変わっていく日常と、変わらないドキドキ。「菜々子さん的な日常」
ドキドキ対決も女版、男版が終わったところで、ふと思い出した一冊書いておきたいマンガがあったので紹介しておきます。
最近「メガストア」で再開しはじめた、「菜々子さん的な日常RE」。メガストア自体はロリから女子学生から大人までの全方位型エロマンガ雑誌です。
んで、このマンガも「成年コミック」のマークがついているわけですが、ぶっちゃけエロシーンはないです。最近の「ToLOVEる」のほうがエロいですたぶん。
連載していたのはエロマンガ雑誌「ホットミルク」。入学から卒業までちょうど3年連載でした。1巻が2000年、2巻が2002年に発行されました。もうずいぶんたつんですねえ。
作者、瓦敬助先生は、「カミヤドリ」などを描いていた三部けい先生の別名義。むちむちの健康的な女性を描く漫画家さんです。
せっかくなので、菜々子さんの送ってきた日常と、その世界観に感じたドキドキを書いておこうと思います。
●迂闊といえば菜々子さん●
はて、この作品は一言で言うと「無防備な菜々子さんがドジをして、瓦くんがそれを見てドキドキする」話です。全36話、3年間ずっとその繰り返しのみで構成されています。
どのくらい無防備で迂闊かというと、時には想像を飛び越えるくらい派手に迂闊です。
「菜々子さん的な日常」第二巻より。
あるかそんなこと!いや、…あるかもしれない…。
しかし、だがしかし。健全な男子高校生ならどうする。どうしますか。あなたが。健全な。男子ならば。
こうするよね。
こんな感じで菜々子は日々、無防備に元気に過ごしています。
ショートカットで、目が大きくて、あひる口で、アクションがダイナミックな菜々子さん。ものすごく健康的でムチムチしていて、ちょっとエッチなシーンが連発してはいてもあんまりエロさはないんですよ。でも、美しいとかキレイだとちょっと大げさ。多分前書きにある「素薔薇しい」という言葉で形容するのが一番的確だと思います。
マンガのヒロインで元気な少女はいっぱいいますが、ここまで少年チックでいて、かつ無防備で大胆な女の子はなかなかいないかもしれません。遠くから見ているのもいいのですが、一緒に学校中悪さして走り回りたくなる、そんな女の子です。
第一巻より。
あらゆるコマの構図が、とにかくダイナミック。「女の子をこんな角度から見たい!」と言う思いの詰め合わせを、菜々子さん一人がこなしてくれるのです。
●1980年代。男子高校生瓦くんの、日常な視線●
さて、ほとんどのシーンは瓦くん視点で、菜々子さんが何を考えどう感じているかも、瓦くんのイメージから描かれます。
それが、非常にリアルなんですよね。
時は1980年代。北海道の田舎で、男子高校生が何をして、何を考えながら育ったのか。実体験に基づいて描かれています。だからこそ、とても愛しい物を描くように、背景や小物が描きこまれています。木造校舎というのがまたノスタルジックにあふれているんですよね。コークスと聞いてニヤっとした人は元気よく手をあげましょう。
おそらくこのマンガを読む年齢層で「コークス」と言うと、高校生から小学生時代に見たか見なかったか…というところでしょうか。80年代の高校生、ということですから、「自分の体験よりちょい昔」という読者の方が多いかもしれませんネ。
あ、コークスを知らない世代でも十分楽しめます。というのも、80年代の古いいい空気を保ちながら、妙に現代っぽい部分が強いからです。それは菜々子さんというキャラが背負う部分が大きいのですが。
瓦くんは、いたって健全な男子高校生。短ランにしてタバコすって、ほんのちょっとだけ悪ぶっているところがまた親近感を沸かせます。いろいろだらしない一面をしっかり描き、菜々子さんレベルのへっぽこなミスも犯しています。
そんな、普通の健康な男子が、ぽかぽかする教室で見たいものといえば?授業?いやいや。
見たいものといえば女の子のパン…ツ脱いでる!? さすがにそれはない。
●菜々子さんを見る視線●
瓦くんはそんなこんなで、3年間菜々子さんのダイナミック健康エチーを見続けて暮らすわけです。
はて、確かに「近くの女の子がちょっとエッチでドキドキ」なのをうまく描いたマンガはたくさんあると思いますが、「菜々子さん的な日常」はやはり一線を画していたと、自分は思っています。
まず、瓦くんの視点が常に「過ぎ去った日々への愛情」で満ちていたこと。青春というにはちょっと恥ずかしいような日々を、失敗談をメインに軽快なノリで描いているのが非常に読みやすいんですよ。おそらく瓦先生は、中学・高校時代の田舎の光景がたまらなく好きなんでしょうね。作中でこそ瓦くんはエロい視線でドキドキと菜々子さんを見ていますが、ほがらかな田舎高校での男女混合体育や入れ替え着替えは日常すぎて、あまり当時はエロいとか考えずお互い暮らしていたのかもしれません。そのへんやデフォルメも含めてとてもやさしくてほっとします。ラスト3話で卒業と共に過ぎていくのが、美談で飾らず非常に生々しいのが胸にきます。
そして、瓦くんの視線が常に「過ぎ去らないドキドキ」で満ちていること。菜々子さんはいつも生き生きと瓦くんの視線の中で元気にしているのです。健全な男子高校生が考えることといえば、女の子じゃないですか。しかも「ヤりたい!」ではなくて、「うわ、ドキドキする」という、ちゃんと距離のあるドキドキ。
エロマンガ雑誌でこんなにおいしい関係なのに、菜々子さんと一切恋仲にならず、エッチも何もしないのがいいんですよ。実話を多く交えながらも、菜々子さんはあくまでも「男子高校生の視点で見た少女」のままなのです。
「菜々子さん」という存在そのものが、青春期の異性への憧憬のまなざしそのものなのかもしれませんネ。
だから、毎回この言葉が入るのです。
「です」ではなく「でした」。しかも「さん」付け。
この言葉が出るたびにほっとし、そして最終回の切なさに涙。そして、菜々子さんへのドキドキはずっと変わらない永遠の物に思えてきます。そんな「ドキドキ」を大切にしていきたいなあと感じさせてくれるので、何かを忘れて心が枯れそうなときに開くマンガです。いつになってもどんなときでも、「ドキドキ」は生き生きしたものにしたいですよネ。
以前友人とも話していたのですが、「菜々子さん」も含めて、エロマンガ雑誌に載っていた非エロマンガってものすごい面白いの多いんですよね。「宇宙の法則 世界の基本」や、「パンパレード」、「ゲノム」「みんなはどう?」「LADYリンクス」などなど。忠犬ディディーもそうでしたっけ。
ほかなんかあったかな?
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