たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「苺ましまろ」の1シーンから考える、読者側のマンガの楽しみ方


以前の「『苺ましまろ』美羽の横っ腹をどう捉えるか問題」とオタクの視点にいただいたコメントが非常に面白い物が多かったので、すべては載せられませんがちょっとご紹介いたします。

あらすじ。
バレンタインデーで大騒ぎする面々。しかし美羽は「横っ腹が痛い」と言って動かない。無視されたまま最後まで至り、一回ちょっと動いただけでセリフもなく微動だにしなかった。それに対してたまごまごは不思議な感覚に陥り、そこに何か謎があるのではないかと考えていたところ、解読してみるとノストラダムスの予言が隠されていたことに気づいた。

 

●基本的にネタだろう、派●

まず、「生理はちがうかな?」派。

m
『特に意味なし説のほうが楽しそうだなと思います。
女性特有のアレだったらあんなポーズは取らないでしょうし(あんな体勢で居ると確実に血が下着の外に漏れ出してしまうので…作者にその認識があればの話ですが)。』
 
ミーシュ
『「横っ腹が痛い」のって食べた後すぐ運動したり動きすぎた後によくありますよね。
そういう感じorシュールに意味なしかなーと思います
女性のアレで「横腹」が痛いという感覚/表現はないかなというのと(普通「下腹」かなと)、そういう状態の子があのポーズを取るのは・・・ちょっと想像しただけで怖いかもー』
 
haikro
『自分もその場合下腹と書くと思います
あえてお腹が痛いではなく、横っ腹が痛いという横というところがポイントだと思う。』
 
ぼんくら
『女性特有のアレって、横っ腹にくるものなんでしょうか?イメージ的にヘソの下あたりにくるものだと思っているのですが。』


確かに生理中にこのポーズをとったらスプラッタなことになりそうですね。横腹だし、生理の線はとりあえずなさそうです。
 
次に、「動かないシュールオチ派」

pa
『深読みしようとするのが不思議な感じです。純粋にギャグと受け止めてました。
美羽は必ず何かしでかすだろうと思って読んでたから、最後のコマでも動かなかったのに面食らって笑いましたよ。
ちょww美羽動かずに終わったwみたいな。普通にオチてると思ってたんですが…』
 
mome
『僕はこの回、ラーメンズのコントとおなじ匂いをかんじます。ちょっと違うかな…』
 
niki
『私の場合、作者がダウンタウン大好きっ子ってことで普通にギャグとしてとらえましたけどね。
こういうネタ、ダウンタウンがコントで実際にやりそうじゃないですか?』

ラーメンズダウンタウンのネタっぽい、というのは面白いなーと思いました。ちょっと知り合いとメッセで話していたんですが、小林賢太郎っぽいよね、というのは納得。あと、あえていえば松ちゃん?
緻密に計画されたネタなんですよねえ。美羽の動きって。その場のハイテンションで突っ切る既存のギャグマンガキャラとは一線を画している気がします。
 

普通に読むと意味不明だけどやっぱりあれもシュールギャグなんだろうか。
発展途上!
 
コメント欄にもありますが私もギャグと感じました。
(ゴルゴ31)
  
おかスィー
『俺はやはりギャグだと思いますね。シュールギャグだし最初っから何もしないのがシュール的だと思いますね。まぁ俺もあの格好は気にしていたが…だだ生理でわないこと願うのは俺だけか?』

先ほどのラーメンズの話もそうですが「シュールギャグ」として新しいタイプのネタだと受け入れやすい人にはさらっと楽しめる幅が持てそうです。逆に「ぼけとツッコミがないとわかりずらい」という人だと立ち止まって「ううむ?」と悩みそう。自分とか。このへんは読んでいるもの見ているものの幅やベクトルで、受け取り方がまた変わってきそうですね。
 

●ちょっと意味があるのではないかな?派●

YU
『僕はその次の話の「片腹痛い!!」に引っかかっているのだと思います。このセリフは美羽が“茉莉とアナのラブラブな状態”を嘲笑するために使ったものです。つまり伸恵、千佳、茉莉、アナの4人がバレンタインデーという行事でのろけまくっていることに対し、美羽は「横っ腹が痛い」→「片腹痛い」と終始ツッコミを入れているのだと思われます。』

