「夢使い」のアニメ版とマンガ版
「夢使い」のアニメ版を見ました。
こちら公式サイト。
まったく原作とは別物なんですね。キャラだけ同じでストーリーや世界観、そしてテーマは完全オリジナルでした。そう思って見るとこれはこれで面白いです。元々植芝さんの絵柄と世界観があまりにもアニメに向いてないので、思い切って切り離したのは正解だと思います。和風古式の世界観を持った魔女っ子っぽい物と思って見れば楽しめます。ありえないほど原作では多かった小物もがんばって敷き詰めているのが好感持てました。古いのか新しいのかわからない微睡町雰囲気もいい。さすがマッドハウス。
キャラはとても魅力的。相変わらず関智一演じる金曜星橘一のロリコンっぷりは激しいｗ１３歳以上はおばさんと言い切る。美砂子さんの声が久川綾なので、カレイドスターのサラを彷彿とさせます。特に送信シーン。人民帽子をかぶった土曜星の茶川三時花は能登麻美子。４話から出てきてるのでそれ目当てに見るもよし。百合要素も強め。
ただ、原作とはあまりにもかけ離れてるので、原作ファンは「別の作品」と思って見ないとものすごく不満がたまるかも。グロテスクな武器がすべてカットされてるのがちょっと残念すぎるので。
まったく原作知らない人には、敷居が低いので植芝作品の入り口としてはいいかも。これで植芝マンガ読む人増えたらいいなあ。
改めて原作読み直しましたが、これどう考えても地上波で放送できるシロモノじゃないんだよなあ＾＾；エログロすぎて。
「夢使い」マンガ版敷居の高さ＋魅力を簡単にまとめてみる。
１、絵がまず不可解。
「ディスコミュニケーション」や「謎の彼女Ｘ」よりは大幅にパワーダウンしてますが、それでもぎっちりとありえない程書き込みがなされています。おもちゃ、お菓子、看板、古代文字、土器などの書き込みは変質的（最高級のほめ言葉）なほどで、あらん限りの愛と情熱をこめて脳のあらゆる引き出しからひっぱりだして詰め込んでるようです。ここまで脈略があるのかないのかわからないものを敷き詰めると、ものすごく心地よいのは、多くの人が脳みその中に少なからず持っているもの（ここでいえば夢か？）具象化だからでしょうか。植芝さんの一枚絵はマンガやイラストというより絵画に近い。無論アニメの持つ力が描くベクトルとは正反対です。
２、エロティックで倒錯した性描写が多い
具体的に言うと、女子校中学生が男の子になって女装した男の子と勃起したものをくっつけあう、というシーンがあります。かなりエロくて倒錯してます。それ以上のなんだか理解不能なレベルの倒錯的なシーンがものすごく多く、見ていて基準がなんだかわからなくなる空気が全編を覆っています。あくまでも「ＢＬ」「ロリ」という一般的な倒錯ではなくて、「性」本来のもつ本能的な部分。ロリコン＋ペドフィリア至上主義なので、一見だけするとヒく人もいるかもしれないですが、そこが植芝マジック、感覚をすべて物質化してしまっているのでイヤミはありません。とはいいつつ、かなり直接的なエロティシズムも追求していて、それがテーマの一つになっています。「性」「個」「夢」の境界線の謎。このへんは「ディスコミュニケーション」につながっていくのですがとりあえずそれは別の話。とりあえず、アンパンマンのドキンちゃんがちょっとかわいいと思ったことある人は読むべき。
３、身体感覚の物質化
残虐なシーンも多いのですが、それもすべて物質化されて無機的なので恐ろしさはありません。逆に物質と人間の感覚の境界線がかなり曖昧なので、あらゆる物がエロティックです。赤ちゃんの時にできた他者との境界線、男女の性別、「個」の境界線がワイヤーや球や鉱物でどろっどろに溶けてます。作者の中での身体感覚は、限りなく無機質なものに近いのでしょうか？物体がすべて肉体をもっているクローネンバーグの対極にいるような気がします。キリコの描く絵に近いかも。
４、日本神話へのオマージュ
自分もあんまり知らないのですが、かなりナチュラルに日本神話の用語が絡んできます。「夢使い」本編ではあまりにナチュラルすぎて通り過ぎちゃうのですが、かなり知識量がないと理解し切れません。ユダヤ教やヒンズー教もごったまぜです。そういうのを一個ずつ調べていくのも面白いです。
アニメからでもいいので少しずつでも植芝作品の空前絶後な世界観を多くの人に見てもらいたいなあと思います。個人的には
「ディスコミュニケーション」「謎の彼女Ｘ」→「夢使い」→「ディスコミ精霊編」→「ディスコミ学園編」
で読むとすんなり入り･･･すんなりはいかないです。けどそこがいい。
ディスコミはすごく書きたいこといっぱいですがまた別に。
北大路魯山人は４百何回か混ぜた納豆がおいしいと言ったそうで。混ぜれば混ぜるほど甘くなるとか。
信仰心って面白いなあ。もうちょっと融通利かないものでしょうか。ってのは失礼か。
返品不可みたいです。
