たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「異常」だと認められる幸せ「WORKING!!第8話」その2

その1の続きです。

●「異常」を認めること●

こっから、オリジナル回で入ってきたこのアニメのテーマの部分にガチで触れてみたいので、切り分けます。
や、山田(仮)の話は我慢します。
 
この漫画の面白さは「全員が変」というところ。まあ4コマですしね。変じゃないのはぽぷらと佐藤さんくらいでしょうか。
ギャグマンガだからこそ、たとえば八千代さんの帯刀は違法じゃないのかと突っ込まずに笑えたり、伊波さんの暴力も『トムとジェリー』的笑いに出来たり、相馬さんのブラックライトもイラつかずに笑えるわけですが、やはり4コマでオチがくる形式ではなく物語形式になると、どうしてもその「変さ」が際立ちすぎて、キャラクターの違和感を与えることになってしまいます。
その中でも、伊波さんの「暴力」は異常の域を通り越して、一部の人には不快感すら与えていたことにびっくり。あー、そう受け取る人もいるのかと。でも確かにね、主人公がボコボコにされて黙っているのを見ているのが「心地よい」って人は……あ、すいません心地よいです(Mなので)。いや、まあそうじゃない人もいますわな。
 
これを笑いで落とし続けるのもいいんですが、この伊波さんの設定をストーリー仕立てにすると、人間環境に重みが出てきます。
「男性恐怖症で、近くによると殴ってしまう」
字面だけ見ると笑える話ですが、これがもし自分だとしたら……大変なことです。
だって世の中の半分は男性なわけで。公共機関を使うのはまずNG。満員電車とかだと惨劇になる前にたぶん伊波さんが破裂すると思います。
学校とかもちょっと通い方が特殊。人のいないルートをとおって通わないといけません。
行楽地や観光スポットも行けません。男性多いですから。修学旅行とかも今回の様子だと行ったことが無いようです。
仕事も、ワグナリアはみんな気を使ってくれるからいいけど、他の職場に行ったとき彼女は働けないでしょう。
悲惨ですよ。
「なぐる」という行為でポジティブな笑いになっているものの、これは病気なわけで、伊波さんが惨劇を呼ぶと同時に、伊波さんにも惨劇はすでに襲ってきているわけです。
 
小鳥遊くんは伊波さんの殴られ役を押し付けられる形で引き受けるはめになりましたが、この配役は実に絶妙。
なぜなら、殴られたら小鳥遊くんは、ちゃんと文句を言って対策を練るんですよね。
「伊波さんだから仕方ない」じゃない。伊波さんでも「いい加減にしろ」と言える。これ意外なことに佐藤&相馬にはできていなかったことです。
 
一見小鳥遊くんのセリフは、きつくて攻撃的にすら聞こえます。
狂犬だの、「野放しに出来ない」「人に迷惑がかかる」「面倒をみる」など。

伊波さんが「イラッ」と本気で怒れる。
そう、恐怖での殴りじゃなくて、小鳥遊くんには怒れるんです。
これはすごくいいこと。
 
伊波さんは今まで、感情を抑圧して生きてきました。
(抑圧しすぎた結果がアレ、でもあるんですが)
だから「楽しい」「腹が立つ」などの感情が、「悲しい」「辛い」によって蓋されてしまっています。
ワグナリアの他の人達、八千代さんやぽぷらなんかは、そのへんを「いいよ、大丈夫だよ」と温かく見守ってくれます。もう非常に恵まれたことだと思います。
しかしこれ、蓋の上に蓋はするけど、根本的解決にはならないんですよね。
ようは、蓋をこじ開けて「楽しい」「腹が立つ」を出してあげないといけない。
たぶん、小鳥遊君が来ていない状態で伊波さんが温泉に行っても、そこそこ楽しめたことでしょう。けれどそれは、気を使いに使って、「私のせいでみんなに迷惑をかけているんだ」というタガがかけられています。

