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乃梨子がイキイキ走っています〜マリア様がみてる・クリスクロス〜

マリア様がみてる―クリスクロス (コバルト文庫)
そろそろ感想書きたいなあと思いつつ、ネタバレは色々地雷が多すぎるんですよね今回。でももう色々たぎりすぎてて書きたいので、極力ネタバレを避けつつ、感じたことと百合への思いを書きたらしていきます。ただ、「これはOKかな?」という部分までは書きますのでご了承ください。なるべく、瞳子乃梨子がくっつけばいいんだとか乃梨子瞳子とか言わないようにします。
 

●「キャラが勝手に動いちゃって」●

と、前の巻で書かれていました。
色々な人がわりとよく言う言葉ですが、本当の意味で「勝手に動く」時って「はっ!」と気づくようですね。なんらかの作品を作った人ならわかると思うのですが、そのキャラクターへの思い入れがないとなかなか勝手には動いてくれません。好かれ役であろうと、嫌われ役であろうと。動いた瞬間、自分の子供が立って歩くような感情になるかも。
特に百合作品となると、間違って適当な行動を起こさせるとものすごい勢いで何もかも崩壊してしまうスイッチになる恐れもあります。
「百合作品」は人間関係の、微妙なバランスの半紙一枚のうすーいところを、水のついた足でそーっと渡る感覚が一つの楽しみなのではないかなと思います。後先見ない強気に出るというカードはあまり開けないんですよね。完全に攻めと受けが成立しているならまだしも。最強レベルの開き直り百合キャラとしては「ストロベリー・シェイク」のZLAYを思い出しますが、あのキャラ達ですらそおっと動く時があります。まあめちゃめちゃなんだけど。あとは「ストロベリー・パニック!」のキャラを思い出しますが、あれは「マリみて」のバランスとはまったく別次元でしょうしね。
マリみて」はある意味において「受けx受け」かもしれません。お互いの行動を見てちょっと動きちょっと止まるの繰り返し。全部が全部ではないですけどネ。
 
はて、前回勝手に動いたと言われたのは二条乃梨子
今回も、乃梨子は勝手に動くんだろうなあと思ったら。いやあ、ほぼ全キャラものすごいスピードで動いたじゃあないですか。ほぼ「メインキャラ全員」と言っても過言ではない。
一人のキャラが勝手に動き出すと、物語が一気にコマを進めることがあります。ただし、全員が勝手に動くともう統制とれなくなったりするんですよね。特に、それぞれ思い人がいるわけです。変に動くと周りの見えていない集団になりかねません。
しかもバレンタインなわけですよ。メインキャラ(瞳子以外)にはオノロケシーンがあるわけです。もうありますよ、パンパンなくらいに。なのにオノロケしながらもみんな一点に向かっていきます。
3年生ズもノロケたりノロケたりノロケたりします。ええ。いやこれだけ書いても全然ネタバレにならないと思うくらい。サブキャラ達も色々な形でノロケます。いかに、絵になっていないようなキャラにまで、愛情が注がれているか。ファンとしてはうれしくなっちゃいますよね、そういうのって。
もっとも、ぞんざいに扱われたキャラなんていないのが「マリみて」の魅力ですが、今回は本当に一人一人に見せ場があって、そのキャラが自分で自分の選択をしているのを感じました。しかも全速力で。だからストーリーは非常に軽快に進んでいきます。それぞれがそれぞれのエンジンをもっていて、トータルの力で話は進んでいきます。だから読んでいてスーっとしますよ。
 

