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サディスティックな少女はお好き?「CYNTHIA_THE_MISSION」4巻

今日の買い物の大本命「CYNTHIA THE_MISSION」4巻。3巻がわりと男くさい感じだったのですが、4巻は女が暴力を払い払われでシンシア節全開。こうでなきゃ!というわけで鼻血をブーブー吹きながら読んでおります。

関連記事・そこに暴力があればいい。「シンシア ザ ミッション」
とにかく少女たちが暴力を振るったり振るわれたりするのが見たい人は即効で買いましょう。「美女で野獣」や「エアマスター」の暴力っぷりも最高なのですが、こっちはとにかく痛い。これでもかというくらい作者の高遠るい先生が少女達を徹底的に痛めつけます。
「そんな痛いマンガいやや!」と思われる純真な方も多いと思いますが、これがまた不思議に楽しいんだな。
今回はありえないくらいずたずたのボロボロになるまで「作者に」痛めつけられているブリギットを中心に、少女と暴力のコンビネーションについて書いてみようと思います。
 

●虐げられるために生まれた少女像「ブリギット・マクラウド」●


以前も紹介した、国際指名手配のテロリスト少女、ブリギット・マクラウド
この巻では彼女がとことんまで暴力を振るい、とことんまで虐げられます。
ことは何年か前のロンドン。主人公シンシアの姉と、ブリギットの狙っていた暗殺すべき犯人がかぶっていたことからはじまるのですが、
 
圧倒的な力の差、を表す絵、なはずなんだけど。
メイド姿ということもあいまって、異常なまでにその攻撃されている姿にフェティッシュさがあふれています。加えて腕を失ったブリギットを姉が寵愛し、ブリギットもその暴力的な彼女の愛人になってしまうのだから、高遠るい先生の「してやったり」な笑みを思いかべずにはいられません。
いやね、ブリギットは強いんですよ。すごいテロリストだし。だけど、強いからこそ、彼女は痛められまくるのです。
ここからブリギット被虐伝説がはじまります。

襲ったはいいものの反撃されて、内部破裂で気管を破かれるブリギット。もう勝ち負けのレベルじゃなくてイジメの世界。泣き虫サクラ的に言うと陵辱。
この後、殺されるならまだいいんです。胸部中央や肋間神経の神経の集中しているところを徹底的にナイフで突かれ、痛さの限界を超えるほどに虐げられます。モウ見ていて「殺してあげて!」と言いたくなるくらい。
しかし、暴力を振るう側の弑・四方犠の残虐っぷりもまた比ではなく…気持ちいいんだなこれが。いや、自分は全然サディストじゃないし、むしろこのシーン見ていて目を覆いたくなるチキンさんなんですが、「弑・四方犠なら仕方ないよなあ」という説得力が虐げる側と虐げられる側にあふれているんですよね。
間違いなく、弑・四方犠の攻撃性は作者の愛情だと思いました。

もうどっちが襲ってきたのかわからない。あまりにも一方的、あまりにも残虐。
しかし、ここでブリギット被虐伝説は終わらない。

こんな状態でも働かされます。
何がどうなっているのかというと、それは読んでのお楽しみ。

そして、主人公シンシアに向かっていきます。相打ちで。
様々なキャラというキャラから虐げられている彼女ですが、自分で自分を虐げるまでになるんだからもう大変。ここまで虐げられるために生まれた女性キャラはなかなかいないのではないでしょうか。
高遠るい先生が「暴力」をいかに描くかが、この「CYNTHIA THE_MISSION」の最高の面白さですが、その容赦ない暴力の完成形が、攻撃性と被虐性を突き詰めたこのブリギットというキャラなのではないかと思います。
 
