たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

「聖☆おにいさん」を、ハイクオリティな二次創作として楽しんでみる。

聖☆おにいさん」はすごい好きなマンガなんですが、周囲のマンガ好きの評価はすごいくっきり分かれているんですよね。すごいという人と、そうでもない人と。
なんだこれ面白いなあ。たとえば「よつばと!」なんかだと、好き嫌いは別として大体の人が「すごい作品だ」と言うのですが、この作品は見る人によって全然とらえ方が変わってくる。
 
まあぼくは「好き」な側なのでそういう視点で見ているんですが、じゃあ何が面白いの?と聞かれるとちょっと困っていたんですよね。
一つWEB拍手で教えてもらって気づいていたのは「BL的な空気感」でした。男性二人がが居心地のいい世界を形成している、という見方。うん、確かにそのとおりだと思います。ガチも好きだけど、ゆるめのBL好きな自分としてはこれは本当に心地良い。
でもそれだけじゃ「面白い」の理由としては人に伝えづらいなあ、なんだろうなあと思いつつ6巻読んで、とある回が死ぬほどツボに入って声上げて笑ってしまいました。
それは弁才天は裸で琵琶を弾くほどロックなので、レッチリと気が合う」というネタ。
「ちょ、反則それwww」とゲラゲラ笑っていたのですが、そこではたと気づきました。多分もう気づいている人多そうなことに。
ああ、「聖☆おにいさん」って、ものすごいクオリティの高い二次創作なんだと。
 

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まあ今更な話なんですが、自分の思考整理のために。
二次創作だと気付いたのはそこに「レッチリ弁才天のミックス」というネタが盛り込まれていたから。カート・コバーンなんかも出てきて、いやーうまいこと音楽ネタと宗教ネタを混ぜたなあと感心しました。
 
二次創作の基本にあるのは「その共通項が分かること」です。
二次創作、って言葉を使うと抵抗ある人いるかもしれませんね。言い換えれば「共通言語」です。
たとえば東方の同人誌を読んで楽しむには、東方ってなんなのか、どんなキャラがいるのかがわからないと楽しみが半減どころじゃないわけです。このへんは「おたくの娘さん」でもやっていましたね。叶は元ネタ知らないから全然同人誌が面白くないけど、他の人の評判がよくて驚く、というネタ。

結局「共通言語」としての知識があることで成り立っている、そうでないと成り立たないのが二次創作です。
 
逆に言えば「共通言語」がある人同士の間では、すげー楽しくて仕方ないんですよね。
例えば海外に行ったとき、日本語話す人に会うと嬉しくなるのと同じ原理で。仲間意識的なものができます。
 

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聖☆おにいさん」は、宗教ネタ(キリスト教仏教)を二次創作の基板にしました。
誰もがいつの間にか知っているネタをうまいことピックアップして、共通言語の上で笑いにしている。
まあ宗教というとなんか際どさ感が目立っちゃいますが、神話的といえばまた変わるかなとも思います。みんなが知っている神話伝説をパロディにしている。
知っているとはいえ、ある程度の基礎教養がないとわからないわけで、これを読んで笑えることで「あ、知ってる知ってる!」という知識発見も出来るという仕組みになっています。よく計算されてるなー。
 

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んで、現時点で出ているネタを全部知っている人はじゃあいるのかというとそれはほとんどいないと思うんですよ。
ものっすごいマニアックなキリスト教仏教ネタ増えました。かなり中村先生、宗教のエピソードや小ネタ調べていらっしゃいます。
全部知っている人は相当詳しい人なんじゃないかと。ぼくも正直、全部はわからないです。
ところが、それでも面白い。なぜか。
1コマの中で、ぼんやりとしか分からない宗教ネタを解説してしまっている。
ここ、ここがすごい。全く宗教ネタが分からない人でも、分かるような内容づくりがされている。
なので、知らないけど分かった気になって読み進められる軽快さ。
 
二次創作独特の「ああ、知ってる知ってるw」という面白さ。
そして刺激される「知識欲」。
単純なギャグのネタとしては、その元ネタである宗教話に興味がなければさっぱりピンと来ない可能性もあるだろうなと。
しかし「知ってる知ってる」にカチッとはまると、加速するようにどんどん楽しくなるのがこの作品の凄みなんだろうなあと感じた次第です。
あ、言うまでもなく地方ごとに伝説化して変幻しているような色んな物ゴッチャになっているので、これが宗教ネタの教科書になる、ってことはまかり間違ってもありえません。その割り切りっぷりがまた、いい。
 

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まあ、この作品の魅力ってそれだけじゃないとは思います。
宗教を笑いにできちゃうキワキワ感や、最初にも書いたBLっぽい心地良さ、中村光先生独自の会話テンポなどなど。
ただ、二次創作的な作りの「共通言語で楽しもうよ」という波に乗れるかどうかは、楽しめるかどうかの境界線になっているのかな?とは感じました。
ぼくはそこにずっぽりはまったんだなー。新キャラ出てくる度におかしくて仕方ないですもの。
個人的に梵天さん大好きです。締切り締切り。
「悟れアナンダ」読みたいですが、読んでも下界のぼくにゃわからんのだろうなあー。