たまごまごごはん

たまごまごのたまごなひとことメモ

反抗期のない子どもたちから爆発する感情は、孤独と感謝だから

まだ2章までしか読んでないのですが。
この本に関しては章ごとに感想書いたほうがいいと思うので、メモ書きです。
 

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タイトルの時点では、気に入らなかったんだよね。
「メジャーに媚びろというのか、資本主義社会め!」と。
まあ売れないと食ってけないけどさー。マイノリティな趣味をないがしろにしないでよーと。
 
違う違う。このタイトル釣り。
この本に出てくる、いわゆるマーケティングに乗れたクリエイターたちは、「売ろう」とそこまで考えていない。
問題はそこじゃない。
「今の時代の子たちが求めているものは、想像以上に違うんだ」ということ。
なんといっても、家族のあり方が変わってきていて、反抗期がない場合がある。
 

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例えばよく揶揄されるのは「ラップはどんだけ『感謝』するんだよ」とか。
僕もそう思ってた。感謝好き過ぎだよね。○○なやつはだいたい友達だよね。
 
でもね、もし自分に反抗期がなかったら、感情表現ってどうなるだろう?
ブルーハーツはロクデナシな自分たちの居場所を探した。
X-JAPANは紅に染まった自分たちの破滅を歌った。
筋肉少女帯は犬死にする人間たちの悲しくも歪んだ根性を歌った。
 
ないもんそんなの。
怒らない人が怒る歌聞いてもしょうがないのよ。
 

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歌い手側もそう。
「AJISAI」松本俊の発言は面白い。
 
「友達や恋人も、よく考えたら他人じゃないですか。そこに家族も入れたのは……。堀田さん(この本の著者)は家族のつながりは、昔より強くなったという考え方ですか? その友達みたいな親子っていうのが、僕はどうなのかなと思っているんです。僕としてはやっぱり親というのは、威厳というか、もう有無を言わせないような存在であってほしいとい気持ちが若干あるんですよ」
 
ええー。盗んだバイクで走り出さないじゃん!
「叱ってくれ」って、どゆこと……。
 

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それは「孤独」だから。
もしかつて「反抗」「怒り」が歌の衝動だとしたら、今は「感謝」と「孤独」が歌の衝動。
そう言われると、どっちも「感情の爆発」なんだから、同じような気がする。
 
「バブルの時代って、今よりお金はいっぱいあったと思いますけど、あのころの幸せの大きさと僕らが今もっている幸せの大きさは、違うものなのでしょうか。結局、同じなのかもしれない。いつの時代も幸せの大きさはいっしょじゃないかなと思っています」
 
考えもしなかった。
SNSがあるのも、「孤独」だから。そしてLINEやTwitterなどでハブられて、さらに孤独になる。
今の関心事はそこなんだもの。
 
クリエイター側が「怒る」のではなく「孤独」「でも選択肢を捨てるとき幸せはある」と訴え、響くのなら、それは聞く人に共鳴するとおもう。
 
そして、怒りや悲しみ、破壊衝動を抱えた人のための歌は、また別にある。
ぼくは「みんなそれでいいんだよー」的な今の歌が大変苦手だった。
でも「それでいいんだよ」で救われる人がいるのなら、大事な言葉だなあと初めて感じたんだよね。
70年代は「俺達に権利はある」80年代は「死ね、ふざけるな」90年代に「がんばれ、進め」ときて00年代に虚無感が襲いきて、今「感謝」するのは、別に「売れるため」じゃなかった。
 

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「OverTheDogs」の歌詞も面白い。

りんごがあんなに赤いのも
水が流れてゆく音も
不思議です

これって、井上陽水の「傘が無い」にものすごく近い。
フォークソングが攻撃的なパンクになる反面、ごく身近な出来事を歌った時のようだ。
しかも、言葉を極端に減らした時期みたいだ。
 

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著者の堀田の意見はこう。

いわゆるJ-POPの歌詞について「毒にも薬にもならない歌詞ばかり」という感想は根強い。「織りなす時間の中で、繰り返す出会い 私は旅人」とかいうような感じだ。
しかしそうした「マスを対象にした成功モデル」の再生産を繰り返し、その結果、言葉がもはや意味のないところまで行き着いたのが今までのメジャーだとすると、その一方で、より少数の人の内面に目を剥ける分野が台頭してきているのではないか、と恒吉さんは語る。しかもマスのあり方が揺らいでいる現代、かえってそうした少数の内面に目を向ける商業が存在感を増しているのではないかと。

再生産されすぎたクリシェはいらない。
もっと単純で、個人の内面をえぐり、「りんごが赤い」というだけの自分自身の感覚を歌ったほうが伝わる。
ものすごい納得した。
 

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タイトルは「「メジャー」を生み出す」。
でもこれは「メジャーに売ります」ではない。
 
ようは、今分散化してしまって「何がメジャーなのか」「何がマイナーなのか」全くわからない時代。
だから自分たちが感じ、今の子たちに伝わるものを、積極的に出していこう、という本。
全然資本主義じゃない。「AJISAI」とか全然売れることにしがみついてないし。
 
まだ2章でこんなに面白い。すっげえ刺激的。マイノリティにこもっていた自分には。
続き読んだら書きます。
 
この本マジで面白い。マイノリティ思考の人ほど読んだほうがいいよ。
帯に「オタク市場は終わった。「普通の人」に本気で売ろう!」って書いてあって、そこがイライラした。
 
でも違う。「普通の人」ってなにさ。「オタク」ってなにさ。
オタクだって「普通の人」だって、「孤独」は感じてるじゃん。
ラップの「親に感謝」もそうやって聞くと、「大人はわかってくれない」と何ら変わらないんだよなーる。
 
普段聞かない曲が、ぐさっとささる瞬間、きっとあるとおもう。
ぼくは「死ねー死ねー」みたいな曲ばっか聞いてるけど、聞かず嫌いをやめようと思った。
まあ、ぼくは反抗期を経験しつづけたおっさんなので、そこは離れられないけどね。
 
「りんごがあんなに赤いのも 水が流れてゆく音も 不思議です」
こんなコトバ、ぼくには出てこない。
すげえよ。