深い!この読み取りはものすごく面白いと思い!

episode50「Friends or Lovers」より
美羽が動かず「痛い」といっているのが49話なので、意図的に重ね合わせて考えると説得力ありますね。
 

眞尋か手下
『最初に読んだ時は本当に横っ腹が痛いというのを、普段の行いの悪さから誰も本気にしてくれなかったんだなぁ。とだけ思いました。次の話では平然としていて美羽が自分から話題にもしていなかったので、あの5人の中では無かった事になっていたんだぁ、と美羽の狼少年っぷりに笑っていたのですが・・・。』

美羽が本当に痛かったかどうかはまあ定かではないとして、気にしていたのがまつりちゃんだけなんですよね。その「相手にされなさっぷり」と、次の回でも「誰も覚えていない」というあたり、「狼少年」とは言いえて妙。

まむる
『自分は単にチョコ作ってるときにつまみ食いしすぎて腹壊したんだと解釈してました。』
 
21:22 「美羽横っ腹事変」、千佳とチョコ作ったときにつまみ食いしすぎたと推理

あっはっは、これ美羽だからこそありそうです。千佳と一緒にチョコ作ってた、っていう事実があるのが面白いですよね。んじゃあなぜ、となると「まずい」か「食いすぎ」か。

伸恵の気を惹きたい&美羽が動かない回としての演出、だと見てました。
真・業魔殿書庫

伸恵の気を惹きたい、というのは自分も思いました。美羽はマイペースな割りに非常に嫉妬深い(といっても子供っぽい意味で)ので、人が伸恵と仲良くしているととても焦れるんですよね。だからこのバレンタインという特別に気にかかる瞬間で、あえて動かないことで「伸恵がちょっと反応してほしい」というのはあるんじゃないかなー、なんて思いました。後半の演出については、後述。
 

ゼンザイ
『上記の方々が出されてるように、美羽が動かないというネタだとは思うんですが。
あえて美羽の気持ちを考えてみると。腹が痛いんなら家で寝ときゃいいんだけど、それでもここに遊びに来る方を選ぶような、自分の家なみに気をつかわないくつろげる場所(いや、彼女はどこでも同じか?まぁいいや)と認識してるって事かと思いました。』

あー、確かに。別にこの家に、腹痛いのに来る必要ないですよね。でもここにきてしまう。もしかしたら「自分の家なみ」どころか「ここにいたい」という彼女の思いが隠されているのかもしれません。
 

●美羽、いらない子(という扱いで存在感を高めている)派●

yomi
『みんな色々考えてるんですね。
僕は別に動かない面白さもないし、意味もないだろとスルーしてました。
ただあえてちょっと考えると、コメントにもありますけど美羽抜きで作ってみたかったんじゃないかと。
5巻の美羽は、最後の諺といいダレからも相手にされない(サタケにも)話といい、「要らない子」 というポジションが与えられてる(テーマ)ようなので、バレンタインのあれもその流れなんじゃないでしょうか。』
 
ks
『あれは普通にマジで痛くて座ってるだけで、美羽本人には特に何の考えも無いと思います。ただそれによって逆に美羽の存在感が際立ってますね。作者がそれを狙って書いたのなら凄いと思います。
お供え物みたいに置いてあるチョコも笑えました。
後、一コマだけ体勢を変えている事についてですが、あれはずっと同じ姿勢で座ってたから足が痺れて来たんじゃないでしょうか。そんな経験が自分にあるもので、「細けぇw」と思ったんですがどうでしょう。』
 
10:22 私も美羽のアレはただ単に横っ腹痛いだけだと思ってました。↓
10:23 いつも動く美羽が動かないとこういう風に話が進むんだなーと思って。
 
LoveShine
『わざと「女子が4人集まってふわふわしている会話」にして、それをそういう話にそぐわない奴が見てるのが面白いというシチュエーションコメディで僕としてはFAなんですが。普段は美羽がぶっこわすんだけど、それをやらないのがギャグ。その前の話(ノゲイラの回)のウルトラハイテンションとの緩急とかも狙ってたんじゃない?
結果僕は人生変わるぐらい笑いましたけどね。』