小鳥遊くんはそれを、さくっといなします。
もう蓋開けまくるんですよね。まさに「体をはって」です。殴られますし。
でも「殴られてくれる相手」であり、同時に「ひどいことを正直に言ってくれる相手」だから、「なんかムカつく」「なんかひどい」と怒りの感情も引き出してくれます。
これが、伊波さんにとって非常に重要なこと。
 
 
この作品、かなりどのキャラもいい具合にピックアップされていますが、伊波さんに関しては感情の描き方の繊細の度合いが半端ではありません。
徹底して、この「殴りデレキャラを笑いのネタだけにしない」という意図が見えます。
じゃなければ、こんな表情描きませんよ!
小鳥遊くんがいることによって、彼女の心の中には一着ではなく沢山の感情が渦巻きます。まだ恋愛未満。
優しくしてくれる嬉しさ、ひどいことを言われる悔しさ、自分の中にあるコンプレックスの辛さ、人に迷惑をかけている負い目の悲しさ。ごっちゃまぜにしてジューサーミキサーっすよ。

ただ、私、みんなにやっぱり迷惑かけちゃって……。来なければよかった……。

誰も「迷惑」とは言っていません。上記のように、山田(仮)とぽぷらは堪能しまくってます。八千代さんは杏子さんしか見えていませんが楽しんでます。そう、実は「迷惑」はかかっていない。
けれど負い目はあるんです。コンプレックスに理由を求められても困るのと同じで、もうしょうないんです、負のスパイラルなんです。
特に、小鳥遊くんはわざわざ家の梅を干すのを休んでまで来てくれたと、迷惑をかけているんだと暗に伊波さんは語っています。
それをちゃんと「迷惑です」「困ります」と言える唯一の人間、それが小鳥遊くん。
貴重な存在です。

いいですか、伊波さん。
確かに伊波さんは異常です。
でも、それは男性恐怖症が悪いんであって、伊波さんが悪いんじゃない。
それは、みんなも俺も分かっていることです。
だから、先輩(ぽぷら)も一緒に行こうって無理にさそったんじゃないですか。

なかなかいい景色ですよ。
今日来なかったら、こんな景色も見られなかったですからね。
伊波さんのおかげです。
今日は頑張りましたね、この調子で男性恐怖症、治していきましょう。
これからも、俺がしっかりと面倒見ますから。

 
まるで愛の告白のように聞こえますが、違う。たぶん違う。
伊波さんが泣いたのは、好きとかキライとかじゃなくて自分を受け入れてくれたからだと思うのです。
 
心の傷や、鬱や、トラウマを克服する第一歩は、それが異常だと理解すること。
正直、「異常」って言いづらいですよ、言えないですよ。気を使っちゃって。
でも「異常」なんです。なぜなら病気や恐怖症だから。
マイノリティとかマジョリティとかじゃない、治らない人格の部分でもない。
逆に言えば、治るからこそ「異常」って言っていいというのを突き出してきた8話にびびりましたともええ。
自分は「異常」なんだ。病気、恐怖症、トラウマ、心の傷を抱えているんだ。
悪いのは恐怖症。自分が悪いわけではない。
ここを理解しないと、「自分が悪い」というスパイラルから抜け出せず一生背負うことになります。
小鳥遊くん、女系家族に育っているからというのもありますが、いい男すぎます。多少口が悪いのも含めて、これは惚れてしまうよ。

人のこと最後まで狂犬扱いして、素直に感謝できない!

伊波さんの、「怒り」の蓋が開きました。
この絶妙な顔、めっちゃいいですよね。
今までずっと閉じていた、伊波さんの「怒ったら駄目だ、私はただでも迷惑をかけているんだ」という閉じた箱の蓋を、実はこの時点で開いています。
あとは人間関係構築の中で感情を出し、そんな自分も含めて認められるようになれば、心の傷が癒える可能性はぐっと上がります。
まだ、まだこの時点では恋愛感情ではない、と自分は思います。
いいんです。心の傷を癒すという、ある意味恋愛よりも難しいトコロに踏み込んでいるんだから、ゆっくり見守るよ。
伊波さん、あなたはそれでいい。
ただし小鳥遊くんはなるべく壊さないでね。
 
その3に続く。
 
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