●バレンタインは女の子が女の子にチョコをあげる日です。●

マリみて」世界で男性にチョコをあげるキャラなんているのかなあと思いきや、予想はしていたけど(多分)0でした。もっとも、こっそり裏で卒業した江利子様がクマにあげているんだろうけどさ!くやしいくやしい!
とはいえ、ここまで果てしなく0だと多少「あれー?」という感じもするはずなのですが、しないのがこの世界の面白いところ。一応この世界男性教師もいるのですが、みんな女性教師にチョコを渡しているので、やっぱりもらっていないようです。
考えてみたら「デート権を巡るカード探し」って自体、普通に描いてしまうとわけのわからない世界になってしまいますよネ。どんだけアイドルなのかと思いきや、視線は比較的一般人の祐巳さんなわけで。だけど、ここで人が集まらないことが想像できるかというと全く出来ない、そんなルールのある世界を作ってしまったわけです。そこがすごい。
手放しでほめてばっかりなので一応書いておくと、由乃さんは正直微妙なんじゃないか?とは思いました。あれだけ1年生を追い返したり、めちゃくちゃな演説をしているにもかかわらずカード探しにくる1年生なんているんかなと。もっとも「お祭りムード」というのもあるのかもしれないですネ。にしても、カード見つかった後もすごいからなあ。よくファン引かないなあ。あるいはそのサディスティックなところが下級生に魅力なのかしら。彼女のカードを誰が見つけたのかは読んでのお楽しみに。
そんなわけで、由乃の「見つけたら怒られるかもしれないカード」ですら、地位は男性不在のはるか高いところにあります。山百合会はどれだけアイドルなんだろうと思うのですが、誰もそれを疑っていません。
今回のアイテムとしてのチョコは、おそらく「女の子二人の関係性」を表しているんでしょうネ。単純に「好き」とか「愛してる」とかではなく、10スールあれば10の関係が存在します。それが百合作品として見た場合の「マリみて」のカギなんだと思います。
ちなみに自分は真っ先に黄色のカードを探しに行くと思います。
 

祐巳はやっぱりいい意味で「一般人」。●

前回は「進化した!」とまで騒がれた祐巳。進化しました確かに。しかし今回は一歩下がって「本来の祐巳」を前面に出していると感じました。
今回はメインストーリーの後に、2年生3人組によるでこぼこ劇場が短編で収録されていますが、ほんとでこぼこ。個人的には短編としては「令ちゃん日記」の次にメダルをあげたいくらいのグダグダ感でした。
時々、視点がかぎりなく一般人に近かった祐巳が遠くに行ってしまうんじゃないかと感じることがあります。特に前の「大きな扉、小さな鍵」とか。だけどこういうところでグッ!と戻してくれるのがいいですよネ。本編でも今回は祥子さまがデデーンと居座っているので、祐巳の立場は相対的に下になります。あーやっぱり祥子さまスゲー、祐巳ちょんかわいー、と何も考えずとも感じられる関係だったのが、ちょっとホッとしました。
とはいえ、1年前に比べて進歩しているのは確かです。ある面でものすごい「人の関係の大切さを考えているんだな」と感じさせられるシーンがあります。そこが祐巳らしい。それぞれ自分のペースの成長をしているのですが、やはり祐巳は共感しやすいんです。だから好きです。
あ、成長がマイペースすぎる由乃さんは「ラブ」です。念のため。でもあれはないゼ。
 

乃梨子に死角なし。●

サブタイトルで全部言っちゃった気がします。死角ないです。
ストーリーは彼女中心に見ていこうと思えば、それも可能なほどです。というか今回はそういう読み方すると非常に面白いのでオススメ。
彼女もいい意味で「一般人」なキャラだと思います。時々、予測不可能な行動をとるキャラ達と比べて思ったとおりのリアクションをしてくれるから、愛しいんだな。今回は名ゼリフも登場しますよ。あと由乃を止めれるのはこの子と志摩子さんだなあ、とも。
乃梨子の存在って「読者の思い」だと思いませんか。
 

●読者の思い、作者の思い●

瞳子ストーリーに入ってからを「ツンデレレイニー止め」で「ツンデレイニー」ということをうずらちゃんに教わりました。うまいな。
そのツンデレイニー期が明確化したのを「妹オーディション」からと考えると、実に7冊目(イラスト集除く)。
「早く進め…っっっ!」というファンもいれば「じっくりと駒を進めて欲しいナ」というファンもいます。そしてちょうどいい具合のところにストンと入った今作だと自分は思います。
ちょっとした遊びも含めて、読者の望むものがうまく提供されているなあ、と思いました。サービスあり、掘り下げあり。百合の繊細さはつねに忘れず、物語はスカートのプリーツを乱さない限界のところで動きます。由乃除く。
いや、ほんとに由乃は好きなんですって。
今後またどう話が展開していくのかを夢想する余地が山のようにあります。なんだかショートケーキのイチゴをとっておいて、甘いケーキをゆっくり食べている気分です。今後もいい意味で裏切らない、いい意味で裏切る、そんな作品でいてほしいなあと願いつつ、何が言いたいかというと乃梨子瞳子とくっつけばいいってことです。
おしまい。
 
 
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