざ遠回りなんてしなくてもいいけれど。

今日も「「メジャー」を生み出す」をネタに酒を飲んでみます。
今回は7章。
 

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もともとメジャーに対してはいいイメージを持っていなかったんです。
アンダーグラウンドと呼ばれるバンドやアーティストには、やはりメジャーの商業主義に対する不信感とかがいっぱいあって、
僕ら自身も同じ気持はありましたし、メジャーがやっていることとは違う路線を行きたいとも思っていました。

cinema staff」の辻友貴
これは中二病とかそういう言葉でくくれない、多くの人がプロになる際に必ず通る道な気なする。
 
難しいよね。
実際アーティスト・クリエイターを食いつぶす企業は存在するわけで。
ほいほい言葉に乗っていいんだろうか?
俺達はなんのために音楽を・小説を・マンガを・演劇をetc……やっているのか。
俺達には俺達の信条があって……。
 

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ここで「自分には信念がある。それを商業主義にもっていくなんてしねえ」といって、意気込みと共に生きていくのは、ぼくはありだと思う。
ただ、もったいないなあとは感じる。
だって、そんなすごいものなのに、例えばぼくの元にはこないもの。聞きたくても機会がなければ見つけられない。
 

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かつてはそれこそ「デビューするしかない」というのは大きかったと思います。どんなアーティストも。
とにかくCDを出してもらおう、レーベルに入ろう。
マンガや小説なら出版社からプロデビューしよう。
それしか道がなかった。
 
今は道がめちゃくちゃ多いよね。
 
インディーズレーベルでやりたいようにやるのもいいと思う。
同人でM3やコミケで売ったほうがもっと手っ取り早いとも思う。
(いまだにライブハウスいくと、無料CDみたいの配ってて大変だな〜って思うけど、ネット配布とかにしないのかな……?)
ニコニコやYouTubeで一気にガツーンとのし上がれる時代でもある。
ここはいいことだよなー。
 
そしてもちろん、メジャーデビューを目指すのも道。
ただ、一番の壁は「メジャーに出たら、今まで自由だった翅がもがれるのではないか」っていう恐怖だと思う。
 

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うちらのバンドはもともとアンダーグラウンドと言われるバンドやアーティストとすごく相性のいいシーンでやってきました。
でも自分たちにはポップな部分もあるので、『アンダーグラウンドを突き詰めてとことん戦えるか』というと限界がある。じゃあどうすればいいのか。
相当苦労してきていますし、今もまったく変わらずに苦労しています

ライブ会場で火を噴いて糞尿ぶちまけるのが信念で、それをやめろというならやってられねえ、とかいうのだったらまあ、ちかたないね。
漫画家だったら、どうしてもエログロに挑みたいとか。
どんなに上手くて天才でも、商業誌に載せられないものはある。
 
そこまで飛び抜けていたら、インディーズや同人でも突出すると思います。
(ただし、時間はかかる)
問題はそこまで飛び抜けない場合。
音楽の場合、「結構うまいとおもう」「でも別にアングラでもイロモノでもない」「ポップでやっていきたいけどメジャーは向いているのかわからない」
 

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この「中間層がいかに生き抜くか」問題はものすごく難しい。
どのジャンルにおいても。
メジャー一級の人はメジャーに儲ける。
カルト一級の人はカルトに儲ける。
では中間は?
 
今は二極化の時代。
売れるものは売れる。
売れないものは売りもしない。
テレビ番組に見たいものがない、なんて声があがる理由の一つがこれ。
 
辻友貴は、メジャーに出てよかった、と言います。
案外と、メジャーでも自分を理解してくれる大人はいる。
「そんな環境にいて、もともとメジャーに不信感を持っていた自分たちだからこそ、ここでできることがあるはず。僕らがメジャーでやることの意味がそこに出てくると思っているんです」
 

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彼が所属していた残響レコードの河野社長の話が面白い。

自分自身は遠回りしていましたけど、同じ苦労を若いヤツがやることはないと思うんです。
自分がつかんだことを早めに伝えて、若いヤツには近道してもらいたいと思っています