こんなにも痛々しいのに読者には「うおおお面白れえ…」と感じさせるパワーが秘められたキャラでもあります。
いやね、本当に痛そうなのよ。この作者は板垣恵介先生信者で、作風や男性キャラがもうまんま板垣なんですが、それを少女に置き換えるとこんなにも痛いのか!ってくらいに。あるいはいじめっぷりのねちっこさだけで言うと上かもしれません。そこにぐわっと感情を起こさせるパワーがあるのは、少女に対する嫌悪ではなく、愛情があるから。執拗なまでに愛しているからこんなにもいじめてしまうんだろうナと思わせられてしまうのです。「とりあえずグロくしておけばいいんじゃないの?」という空気ではなく、丹精こめて育てられた暴力なんです。
また、ただ身体を痛めつけられるだけではありません。心も隅から隅まで作者に食らい尽くされます。ここまで突き詰めて攻撃されていくと、もはや読んでいて一緒に奪いつくされる&奪いつくす快感がわいてくるから人間っておっかないネ。
なにやらゆがんだ感情みたいですが、そうでもないのは虐げられる側がまた虐げる力を持っているから。読者はただその暴力に身をゆだねるだけで、心の奥からの楽しさに飲み込まれますヨ。
 

●主人公シンシアの被虐性●

もう一人、徹底的にいたぶられるキャラに、シンシアがいます。
ハゲてる時点で作者の、愛情と攻撃性が見て取れますネ。
とてーも大事にされているキャラとして描かれてはいるんです。だからこそ、

いじめられる。暴力的な部分の結晶みたいに生々しいやんなあほんと。
だけど妙に愛しいんだそれが。

少年誌(?)で腸が出ちゃいそうな少女を描くマンガなんてはじめて見ました。
以前も書いたように、1から3巻ではほぼ「最強」クラスのシンシアですが、被虐キャラとしてもピカイチの描かれ方をしています。
4巻はそれ以上にブリギットの被虐っぷりが異常だったのであまり目立たないですが、それでも強いゆえに痛めつけられまくるシンシアさんなのです。
シンシアも「いじめられるため」に生まれたようなキャラ。今回は少し成長したようですが、それでも愛を持っていじめられ続けるでしょう。楽しみです。

こういう感じで。
 

●少女が描く暴力の弧はあまりにも美しい●

この作品の爽快感の一つは、少女達が描く美しすぎる「弧」にあると思いました。

スパーン!

スパーン!

ヂャッ!
…ヂャッ?って何の音?
虐げられるのもとことんですが、暴力を振るう側もとことん美しく描かれます。そして、その暴力はおおげさなほどに大振りで、きれいな弧を描きます。
それは、作者が描く暴力の美学と、エンタテイメントとしての絵柄の絶妙なバランスの産物。
この美しい暴力線(←今考えた)だけを追って見ても、存分に楽しめる作りになっています。
男達もこの暴力線を持っていますが、比較的荒々しくて無骨だったりします。しかし少女達の暴力線は、流れるように、舞うように美しく、派手に描かれています。
地味な攻撃なんて、ありえないんです。だって、「力」じゃなくて「暴力」なんだから。
 

●暴力は、極限を超えたときが面白い●

他の格闘マンガでもそうですが、格闘から一線を越えて「暴力」になるには、限界を突破する必要があります。それはある意味体験できない(つか体験してたら死ぬ)ファンタジーなわけですが、ファンタジーなんだから行き着くところまで追求するのが快感だったりします。
3巻は比較的「板垣イズム」という言語の土台の上にあったので、板垣イズムを愛する人間のための臆面もないラブレターな側面もありました。今回もその異端なラブレターっぷりを発揮しつつも、「シンシアザミッション節」を身に着けてさらに加速した感じがあります。これが新しい「高遠イズム」なんでしょうね。同人界で「異端」と呼ばれたその速度で。
男の振るう「暴力」も面白いのですが、このマンガでは圧倒的に「少女の暴力」が燦然と輝いています。それは「少女」という存在が、攻撃と被虐の両面を持ち合わせたものとしてそこにあるから、なのではないかと思いました。
「暴力」は「暴力」を呼び、また新しい形の「暴力」が現在連載されています。これでいて新しい方向へ向かっていくのだからワクワクして鼻血が出ますよほんとにもう。
やはり少女には暴力さえあればいい。快楽に身を任せたい人におすすめ。
 
にしても、TYPE-MOON武内崇先生が帯書いてるあたり、分かってるなあというかなんというか。客層のハートをがっちりゲットだゼ。

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