episode45「ひとり」より。
メンツ全員に無視され、ジョンにも無視され、サタケ(犬)にも相手にされない美羽。
冷静に見ると泣けてくるシチュエーションではありますが「でも美羽だしなあ」と笑えると勝ち、という気がする回です。逆に言うと、そういうのが許される空間だからこその安心感があるんですよね、このマンガ。
あえて「無視してもOKな子」というのを作者が意図しているのならば、そういう役どころを押し付けられるほどの安定感ある関係を描くテクニックにもなっているのかもしれません。

episode51「ことわざ」より。
これもまた、ひどいねw
「でも美羽だからなあ」と笑えるとやっぱり勝ち。ここで美羽というキャラクターを個々がどうとらえているかでこのコマの楽しみ方はぐっと変わってきそうです。

radar
たまごまごさんの”オタク的ぬるま湯”と言う指摘でよりハッキリ考えが固まりました。
自分の考えだと、作者のばらスィ〜がその”オタク的ぬるま湯”感覚で、「今回は美羽動かすのメンドイなぁ。今回は黙ってて貰おう」みたいなノリであのような表現にしたんじゃないかと。
連載から今までね出る度に面白おかしく、とてもウザイ騒動を起こしてくれる美羽なので、休肝日ならぬ休美羽日みたいな感じで。

美羽は人によって凄くイメージが変わるキャラだと思います。自分はオタで♂ですが、美羽はましまろにとって欠かせないキャラだと常々思ってました。一番好きなのは千佳なのですが。
そして、俺の買ってくるましまろを読む姉と妹の反応は全く逆です。姉はカワイイと言い、妹はウザイと言います。
大手情報サイトのEARL.BOXさんも、発売日の感想で美羽の静かな話について、
”” なんか凄い理想の苺ましまろなんですが個人的に。あれだよなタマにでいいんだよな。5回に1回くらいのゲストでいいんじゃねこの娘とか(酷 ””
と、仰っていました。
それを聞いて、なるほどと自分も思いました。確かに、美羽のいないひたすらゆるい話は、”ましまろ”の語感にもぴったりであると思います。

あの話についての作者の意図はわかりませんが、計ってか計らずか苺ましまろを良くも悪くも形作っている美羽を強く前に出さないことで、逆に美羽の存在を強く感じさせて苺ましまろのある一面をファンに提起したような形なのだと思います』

ぬるま湯をひっかきまわすのは、いつも美羽。それに対して「ひっかきまわすのも含めてぬるま湯だよねー」と思うか、「ひっかきまわすのはたまにでいいんじゃない?」と思うかは人それぞれ。どちらも面白いですよネ。しかしどちらにしても、美羽の存在がひときわ大きなものであるのもまた確か。今回のことで美羽が逆に好きになった人も多いのではないでしょうか。
 

●作者の新しい試み派●

ネムラナイバカ
『連載時に思ったのは、この回は、「作者が美羽を動かさずにどんな話が出来るのか試してみた実験的な回」だということです。
それが成功しているかどうかはともかく、この回があることで、連載にメリハリが付いたとは言えるのではないでしょうか。』
 
sirota
『自分も「美羽絡み無しだとどうなるのか」っていう作者の実験かと思ってました。最後までスルーされてましたしね。
「女性特有のアレ」っての全く考えもしなかったけど、なるほどありそうですねw こういう何気ないテーマでも人の読み取り方が違うってのは面白いですね。』
 
あえて美羽を出さない回を設けたんだけど、ただいないだけじゃつまらないので変なかっこうさせてみよう…だと思っていました
MOON CHRONICLE
 

『私は作者が「よし、たまには美羽に頼らずに描いてみっか」とか考えたんだろうなー、って簡単に受け取ってました。』
 
理解しようとしたドロップアウター、いまここに。
結局、あれは「あいつが居なくても動くよ」ということかなぁ。
マンガ☆ライフ
 
sirota
『自分も「美羽絡み無しだとどうなるのか」っていう作者の実験かと思ってました。最後までスルーされてましたしね。
「女性特有のアレ」っての全く考えもしなかったけど、なるほどありそうですねw こういう何気ないテーマでも人の読み取り方が違うってのは面白いですね。』

このマンガ、とにかく美羽が「動く」ことで形を成している感が強かったマンガでもあります。いつも渦の中心なんですよね。それが動かない、というのはそれだけで笑いになるし、同時に「動かさないことでどういう事態が生じるのか」という実験にもなりえます。
おそらく、ですけど、作者にとっても美羽はおいしい上に扱いやすいキャラだと思いますし、この作品のキモにもなっているんですよネ。「それなしだとどうなるか?」を狙いつつ、動かないというネタにした、という考えは非常に面白いなあと思いました。納得。
 

●作者と読者の関係を示した、そんな回●

ひときわ大きくうなづいたのが、こちらの意見。

読者側にツッコミを与える余地を作るという試み…じゃないか。
カトゆー家断絶

なるほど!
 