若いもんは苦労しろと言わない。
これスゴイ考え方だなーと思った。
 
一見すると、甘く見えるじゃないですか。
違うのな。
10代20代の時に、どれだけの人が社長の話を聴いて受け入れるだろうか?
多分その時期ほど、なかなか話なんて聞けないと思う。
人の意見に耳を傾ける人じゃないと一緒にはできず、去って行ってしまう。
そういう人は、レーベルとはどうやっても、信頼関係は結べない。
 
昔は選択肢が「デビューしてCD出して売る」しかなかったけど、今はもう選択肢がアホなほど多い。
「選択肢が増えた時代に昔みたいなやりかたは通用しないですよ」
「今はインディーズでセールスを達成できる、インディーズとメジャーの区別がない」
そこで道に迷わせるのは無駄でしか無い。
 

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そもそもメジャーってなんだろう?というのはこの本を読みながら思っていました。
単純に考えると「数」。
でもそうじゃない。
 
かつて→物を大量に確保し、全国に流通させる力。売れること。
今→ものは当たり前にある。細かい需要を掘り起こすことが重要視されている。
 
たとえばプリン。
たくさんのプリンを流通できるお店が「メジャー」だった。
でも今は、高級志向だったり、硬さが様々だったり、素材が違ったりするものも並んでいる方が喜ばれるようになった。
 
音楽やマンガや小説も同じだと考えると。
「何か流行に乗っかる」のがメジャーではなくて、「メジャーは作るもの」なんじゃないか?
もちろん、流行(プリンでいえば、焼きプリンととろとろプリンどっちが好まれるかなど)はおさえた上で。
自分の得意とする分野を理解した上で、時流の流れをキャッチするアンテナを立て、その2つをマッチングさせた時に、ヒットが出る。
そこまでが長い。
 

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「漫画家は30過ぎたら人柄」という言葉があった。
なーるほどなーーーーーーーーーーー。
 
若い頃は、勢いと体力と「才気」でなんとでもなる。
けど、色々な人と交流してインプットし続けていないと、空っぽになる。どんな天才でも空っぽになる。
怒りっぽい人では交流ができない。「彼にはアドバイスしたいな、この人と仕事したいな」と思われるような人柄を持っている人ほど長く続けられる、という話。
 
だよね。
編集さんだって「あの人いつもキレるからやりにくいんだよねー」みたいな話するでしょうし。
逆もそう。「あそこの編集ホント話聞かないから……」というのもあるはず。これじゃお互いいいものは作れない。
横のつながりも同じ。ちょっとアドバイスしたときに「がーっ!」となる人には、誰も話しかけてくれなくなる。
持ちつ持たれつ、困ったときはお互い様。年下に教えてあげることも大事。
バンドマンは特に、ここは気を使うでしょうね。
だって、嫌われたら対バン組んでもらえなくなるし……。
 

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多分この辻さんって人は、よくしらんけど話を聞く人なんだろうな。
年上の人のお小言を真摯に聞ける人なんだろうな。
 
「「メジャー」を生みだす」の本に載っているインタビューだけど、メジャーを生み出した人に聞いたというよりも、メジャーシーンに出た人をどう育てるかの話に見えた。
話を聞いてまっすぐ頑張れる人は伸びる。
超あったりまえの話だけど、これって、できない。
 

今まではやりたくなかったことでもやる覚悟が出てきました。
それも『やりたくないけどやります』ではなくて『やりたくないことをやるなら、それに乗っかってさらに面白いことを考えよう』とかんがえるようになっています。
そうしたらそれはもう、やりたくないことじゃなくなりますから。

人の話を聞いて、前向きに頑張るって、ロックではないんじゃない?
僕もそう思ってたんだけどねー。
「ロック」は「反抗」してないとロックではない、なんてこたない
「ロック」という箱を作り、表に出すところまでは教えてもらって、中に何を入れるかはその後じっくり考える。
その方が、今の濁流の中をちゃんと渡っていけるし、本当の意味でロックなのかもしれない。