創作物の楽しみ方は確かに「読者にゆだねられる」ものと、「作家が演出する」ものがあると思います。
今回の「苺ましまろ」、その双方がすごくいいバランスで入ってきたのだとすれば、これは面白い。あえて考えることができるような絵づくりをしている、と考えたら、いろいろな楽しみ方が一気にぐっと広がって見えてきます。

mashimaro
『深読みももちろんできると思います。キャラクターが五人もいるのですから、そこにはおのずと関係性やストーリーが生まれますので、逆に言えばストーリーが発生しないわけがありません。ネタとしてのシュールさに加えて、そういった今までの関係性などからストーリーを含ませることもできるというのが私の見方です。これはネタである、いや何か意味がある、と分けるのではなく、そのどちらでもあるという見方です。
・何らかの原因があり事実腹が痛い。
・美羽の何らかのボケでありひたすらツッコミ、もしくは気に掛けてくれるのを待っている。
・それ以外の何らかの理由で腹が痛い振りをしている。
と大まかにこの三つに分ける事ができると思います。作品内で理由の言及が無い限り、これらから更に想像を働かせることによって幾つもの意味を探すことができます。言い替えれば正解は無いという事になりますから、百人が百人とも好きな解釈を付けることができそうです。』

作品に「これしかない」という解答が提示されてしまい、それ以外を考える余地がなくなることもあります。もちろんそれは描写が秀逸ということもいえますが、逆に今回のようにシュールで謎を残したまま終わることで受け取り方も幅が出てきます。どちらが正解、ではなく、「どっちでも楽しめるよ」というのは感じますよネ。

10:25 あとこの漫画は百合とくくるのは難しい気もします。でもかわいいからいいんです!

苺ましまろは百合だと思う」という自分の暴言に対して。はい、そうです、難しいと思います。
でも個人的には「百合だよネ」と考えたほうが面白いなあと思っているので、百合ってことにします。自分勝手でスイマセン。これをよしとする人もいれば「絶対違う」という人もいるでしょうが、このへんも作者から投げかけられたボールのさまざまな受け取り方、と考えたならば楽しみの幅の一つになるかな、と思いました。
 

●作品の一点について、いろいろな角度から話すことの楽しさ●

daibu2
『ぬるま湯はオタク特有な物かもしれませんが留まるのを知らない妄想力もオタク特有の物です。
もしかしたらそれを考えに含めたギャグパートでは?』
 
私もその部分は気になった。
他の話で暴れ回る美羽がこの話だけ一言しか話さない。
何か裏がありそうで、実は全くもって何もないような、いろいろ想像するだけでおもしろかった。
(さざみ・ぞーん)

この謎については答えなんて出るわけはないんですが、いろいろな人のいろいろな視点を見せていただくことで100倍楽しめるようになりました。特に個人的には「作者とのキャッチボール」という観点は新鮮でした。なんだかそういう楽しませ方をしてもらっていると思ったら…うれしいじゃないですか!
今回、ものすごくたくさんのご意見を頂き、本当に自分は楽しかった!だって、マンガのたかが数ページで、これだけたくさんの視点が出て、それら一つ一つが「なるほどー、そう見えるのかー」と思わされると、今まで見えていなかった楽しみ方が増えますものね。
作者に解答を聞くのではなく、いろいろな想像をして楽しむのも、また一つのネタとしてゲラゲラ笑うのも本当に楽しいものです。
これでまた、「苺ましまろ」がさらに楽しめそうな気がします。美羽がさらにかわいらしく見えてくる気がします。
色々なマンガでこういう視点もってのぞめば、楽しみは何倍にもふくれあがりそうですよネ。
 
苺ましまろ 5 (電撃コミックス)